• に登録

近況報告と短編23

どうも、茶畑紅です。

今日は以前に設定だけ作って放置していた作品の新たな設定が幾つも思い浮かびました。僕はこういうことがよくあります。今書いている小説がうまく進まないと、他の作品の創造が捗るんです。そして、そっちがうまく行きそうならと思って書き始めると、また別の作品の妄想が膨らんでいくんです。本当に不思議です。こういうことって僕以外の方もよくあるんですかね? もし誰かそういう経験ありましたら、抜け出す方法を教えて欲しいです(汗)。あ、ただ今日設定が思いついた作品は結構面白い自信があるので、いずれ書き始めようと思っています。楽しみにお待ちください。

さて、短編ですが……僕は何を書きたかったんでしょうね? と、書き終わってから思いました。
僕はただ、ラブラブカップルの遊園地デートを書きたかっただけなのですが、書いていくうちにだんだん何を書いているのかよくわからなくなってきました。不思議な現象ですね。始まり方も終わり方も決めていたのに、その中間がふわっとするとそうなってしまうのですね。また気をつけなければいけない点が増えました。長編書く時は特に気にしないとですね。また勉強になりました。

では、今日はこんなところで。茶畑紅でした。


・短編 ワード『ジェットコースター』『永久保存』

「次あれ乗ろう!」

 いくつかのアトラクションを楽しんでだんだんエンジンのかかってきた私は、その心の求めるままに声を上げて指差した。その指の向こうには、この遊園地で最も代表的なジェットコースターがあった。
 一緒に来ていた彼氏のしょうくんは、弾む気持ちが抑えきれずにうきうきしている私に、はとが豆鉄砲を食らったような顔を向けてきた。

「……え」

 口から漏れ出たのは間抜けな声だった。

「待ってよさーちゃん。絶叫系は乗らない約束だったじゃん……」
「そうなんだけどさ。やっぱりここにくると乗りたくなっちゃって。だめ?」

 しょうくんの腕を抱いたまま、私は小首を軽く傾げてみせる。すると、しょうくんはくぐもった声を漏らして、眉をしかめた困り顔になってしまった。
 正直言うと、私はこの遊園地に着てからずっと絶叫系のアトラクションに乗りたかったのだ。なにせ、この遊園地にはもう何度か遊びに来ている私は、絶叫系の虜になってしまっているのだから。友達と来たときも、家族と来たときも、乗るのは決まって絶叫系ばかりだった。
 というかこの遊園地は絶叫系のアトラクションが人気な遊園地なんだ。乗らなければ損だと思う。
 今日はしょうくんが苦手だからと避けていたけれど、私はもうすでに限界だったのだ。メリーゴーランドも、お化け屋敷も、コーヒーカップもカップルらしくて楽しかったけれど、私の目にはもう絶叫系しか映っていない! それ以外は絶対乗らない! うん、決めた!

「え、でも、まだお昼前だよ? 早すぎない?」
「何言ってるの! お昼食べた後に乗ったらゲロっちゃうよ!」
「ちょ、ちょっと、人前でそう言うこと言わないでよ……。というか、戻しちゃうこと前提なんだね……」
「それは当然だよ。だってしょうくん三半規管激弱じゃん」
「そうだよ。だから乗りたくないんだよ……」

 捨てられた子犬のように震えながら、すがるような瞳を私は向けられていた。でも、しょうくんは押しに弱いから、もう少し押せばいけるはず。

「……てかさ。さっきしょうくん早すぎないかって聞いてきたけど、それっていずれは乗るつもりだったってことだよね?」
「うぐ……だって、さーちゃんが好きなの知ってたし、乗ろうって誘われると思ってたから……」
「なら今言った通りご飯食べる前のほうがいいと思うんだ。それに絶叫系が主な遊園地だしもう乗るものあまりないじゃん?」
「うぐぐぐ……それは、ええっと、あの……ぐぅ」

 もう反論も出来ない様子。よし、最後の一押し!

「大丈夫! 私が隣にいるし、死ぬ時は一緒に死んであげるから!」
「そう言う時は私が守ってあげるとかじゃないの!? 僕まだ死にたくないよ!?」

 あれ? なんか私間違えた?
 しょうくんは狂ったように突っ込んでから、深い溜息をついた。

「でももう諦めるしかないみたいだね……。こうなったさーちゃんは絶対止まらないし、僕としてもさーちゃんにはこの遊園地を最大限楽しんで欲しいし……うん、待ち時間の間にどう心の準備をするか考えることにするよ……」

 どうやら結果オーライだったみたい。それどころか、さりげなく私のことを深く理解しているアピールと、私の気持ちを優先していますアピールしてくれてドキッとさせられた。本当に私の彼氏はちょっと臆病だけどかっこいい。

「……ほらいこ?」
「あ、うん!」

 腕を引かれて、私は慌てて返事をしてついていく。顔が赤くなっていたことに気付かれていなければいいなと思った。

 それから一時間後。ようやく私たちの番がやってきた。このジェットコースターは二人で並んで座るタイプなので、私たちのようなカップルにはぴったりだ。荷物をロッカーに預けて、しょうくんと並んで座った。

