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花旦綺羅演戯裏話⑮九族誅殺の範囲とは

「花旦綺羅演戯 ~娘役者は後宮に舞う~」(https://kakuyomu.jp/works/16817330647645850625)、いよいよ最終章に入りました。たびたびお知らせしているように、1月27日で本編完結、その後、前日/後日談4話を投稿して1月31日に完結設定にする予定です。いましばらくお付き合いいただけますと幸いです。



 今日の裏話では、最新話でも出てきた、また、中華もので割とよく見る「九族誅殺/族滅/皆殺し」についてです。大逆等の重罪について、当人だけでなく親族にも死を賜るという制度ですが、九族の範囲とはいったいどのようなものなのか、管見したところを軽くまとめてみます。

 一般に言われる定義としては「高祖父、曾祖父、祖父、父、本人、子、孫、曾孫、玄孫」の九世代。族滅の趣旨というか目的には連帯責任を問う・復讐の芽を摘むということもあるはずですので、直系の九世代に留まらず、同世代の親族にも累が及ぶはず(父世代の伯父・叔父も連座するなど)だろうと思うのですがよく分かりません。上記範囲の同姓の一族、とも聞きますが、その場合は本人世代は従兄弟、又従兄弟……と広がっていくことになり、さらにその子・孫世代も……となるとさすがに多すぎない? とも思うのですが。極端な話、皇族がクーデターを起こした場合はだいたいにおいて九族の範囲に皇帝その人が入るでしょうし、たぶん厳密に・必ず九族ではなく、ケースバイケースで運用されたのではないでしょうか。時代や王朝によっても制度は一定ではなかっただろうと思います。

 上述の解釈の「九族」でもだいぶ範囲広いな……と思うのですが、読んだ本にはさらに広い範囲が提示されているのも見かけました。すなわち、父族から四、①父親の姓を持つ一族、②結婚した父親の姉妹の一族、③結婚した当人の姉妹の一族、④結婚した娘の一族、母の族から三、⑤母親の父の一族、⑥母親の母の一族、⑦母の姉妹の一族、妻の族から二、⑧妻の父の一族、⑨妻の母の一族……で九族、というものです。中国は夫婦別姓なので、姓が違っても婚姻・血縁関係があれば見逃さないよ、という趣旨ですね、たぶん。「九族=九世代」の解釈だと、その世代すべてが存命である場合はまずないと思いますが、こちらの解釈だと「九族」それぞれに連なる一族があるのでだいぶ人数が増えそうな気がします。
 だからその「一族」の範囲って何!? という話にもなるのですが。上記の規定で、各一族の九族にまで累が及ぶのはさすがにやり過ぎじゃないかな……と思うのですが、仮に祖父~孫くらいを想定してもかなり連座することになりそうです。
 古代中国の血縁・家族関係は現代人の感覚よりも密で、だからこそ責任も問われるということもあるのでしょう。だから「関係ないのに可哀想」という感想は一概には通じないのかもしれません。一方で、見せしめの意味合いもあるでしょうから、当時としても引くくらいの範囲に累が及んでいたのかもしれません。

 「花旦綺羅」の偽皇子の処遇について言うと、明らかに一族ぐるみの犯罪ではないので九族族滅が言い渡されるかどうか、それを作中で描写すべきかどうかは迷ったのですが、犯した罪の重要性を鑑みると「そう」なるのかなあ、との判断でさらっと触れることにしました。とはいえ庶民の話なので、どこまで一族を辿れるものかは分からないし(彼は妻子はいないでしょうし)、家財も少ないから身軽に逃げられる……のかも、しれません。翔雲としても命じた通りに大勢殺すのは気まずいでしょうから、指名手配(?)したうえで「絶対に出てくるなよ? 絶対だぞ?」と念じているかもしれませんね。中華世界の皇帝の割に、常識的で真面目な人です。

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