どうも、茶畑紅です。
今回の短編についてですが、昨日に引き続きなかなかに酷い出来です。もう自分が何を書きたいのかわからなくなってきました。正直とんでもなく迷走しています。これも一種のスランプと言う奴なのでしょうか? なんにせよ、あしたはもう少し時間を取ってじっくり考えながら短編を書いてみようと思います。
では、茶畑紅でした。
・短編 ワード『UFOキャッチャー』『中指』
これは、俺が休日に一人でゲームセンターに遊びに行った日のことだ。
ビデオゲームの筐体が目的だったけど、その日はなんだか無性にUFOキャッチャーのほうを覗きたくなった。だけど、俺はUFOキャッチャーが得意と言うわけではない。コツもセオリーもまったく知らないから、取った事のある景品も数えるほどだ。だから、プレイしたいわけではなくて、なんとなく並んでいる景品たちを眺めたくなったんだ。オタクの人たちなら恐らく同意してくれるだろうけど、ゲームセンターのアーケードゲームには、アニメのキャラクターなどのフィギュアが景品としておいてあるから、見るだけでもそれなりに楽しめるのだ。たまに猛烈に欲しくなってしまうのは難点だけど。
ねらい目の台があったらちょっとやってみようと思いながら、UFOキャッチャーなどが並ぶ階層を俺は歩き始めた。
休日という事もあって、子供連れの家族や、私服の学生らしき人たちがちらほらと遊んでいる。俺はそんな人たちの後ろや横を通り過ぎながら、階層内を一巡するように回って行く。特にねらい目の台は見つからず、諦めて筐体が並んでいるほうに行くか、と思ったとき。
「んだとぉ!? まだ毟り取る気かこのクソゲーめ!!」
店内に全域に聞こえるんじゃないかと言うほどの大声で叫ぶ、イカレタ女に出くわした。別にギャルと言うわけでもない、あまり遊んでなさそうな印象の子だ。どちらかと言うと、清楚と言い表したほうが良いタイプかもしれない。そんな女の子が、汚い言葉を吐きながらUFOキャッチャーを遊んでいたのだ。
俺は思わず近くの台の裏に隠れて、様子を窺ってしまった。
「だぁあああ!! また落としやがって! てめぇやる気あんのか!」
まるで人間に怒鳴りつけるようにしてUFOキャッチャーにキレる女の子の様子が、すごく面白かった。興味を引かれて、俺はしばらくその女の子を観察してしまった。
そうしてわかったのは、彼女は口が悪いだけと言うことだった。だけ、と言うのもおかしいかもしれないけど、それ以外に悪い印象を抱くようなことをしないのだ。台を叩いたり蹴ったり、店員に文句を言ったり、近くにいる人に喧嘩を売る、なんてことは一切しない。それどころか、諦めてそのUFOキャッチャーの台から離れたとき、歩き方や仕草が完全にお嬢様だったんだ。言動と行動が一致しなさ過ぎて強烈な違和感があった。ギャップとかの騒ぎじゃない。
でも、やはりその様子が面白くて、俺はずっと彼女を眺めていた。
一つの台を諦めて、またもう一つの台に移って、諦めて……。彼女は10台ほど回りながらそれを繰り返し、暴言を吐き続けていた。やがてついに諦めたのか、彼女は一つも景品を獲らないまま、お店を出て行った。やはり歩き方は洗練されていて、いいとこのお嬢様なんじゃないかなんて思う。
俺は店の外までついていき、気付かれないように物陰に隠れる。隠れたのは、彼女がゲームセンターのほうを振り返ったからだった。
……というか、今気付いたけどこれやってること完全にストーカーだな。自虐していると、彼女は先ほど暴言を吐いていた人とは思えないほど朗らかな笑みを浮かべて、右の手を持ち上げた。
何をしているのだろうと眺めていると、持ち上げた右手のうち中指以外を折り曲げてゲームセンターのほうへ向ける。……どうも、相当ストレスが溜まっていたらしい。そうして最後に中指を建てるという捨て台詞ならぬ捨てポーズを残して、彼女は去って行った。
その一連を眺めて、空が暗くなってきていたことに気付く。いつの間にか、もう遅い時間になっていたらしい。
ビデオゲームをやりにきた俺だったが、あの女の子の様子を見て満足したから、そのまま帰ることにした。
本当に面白い女の子だった。また会えないかな。会ったら今度は声を掛けてみようかな。なんて考えながら、俺は家へと帰った。