「どう? 心の準備できた?」
「……いや、全然。正直おしっこ漏れちゃいそうなくらい……」
「あはは! 相変わらずしょうくんは情けないなぁ」
「いやいや、待ってる間ずーっとさーちゃんがこのジェットコースターの楽しいポイントと怖いポイントを熱弁したから、僕は一人で気持ちを落ち着ける時間がなかったんだよ……」

 だって、ただ待ってるのはつまらなかったから。経験者として、しょうくんが楽しめるようにレクチャーしてあげたかったのだ。
 溜息つくしょうくんはかわいいなと思っていると、スタッフの人が安全バーの確認に回ってきた。カチカチと音がしてちょっと窮屈なくらいバーを下ろされ、いよいよだなと思わず笑顔になってしまう。改めてしょうくんを見やれば、そこには絶望に満ちた顔があった。

「……もう僕、死ぬんだね……大好きだったよ、さーちゃん……」

 思わず声を上げて笑ってしまった。あまりにもおかしくて、涙を浮かべながら笑ってしまう。それだけで、今日デートしてよかったと思った。
 スタッフの方がいってらっしゃいと言って、がたごととコースターが進み始める。すぐに室内を抜けて、青空が広がる外へと出た。そのままゆっくりとコースターは上へ上へと伸びているレールを上っていく。このジェットコースターはまずゆっくり高いところまで上ってから、一気に落ちるタイプだった。だから、まだ喋る猶予はある。

「そうだ、しょうくん」
「……にゃ、にゃに……?」
「このジェットコースター最後に記念撮影用のカメラが設置されてるんだけど、買う予定だから良い笑顔で写ろうね」
「……そ、そんな無茶な」
「そろそろ落ちるよ」
「え――っ!! ぶびゃああああああああああ!!」

 しょうくんの変な叫び声を残して、ジェットコースターはまっさかさまに落ち始めた――。



 終わってみれば、やっぱり一瞬に感じた。でも、私は何度も乗って慣れているから、要所要所でしっかり楽しめた。本当に最高だった。
 けど、問題は私の彼氏のほうだった。

「大丈夫? しょうくん」
「だ、だ、だ、だいじょび……」

 ふらふらの酔っ払いのような足取りで、しょうくんは出口へ向かう階段を下っていた。もちろん私が支えてあげている。普通は逆じゃないだろうかと思ったのは秘密だ。
 でも、この様子だと最後の写真はうまく取れてなかったのかも。できたら今日の思い出に部屋に飾ろうと思っていたけれど、さすがに情けない顔で映っている写真を飾っておくのはかわいそうな気がした。残念だけど、飾るのはやめておこうかなぁ……。買うことには変わりないけど。

 そんなことを考えながら、写真を売ってくれる場所まで辿り着くと、ちょうど私たちが撮られた写真がモニターに映し出されているところだった。そこにはばっちり私としょうくんも映っていた。

「あれ、ちゃんと笑ってるじゃん」

 満面の笑みでポーズをとっている私の隣に、ぎこちないながらも笑顔を作っているしょうくんの姿があった。……カメラの方向向いてないけど。

「頑張ったからね……」
「でもそっぽ向いてるよ?」
「だ、だって! 写真とるなんていわれても、どこにカメラがあるかなんて咄嗟にわからないよ!」

 恥ずかしそうに頬を染めて、しょうくんは怒ったような口調で叫んだ。面白くて私はお腹を抱えて笑った。
 そうして一頻り笑った後、私はしょうくんを支えていた手を離した。

「しょうくん、一人で立てる?」
「う、うん。もう大丈夫だけど……どこいくの?」
「それはもちろん」
「え!? 本当に買うの!? やめようよ、恥ずかしいよ!」

 私が財布を取り出して言うと、慌てた様子でしょうくんは手を伸ばして止めようとしてきた。でも、ふらふらのしょうくんの手なんて簡単に避けられた。

「私の部屋に飾るからね」
「ええええ!?」
「待ち受けにしてもいいかも」
「それは絶対やめてよ!?」

 叫ぶしょうくんを無視して、私は写真を買う手続きへ向かった。
 無事に写真を買い終えてしょうくんの元へ戻ると、しょうくんは遠い目で青空を眺めていた。

「……ははは、きっと僕はさーちゃんの友達に変顔の彼氏として覚えられるんだろうな……」

 本当に私の彼氏は面白いなと思って笑いながら、安心してよと肩を叩いた。

「ごめんごめん。さっきのは冗談だよ。さすがにかわいそうだから待ちうけはやめてあげる」
「……え、待って、飾るのは? あれも冗談だよね……? え、そうだよね……? ね、ねえ!?」

 尚も講義の声をあげるしょうくんを無視して、私は無理やりその腕を取って次のアトラクションへ向けて歩き出す。正直、部屋に飾るつもりもなかった。だって、こんな可愛いしょうくんを家族や部屋に呼んだ友達に見られたくないから。だから私は、後日アルバムを買って、しっかり保護して永久保存することを決めたのだった。

「さあ次行こう!」
「もう勘弁してよぉー!」

 しょうくんの叫びは、遊園地の喧騒にもまれて消えて行った。
 ちなみに、次に目指すのももちろん絶叫系アトラクションだ。永久保存する写真を増やさなきゃね!

コメント

コメントの投稿にはユーザー登録(無料)が必要です。もしくは、ログイン
投稿する