拙作、「カクテルの…」は、私の素朴な疑問から生まれたお話です。勤め先で、とある人間模様を目撃してしまったのがきっかけでした。
いわゆる「アラサー」の女性と、四十二、三歳の男性がいました。女性のほうは彼氏がいるらしいモテ顔の独身、男性側は子供なしの既婚でした。二人はチームを組み、仕事をしていたのですが、些細なトラブルがきっかけで、急速に懇意になりました。しかし、将来に対する考えが合わず、結局、破局となりました。
関係はなくなっても、二人とも勤務先は同じままです。すでに、噂の広まった職場で、女は平然と彼氏探しに勤しみ（元々いた彼氏がどうなったかは不明）、それを見た男は悪びれることもなく堂々と女の悪口を言いふらしていました。
この恐ろしく醜悪な顛末を眺めながら思ったのは、たとえ不適切な関係であっても、たとえ別れることになっても、一度はお互いに好きだと思った相手のことを、こうも邪険に扱い、貶められるものかなあ、ということでした。当の二人が不真面目だから、と言ってしまえばそれまでですが……。
そこから、第二の疑問が湧きました。真面目な人でも「不適切な関係」に陥るケースはあるのかなあ。なんだかそれなりの数がありそうです。では、なぜ真面目な人がそんな状況に至るのだろう。真面目なのに。
考えているうちに、ひょっこりストーリーが湧きました。真面目な性格の二人が、偶然に偶然を重ねるうちに、少しずつ惹かれ合い、いつの間にか気持ちが一つに収束していく。幾多の出来事のたった一つでも欠けていれば、二人は何事もなくすれ違い、それぞれの人生を静かに歩むはずだったのに……。こんなテイストで、書いてみよう。
というわけで、拙作「カクテルの…」は恐ろしくまったりな展開です。一応「〇描写あり」にしましたが、いつになるのやら、果たしてあるのか、という調子です。
困ったのが、「真面目な二人が踏み込んだ関係に至るきっかけ」です。場面設定に困りはてたあげく、やや特殊な職場を舞台にすることになりました。タグから戦記ものやアクション系を連想されることもあるやもしれませんが、戦車や格闘技の描写はできないので、拙作はあくまで「オフィスラブ」系です。
どうぞ宜しくお願いします。