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花旦綺羅演戯裏話⑭紫禁城の大劇場・暢音閣について

「花旦綺羅演戯 ~娘役者は後宮に舞う~」(https://kakuyomu.jp/works/16817330647645850625)、手元の下書きが残り10話になっております。明日で第八章が終わり、その後エピローグ5話、前日/後日談4話で完結予定です。最後の最後まで各キャラクターの色々な思いが出てきますので、見守ってくださいますように。カクヨムコンに参加中ですので、レビュー・フォローでの応援もお待ちしております。



(今回の裏話は八章第7話 燦珠、落ちる 読了後に見ることをお勧めします)



 作中に登場する三階建ての楼閣の劇場、万寿閣は紫禁城の暢音閣《ちょうおんかく》をモデルにしております。階層や外観の描写、構造も写真と文献から引いた割とそのままです。西太后政権下ではダライ・ラマを招いたこともあったいう暢音閣、現存しており、観光客のブログ等もたくさんあるので、興味がある方は検索してみると分かりやすいと思います。

 作中の「幽霊消失トリック」に利用した機構も暢音閣そのままです。すなわち、上層の舞台の床を取り払って下層の舞台と行き来する、というやつです。「最後の宦官」孫耀庭の伝記によると、「十数メートルの高さから俳優が跳び下りる様は実に豪快だ。逆に、宙がえりをして一階から三階へ跳び上がることもできる。」とのこと。跳び下りるのはともかく宙返りで一階から三階へ、は「人間か?」と思うのですが。トランポリン的な仕掛けがあったのか、あるいは孫耀庭は暢音閣が使われているのを実際に見たことはないと思うので、先輩宦官等からの伝聞が誇張されていたのかもしれません。天井部の鈎針については、別の文献・別の建物ですが、「頤和園の頤楽台の戯台には、天井に凹部があり、鉤鐶の装置があった」との記述があったのを参考にしています。舞台を縦に使うことを想定した建物の造りからして、暢音閣にも同様の装置があってもおかしくないだろう、との推測によるものです。
 こういった大掛かりな舞台装置、建物としては暢音閣のように現存しているものもあるのですが、舞台として使うことはもうないので、演出手法や役者の立ち回りの詳細も失伝してしまっているらしいのがとても残念です。壮麗な劇場で、天地を舞台にした大活劇を、同じく高く聳える楼閣の客席から見てみたかったですね。

 という訳で、作中で描写した「トリック」は理論上はたぶん可能ですが、二、三人で再現できるかというと厳しいだろうなと思っています。特に「床を外したり戻したりするのはひとりでできる」のくだり、お風呂の蓋じゃないんだから……と思って書いていました! 歌舞伎でいうところの奈落と同様と考えれば、上演中に操作することもある・簡単な(時間や人数はさほど必要としない)仕組みであろう、という推測はそんなに的外れではないんじゃないかと思っているのですが……。ひとりで操作できる床の上で飛んだり跳ねたりするのは嫌過ぎる気がします。あと作中の作戦を実行するとたぶん下の人の腰が死にますね。
 事実を踏まえつつ、フィクションに落とし込むに当たっては都合の良いように&説得力がギリギリあるであろうラインを考えて描写しています、というお話でした。

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