治癒師のファランは、自然の恩恵である薬草と、癒すべき「ほころび」が見える不思議な感覚を使って治療を行います。
何を隠そう作者はアロマテラピーの有資格者です。ファランの蔑称『癒しの箱』は、アロマテラピーで使用する精油の保管箱から思いつきました。
作中の薬草は、実際にハーブ療法で昔から使われている植物をモデルにしています。ファンタジーの世界に育つ植物らしく、作中では実際の植物のラテン語名などを参考に空想の名前をつけてみました。
では、ファランを象徴する「アキレアの花」のお話を……。
ヤロウ(セイヨウノコギリソウ)という薬草があります。「兵士の傷薬」という古い呼び名があり、止血、傷口を固める効能があることで昔から知られています。これが「アキレア」のモデルです。
灰色がかった白色、または薄ピンクや深紅の小さな花が固まって咲く姿はとても可憐。葉は羽根のように細かく裂け目が入っているためThousand weed「たくさんの葉を持つ草」の名でも呼ばれています。
ヤロウの花から作られた精油の香りは、森の中で咲く花の香り。ほんのり甘く、ちょっとだけスパイシー。
花言葉は「真心を持って」「戦い」「悲嘆を慰める」「治療」。
アロマテラピーで精油を使う際、必ずその効能と一緒に歴史も調べるのですが、その過程で「兵士の傷薬」的存在の少女のイメージが思い浮かびました。