どうも、茶畑紅です。
昨日夜更かししたら、今日一日頭痛で執筆にぜんぜん集中できませんでした。夜更かしは本当にやめたほうがいいですね。これからは早寝早起きを心がけようと思います。
なんだか最近近況報告じゃなくて、ただの世間話だけになっている気がしますが、今日はこれで近況報告は終わりです。
今回の短編ですが、またホラーですので苦手な方は注意してください。今回は結構書きやすくて、もっともっと書き込みたかったんですけど、あまりこればかりに集中すると本末転倒だと思ったのでかなりはしょりました。理解しづらい部分があったら、どうにか想像で補完して頂ければと思います。
それでですが、今まで近況ノートにあげた中でも結構気に入った短編はあったので、改稿して普通に投稿するというのもいいのかもしれませんね。
茶畑紅でした。では、以下短編です。
・短編 ワード『岩場』『人形』
夜。大体の人が寝静まるような時間。僕達四人は車でとある山奥に来ていた。
四人のうちの中心的な人物で、僕の親友である石塚が前に歩み出る。恐らく、これからの流れを説明してくれるのだろう。
「さて、これから先の心霊スポットへと向かうわけだが、その前に一つ俺から提案がある」
「急になによ? 皆で見に行くんじゃないの?」
石塚の発言に、その彼女である野本さんが聞き返した。
「まあ本当はその予定だったんだが、今日は四人いるわけだし、二組に分かれようかと思ってさ」
「……あんた、まさかそのために木村君読んだんじゃ無いでしょうね?」
「あ、え、いや、そんなわけ無いだろう……? なあ、木村?」
「う、うん、そうだよ。僕って怖い話好きだからさ。心霊スポットに行くって石塚から聞いて、僕が無理を言ったんだ」
突然振られて、しどろもどろになりながら答える。
別にこの時点では嘘をついてはいないのだけど、野村さんは怪訝そうな表情で「ふーん」と声を漏らした。その瞳には疑いの気配がはらんでいた。どうやら、野本さんにはばればれみたいだ。
「あー……とにかく、別に異論があるわけじゃないんだろう? ならさっさと組を決めようぜ、くじは事前に作ってあるから。河田もそれでいいだろう?」
石塚が強引に話を切りながら、この場にいる最後の一人に問いかける。彼女はにこやかに笑って頷いた。
「そうですね。私はそれでもかまいません」
「ほら! 皆いいって言ってるんだから、お前だけわがまま言うのもどうかと思うぞ?」
「わがままって…………私はあんたと離れたくないだけなのに……」
野本さんのその呟きは僕には聞こえたけれど、石塚には聞こえなかったみたいだ。それだけで、どれだけ彼女が石塚のことを好きかがわかった。ほんと、つくづく思うけれど石塚にはもったいないくらいの彼女だな。
そんなことを思うと同時に、僕は野本さんに「大丈夫、石塚と野本さんは絶対一緒になるから」と心の中で伝えておいた。
「じゃ、これ。引いてくれ」
石塚が割り箸で作った四本のくじを右手で握って差し出した。最初に引かせるのは、事前の打ち合わせどおり河田さんからだった。河田さんはじっくりくじを選ぶ。やがて決めたのか、一本を引っ張って手に持った。
そして、次は僕。迷うことなくすぐに一本引いた。その際に、石塚とアイコンタクトを交わした。
「最後はお前だ」
「はいはい」
野本さんが一本引いて、くじ引きを終える。全員で確認してみると、石塚は野本さんと、僕は河田さんと同じくじの色だった。
「お、一緒みたいだな」
「……そうね」
石塚に笑顔を向けられて、野本さんはうれしそうにしていた。僕らがくじに細工をしていたのに気付いたかはわからないけど。
「あ、河田さん。よろしくね」
「はい。よろしくお願いします」
僕は僕で河田さんに挨拶をすると、変わらずにこやかな笑顔で返してくれた。河田さんとは初対面だけど、物腰柔らかで大和撫子な女の子といった感じで、僕的にかなり好印象だ。どうせだし、この機会に急接近を狙うのもいいかもと思った。石塚から今はフリーだって聞いてたし。
それから、石塚と野本さんのが一番手として出発し、僕と河田さんが10分遅れで出発することを決めた。もう石塚たちは出発した後で、この場に残っているのは僕と河田さんだけ。河田さんはあんまり喋らないタイプみたいで、僕が何度も話しかけていた。
「それで、ここの心霊スポットってどういうところなんですか?」
