■ムーンシャイナー
起点は語感100%。密造酒業者をmoonshinerと呼ぶ、というのが格好いいというのが初めにあって、そこから『ウィンターズ・テイル』っぽい「現代の話なのに、普通にファンタジックなことをのたまう話」にしようと決めて、月の女神と契約した密造酒業者の一族、みたいな話になった。奇妙なエピソードの具体例が増えればもっと実在性は高まるんだけど、それが書けるなら普通に書いているという話。俺より凄いキミの脳味噌を借りて実体化させてほしい。
■彼方/此方
最初は「鎮具+破具=ちぐはぐ」という豆知識があって。そこから「彼方+此方=あべこべ」を知って、それとゲーム『イストワール』に登場する冥府ダンジョンの「此岸の辺」というネーミングが好きだという点が絡んで、生と死の境というイメージに結実。で、正反対のもの、ということで『ロミオとジュリエット』のフレームを借りて、成立。
■迷路の辞典
Wikipediaでのネットサーフィンを、紙の本でやるというアイデアが起点。が、アイデアだけでオチてるので、評として書くことがあんまりない。ので、具体的に「何が面白いのか」まで触れてしまった。これを書いてしまうと、読む人の頭の中で広がらなくなりかねないのでワリと禁忌。いや、究極的には書いて広げる描き方をしろということなのだが。
■ドクター・キリコにあこがれて
「安楽死の肯定」から着想して、タイトルを思いついたところで、本としての大枠ができた。撞着語法(ってほど矛盾はしてないが)的なタイトルが悪くないように思う。内容ほとんど『ブラック・ジャック』の話じゃねえか、というのはさておき。
■非実在語辞典
タイトルの時点でオチている。嘘辞書系は色々とできるアイデア実体の宝庫だけれども、「非実在」って実質的に無制限なのよね。もう一捻りするべきだったかなあ。
■宿命 超心理犯罪捜査課
超能力が実在する世界でのミステリ、というアイデアが起点。で、アイデアはさておきトリック思いつくかな、という問題に対して社会派ミステリで超能力を現実社会の何かのメタファにすれば行けるだろう、と『砂の器』をやろうと決める。だからタイトルが「宿命」になる(映画版で和賀英良が完成させた曲のタイトル)。
■レヴィアタンの羨望
変種の『蠅の王』。個人的に、狂気のカルトが暴力で理性を蹂躙していく展開よりも、その前段階の「狂気のカルトが成立していく過程」の方が興味深いと思っていたので、教祖誕生でオチてる作品がいいな、と考えた。潜水艦の中というのは、潜水艦モノが人間関係を濃く描く鉄板ジャンルだからだが、後から気付いたがこれ『無限のリヴァイアス』か。名前からして。そうすると『漂流教室』要素も欲しいよねって感じもあるんだけれども、まあ難しい。
■世界は陰謀に溢れてる
私は陰謀論が(現実と線引きした上で)大好きです。なので、陰謀論愛をブチまけた。で、陰謀論に振り回される設定として、陰謀論に脳味噌ヤラてれる探偵っていうアイデアが出てきて。自作パロディ設定は、こういうコメディミステリをストレートにやることに恐れがあってのものだったり。
■アーティフィシャル・ブレード
起点は『機動戦士ガンダム サンダーボルト』の「俺の失った手足より自由だ!」の台詞で、正直そのまんま主人公に言わせようかと思っていたぐらいで。で、そこから逆算してロボから義体に置換した感じの。ブレード、は、陸上競技用の義足とのダブルなニュアンスもあったり。
■戦乙女たちの黄昏
起点は『おれはミサイル』。で、そこから『歌う船』に寄った形。かなりそのまんまの構成である。なお、ゲーテの言葉については実際にはそんなこと言ってないです。嘘引用はメタテクストの華。