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花旦綺羅演戯裏話⑫後宮の妃嬪の位階について

「花旦綺羅演戯 ~娘役者は後宮に舞う~」(https://kakuyomu.jp/works/16817330647645850625)、引き続き毎日更新しております。色々重要な情報が出て来たり、大変な展開になったりしております。皆様の悲鳴や驚きの声は糧になりますので、一言でも良いのでお聞かせいただけるととても嬉しいです!


 今回は、後宮の妃嬪の階位についての補足です。

 「花旦綺羅~」の作中に出てくる妃嬪の位は貴妃と昭儀(と皇后)のみです。世間の中華ものでは、唐代の四夫人九嬪二十七世婦八十一御妻の制度などに倣って、様々な位を帯びる妃嬪を数多登場させている作品もあるようですが、拙作ではそれをしていません。なぜなら、ただでさえ人名や殿舎名、さらには華劇関係の用語や演目名でごちゃついているのに、これ以上情報を増やしても良いことはないだろうと考えたからです。たとえば華麟と瑛月のどちらが淑妃でどちらが徳妃で、どちらのほうが上位で──という情報は、書き込んだところで作品の面白さに寄与しないと思うのです。

 一応、本作の世界観で度々参考にしている明代においても、妃嬪の制度は歴代王朝に比べると比較的簡素なものになっていたようなので、登場する位階が少なくても良いのかな、と考えております。外戚の専横に悩まされた過去王朝の反省を踏まえて、太祖洪武帝が妃嬪の位階の数および定員を大幅に削減したのだとか。実際、民間から妃嬪候補を募る制度を採用したこともあり、明朝の歴代皇后の出自はおおむね低く、外戚や垂簾政治の禍も比較的小さかったようです。一方、政を壟断する宦官を輩出(?)したのも明朝なので皮肉なことですね!
 明の当初の制度によると、妃嬪の序列は貴妃、賢妃、淑妃……と〇妃の形式で九階位。ただし、代が進むにつれてその折々の皇帝の命によって位階が増減することもあったそうです。そのように一時的に設けられた位階の中に「昭儀」もあったので、花旦綺羅~の世界観においても採用してみました。既存の中華ものでも割と目にする位なので、「貴妃よりは下位の嬪ですよ」とだけ認識してもらえれば良い、という考え方です。たぶん、作中世界の後宮では、皇后・貴妃の下に昭儀等の位階が幾つかある構成になっていると思います。もしも本作の続編を書くことがあったとしたら、その他の位階の嬪が登場するかもしれないし、やっぱり煩雑になるから出さないかもしれません。

 歴代王朝の後宮制度について知る足がかりとして非常にお勧めなのがこちらです。
 浜本鶴賓 著『支那歴代後宮秘史』,春陽堂,昭和5. 国立国会図書館デジタルコレクション https://dl.ndl.go.jp/pid/1181046 (参照 2023-01-11)

 昭和5年発行というところにまず驚きますが、より驚くべきことは、オンライン上で全ページ閲覧できるということ! 画像データかつ、旧仮名遣いなので見辛いのは否めず、かつ、現代では研究・発見の結果等で覆ってる部分もありそうではあるのですが、題名にたがわず歴代王朝の後宮の制度やエピソードが豊富に載っております。私もまだ読破できていないのですが、少しずつ紐解くのが楽しいです。

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