「私も噂程度しか知らないんですけど、この山には、精巧な造りの人形がたくさん落ちている岩場があるらしいんです。そして、どうもこの辺りで神隠しがよく起こるみたいで、なぜか落ちている人形達がいなくなっている彼らに似ていると言われています。もしかしたら、行方不明になった人たちは、何者かの手によって人形に変えられているんじゃないか……ってお話が、ここの設定みたいですね」
「設定って、見も蓋も無いですね……」
「私、オカルト話は信じていないので」
ちょっと話してみれば、不思議ちゃん系というか天然系というか、とにかく特殊なタイプの人なのだとわかった。でもそんなところも、河田さんの魅力の一部だとも思う。顔もよくて声もよくて、まだ深くまではわからないけれど、僕はもう結構惹かれていた。
「あ、そろそろ10分ですね」
「では行きますか」
僕らも石塚たちの後を追うように出発し、森を奥へ奥へと突き進んだ。しばらく歩いていると、岩肌がよく見える岩場へと辿り着く。足場を照らしていた懐中電灯で岩場のほうを照らしてみると、山の斜面に沿って割れるように穴が開いていることがわかった。多分崖になっているのだろう。足を滑らせて落ちないようにしないと。
「……これ、どのくらい奥まで行けばいいんですかね」
「さあ。詳しい場所までは私も知りません」
足場はもう完全にごつごつとした岩場に変わり、生えていた木々もなくなった。山だから風も結構あって、油断したら転んでしまいそうだ。気をつけないと。
「あ――!」
気合を入れて足を踏みしめていると、背後から悲鳴のような声があがった。咄嗟に振り返って、河田さんが躓いて転びそうになっていることを瞬時に理解し、手を伸ばして体を支えようとした。
が、間に合わず、僕も巻き込まれて二人で転んでしまう。その拍子に、河田さんの背負っていたリュックが放り出されたが、僕はそんなことに気をとられている暇はなかった。ずっと沿うように歩いていた崖が、まだ近場にあったからだ。
そのまま転がって落ちたりしないように、僕は河田さんを抱き寄せたまま踏ん張った。
「……ごめんなさい」
「いえいえ、いいんですよ。危ないので気をつけてくださいね」
どうにか滑落することだけは避け、ゆっくりと砂埃を払いながら立ち上がる。河田さんはしきりに謝っていたけれど、僕は笑って大丈夫と伝えた。
正直に言えば、河田さんの体の感触も楽しめたし、助けたことで好感度も上がったかもしれない。僕としてはかなりおいしい展開だと思った。
「あ、リュック拾ってきますね」
「……ありがとうございます」
さらに好感度を上げようと、転がっていたリュックへと近寄る。崖の方向へと放り出されていたけれど、どうやら落ちてはいないみたいだった。
安心しながらリュックを拾い上げようとすると、付近にまだ何かが落ちているのが見えた。なんだろうと思いながらリュックを持ち上げると、どうも口が開いているみたいで、その中身が散乱してしまったのだろうと察した。
落ちた物は崖の際まで転がっていたため、気をつけながら取りに向かう。ある程度近づいてから懐中電灯で照らすと、だんだんとそれがなんなのか見えてきた。
「……人形?」
シルエットが人の形をしていたのと、先ほど聞いた話しから連想してそう思った。そして、それはどうも間違っていなかったみたいだった。
拾い上げて、近くで照らして見てみる。精巧な造りの人形で、かなりリアリティがあった。でも、なんだろうこの違和感。この人形の格好や顔立ち……誰かに似ている気がする。
とりあえず、もう一つ落ちていた人形も拾い上げてみると、ようやくその違和感に気付いた。
これ、石塚と野本さんに似ているんだ。
気付くと、僕の背中からはバッと冷や汗が噴き出した。
もしかしたら、石塚と野本さんはもう神隠しに遭い、人形にされたのでは……と一瞬考えたけれど、違う。そうだったほうが、下手をしたらよかったのかもしれない。
だって、これ、河田さんのリュックから出てきたものだ。
「河田さ――え……?」
どういうことなのか、それを問いただそうと振り向こうとすると、背中に僅かな衝撃を受けて僕の体は前へと押し出されていた。
前に広がるのは、崖だった。それも、かなり高い。
「あなたの人形は作って無いのに」
最後にそんな冷たい呟きが聞こえ、僕の体は浮遊感に支配された。