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近況報告と短編35

どうも、茶畑紅です。

「5分で読書」短編小説コンテストってもうあと三日で始まるんですね。まだあらすじがちょっと思いついたくらいなので、ピッチ早めて書かないと。前も言ったとおり、できれば三種類全部書いてみたいので。とりあえず、頑張ろうと思います。

では、茶畑紅でした。
以下短編です。


・短編 『氷鬼』『砂嵐』

 ここは、とある公園。土地の広さはそれなりにあるが、この公園の特徴はなんと言ってもその広大な砂場にある。いまどき泥遊びをするような子供はさほど多くないが、この公園に限ってはいつも賑わう。そんな公園だった。
 しかし、今砂場では泥遊びをする子供はひとりもいない。なぜなら、季節の変わり目で気候が崩れやすく、この辺り一体に強風注意報が出ていたからだ。恐らく、保護者が止めたのだろう。
 案の定砂場の辺りには強風が吹き荒れ、山盛りになった砂が攫われて砂嵐となって辺りに立ち込めていた。

 だが、よく目を凝らすと、その中に二つの小柄な人影が見える。近所に住む小学生の中で、どんな天候でも遊びに興じるグループの中の男の子達だった。
 彼らは立ったままピクリとも動かず、お互いを見合っている。その眼力は睨みつけるようなもので、かなり威圧感があった。二人の間には、微塵も揺らがない覚悟のようなものがあった。

 彼らは、この辺りでかなり有名だった。その理由は、遊びに懸ける情熱が子供のものとは思えないものだったからだ。さながら、強豪高の部活動のような雰囲気で遊びをする。今日も彼らは天候など気にした風もなく数人で公園を訪れ、鬼ごっこから派生して生まれた「氷鬼」へと興じていたのだった。

 しかしながら、なぜ彼らは動かないのだろうか。……いや、もしかしたら一歩も動けないのかもしれない。
 互いに牽制し合い、どちらかが少しでも動く仕草をとったら、確実に殺る。砂嵐にまみれながらも、そう言った気持ちを持ち合わせているのかもしれない。まさに一触即発というやつなのだろう。

 やがて、数分が経ち、砂嵐はだんだんと治まっていく。その只中で立つ二人は相も変わらず動かないままだが。
 よく見ると、二人の目が赤い。当然だろう。あの砂嵐の中目を見開いていたならば、大量の砂が眼球を叩きつけたはずだ。今も必死な形相で涙を垂らすことで砂を追い出しているようだが、洗わないとその全ては落ちていかないことだろう。というより、早く洗ったほうがいい。

 そんな彼らの元に、一人の男の子が現れる。彼は肩を大きく上下させていて、足が震えている。だが、その目には確かな闘志が宿っていた。恐らく彼も「氷鬼」で遊んでいるうちの一人なのだろう。

「助けに来たぞ!」

 彼の一言で、二人の男の子の瞳が僅かに揺れる。助けに来た、と言うことはどちらかの味方と言うこと。この膠着した状況がひっくり返るときがきたのだった。
 しかし、二人は動かなかった。互いを鋭い眼光で見つめ合ったまま、まったく視線を逸らさない。たとえここでどちらかが優勢になったとしても、今動いたら確実に殺られる。そういった心地なのかもしれない。いや、逃げる側は逃げていいと思うが……。

 そうして後から来た彼は、固まる男のこのうち一人へと駆ける。その必死の形相から、彼も何かに追われている最中なのかもしれなかった。

「タッチ! よし、早く行こう!」

 片方の男の子にタッチし、彼はまた別の方向へ駆けようとする。
 しかしそれを、タッチされた男の子が静止した。

「待て、まだやることがある」
「……おいっ! そんなに悠長にしてらんないぞ!!」

 焦って止めようと声を出したが、動き出した彼は止まらなかった。
 いまだに動かないもう一人の下へと駆けていく。まさか、逃げる側だというのに止めを誘うというのだろうか……。
 そして――

「タッチ。お前も一緒に行くぞ!」
「サンキュー! さあ急ごう!」

 まさかの、どちらも逃げる側だったようだ。そしてもうすでに捕まっていた為に、動けなかったみたいだった。

「見つけた! あっちに三人固まってる!!」
「追えー!!」

 そんな三人の耳に、そんな声が響く。

「見つかった!? だから早く逃げようって言ったのに!!」
「いやいや、仲間を置いていけないだろ」
「ああ、これから俺が活躍するから、助けて正解だ」

 などと言い合って、男の子たちは駆けて行く。全員酷く真剣な表情だった。

 ……と、傍で見守っていたおじさんはもう帰ろうと思う。強風注意報が出てるのに家を出てった子供達を連れ戻す為にここまで来たけれど、あんな覚悟でやっている子達に帰れなんて私には言えないよ……。

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