どうも、茶畑紅です。
今日の短編は、多分多くの人が共感してくれる出来事だと思います。もちろん、僕も昔やったことがあります。まあ、僕の場合そのまま宿題をやらずに学校に行って先生に怒られましたが(汗)。
最近寒くなってきたので、きっとこたつを出しているひともいるでしょう。この短編のようなことにならないように気をつけてくださいね。
あ、あとやっぱり僕は終わり方が雑になってしまうみたいですね。と言うのも、うまい終わり文句が思いつかなくて、書いては消して書いては消してを繰り返した結果、残ったのがそれだけということになってしまうからなんです……。やはり僕にとって一番の課題は「終わり方」な気がします。これはもっと勉強して改善しないといけませんね……。頑張ります……。茶畑紅でした。
・短編 『こたつ』『寝落ち』
「お姉ちゃん! 僕リビングで宿題する!」
「え、やめたほうがいいと思うけど……」
僕がそう宣言したのは、もう限界だったから。何が限界だったのかと言うと、それは……。
「もう寒いの嫌だもん!!」
そう、寒いから。ものすごく、寒いから。
だって、お姉ちゃんと僕の部屋は暖房が何にもないんだもん。もう耐えられないよ。
止めてくるお姉ちゃんを無視して、僕は部屋を飛び出した。なぜリビングなのか。それは当然リビングには暖房があるから。それも、冬にぴったりな最強のヤツ。
僕は宿題と筆箱を抱えて階段を一段飛ばしで駆け下りて、すぐ目の前の扉を開くと、それの中にもぐりこんだ。
「ん~♪ ぬくぬく~♪」
首だけを出すようにして、僕はそれ――こたつに全身を潜り込ませた。じんわりと温かさが全身に広がり、幸せな気分になる。やっぱり冬のこたつはサイコーだった。
「ちょっと、はしたないって。というか、本当にそこでやるの?」
「なんでお姉ちゃんもくるのさ。狭くなるからこっち来ないでよ!」
「いや、行かないけど。お姉ちゃんはダイニングのテーブルでやるから」
何でかよくわからないけれど、ついてきたお姉ちゃんに自分の縄張りを主張すると、溜息をつきながらダイニングテーブルの椅子に座った。そのまま、お姉ちゃんはノートを開いた。本当に、なんでお姉ちゃんもここに来たのだろう。僕がここに来ようとしたらあんなに止めたのに。
「ふーん。ならいいけど!」
「……あんたはなんでいつもそう偉そうなの?」
僕はもうお姉ちゃんのことは気にしないことにして、体を起こしてから宿題と向き合った。
うーん、やっぱりここわかんない。数字を見るのは好きだけど、僕漢字は嫌いなんだ……。辞書も部屋に忘れてきたし、こたつからはもう絶対離れたくないし、思い出すしかないんだけど……。
僕はじっとわからない漢字を眺め続けて、必死で頭をめぐらせる。でも、どれだけその字を見ても、ピンと来るどころかだんだんその字が見たことあるものなのかすらわからなくなってく。さっきまでは思い出せないだけだったのに、今は別のことで悩むことになった。こんなへんてこな字、授業で習ったっけ?
頭の中でぐるぐるその字が回って、絡まった紐が解けるように一画一画崩れ去ってく。もうそれが字なのかどうかすらわからなくなってきた。どうしよう、このままじゃ絶対この漢字読めないよ。
あれ? というか、なんだか視界が狭く暗くなっていくような? お姉ちゃんが意地悪で電気消したの? もう! これじゃあ宿題できないじゃん。
「おんぇーちゃん……でぇんきけさないでよぉ~」
「いやいや、消してないわよ。ちゃんと目を開きなさい目を」
なんだろう、霞む視界の向こうでお姉ちゃんが呆れた様子で何か言っている気がする。でも中庭の池で買ってる鯉みたいにパクパクしているだけで、何にも聞こえてこない。僕をからかってるの?
お姉ちゃん、なんでそんな意地悪するの。僕は何もしてないのに。それどころか、この前お姉ちゃんだけらけっとって言うおもちゃみたいなものを買ってもらってるところ我慢してたじゃん。お姉ちゃんだけずるいって駄々こねたけど、結局我慢したじゃん。お母さんに、「あんたはこの前ス○ッチ買ってあげたでしょ!」って怒られたからだけど……。
カーテンも全部閉めちゃったのか、もう何にも見えなくなって、僕はゆるく体をゆする。
あれ、何でだろう。体もうまく動かない。もしやお姉ちゃん。僕の体をこたつに貼り付けたな? ほんと最低。許せない。怪人お姉ちゃんめ!
そう思っていると、僕はもう頭を働かせるのも難しくなってしまって、そのまま何も出来なくなってしまった。
「……ほら、だからやめたほうがいいって言ったのに。お姉ちゃんは知らないからね」
やがて、僕はむくりと体を起こした。目をぱちぱちさせて、逆らえない衝動に任せてあくびをする。
いま、何時だろう?
「え゛」
時計を見て、僕はびっくりした。あれから、2時間も時間が経っていた。
「あ、あわ、あわわわわわ!」
慌てて辺りを見渡して宿題を探す。僕が突っ伏していたすぐ横に積み重ねられていて、開いてみるとやらなきゃいけないページは真っ白だった。顔から熱さがなくなるのがわかった。
「やっと起きたのね。おはよう」
目の前から声がして、バッとそちらを向くと、こたつを挟んだ向かいにお姉ちゃんが座っていた。お姉ちゃんはもう宿題をやっていなくて、僕を見つめながら眉をハの字にして笑ってた。
なんで笑うの! お姉ちゃんは最低大魔神だ!
「お姉ちゃんが意地悪するから何も進まなかったじゃん!!」
「いやいや違うよ。あんたがこたつの魔力に負けて勝手に寝落ちしたんだよ」
「…………え?」
真剣な声でそう返されて、僕は思い返してみた。……そういえば、全身ぽかぽかして気持ちよくなってたかも。
お姉ちゃんは真面目さんだから、こういうとき嘘は言わない。もしかして、僕がやっちゃっただけ……? あ、なんでだろ。涙が出そうになってきた。
「……おねぇちゃぁん……」
「あー、はいはい。わからないところ教えてあげるから泣かない泣かない。男の子でしょ」
そう言ってお姉ちゃんが頭を撫でてくれた。そして僕の隣に移動してきて、宿題を開くように言った。僕がおずおずと宿題を開くと、止まっていたところから丁寧にわかりやすく教えてくれた。すごい優しいお姉ちゃんだった。
「……さっきは酷いこと言ってごめんなさい」
僕は謝った。そうしないと、僕の胸は思い何かに押しつぶされそうな気がしたから。
「気にしてないよ。それより早く宿題終わらせないとでしょ。ほら、鉛筆動かしな」
「うん……ありがと……」
それからお姉ちゃんの助けもあって宿題はすぐに終わった。
改めてお姉ちゃんにお礼を言ってから、僕は今日のことを胸に自分に約束を作った。それはもちろん――。
――もうこたつで宿題は絶対にやらない!
ということだった。