どうも、茶畑紅です。
今日はアイスティーを作りました。ただ紅茶を冷やしたものではなく、熱い紅茶を入れてから氷で急冷した、恐らく本格的な奴です。調べたとおりにしただけですけどね……(汗)。
飲んでみると香りもちゃんとあって、かなりおいしかったです。はまりました。多分これからしばらくは、アイスティーが執筆のお供になると思います。
あ、近況報告を忘れてました。最近短編に時間を割きすぎて、書きたいほうはあまり進んでいません。でも、これも練習ですので、ゆっくりやっていこうと思っています。
さて、今回の短編ですが、季節はずれのバレンタインデーのお話です。まあまあ綺麗に纏まったんじゃないかなと思います。それでも、まだまだ雑なところが多いので、これで満足はしませんが。
これからも完璧を求めて、精進して意向と思います。
では、以下短編ですので、気が向きましたらどうぞ。茶畑紅でした。
追記:いつも記していた短編の”お題”ですが、改めてみるとお題になっていないように感じたので、これからは無理なく短編に入れる言葉として”ワード”という言い方に替えようと思います。
・短編 ワード『義理チョコ』『味をしめる』
今日は待ちに待ったバレンタインデー。僕は去年と同じく、昨日のうちに『義理チョコ大募集!』と書いた紙を机に貼っておいた。そうすることで、哀れに思った優しい女の子達がたくさんチョコをくれるのだ。
去年のバレンタインデーにそれを知って、味を占めた僕は今年も同じことをした。だから、いろんなチョコを味わえるだろうと前々から楽しみにしていたのだ。
え? 本命をくれるような女の子はいないのかって?
……それは企業秘密ですが、もう二度とそんな疑問は抱かないでください。
教室に入り、クラスメイト達に挨拶をしながら自分席へと向かう。その途中に、ふわりとカカオの香りが鼻腔をくすぐった。うん、皆しっかり準備してきているみたいだ。
尚更高まる期待の中、自分の席に辿り着いて机を見る。昨日と変わらず、そこには僕の張った紙がそのままになっていた。
……あれ? 去年はこの紙の上にどっさりチョコが置いてあったはずだけど……。
おかしいなと首をかしげながら、後から来た人も気付けるように机の中に入っているのかもと思って引き出しを引っ張ってみるけれど、入っているのは教科書やノートのたぐいだけだった。
愕然として、そんなはず無いだろうと周囲を見回してみる。クラスメイトの男子が、女子からチョコを貰う姿が目に入った。その女子は、続けて他の男子達にもチョコを配っていた。談笑しながら男子の席を渡り歩いて、やがて僕の近くまで来た。
そして、眺めていた僕とふと目が合う。女子は苦笑いを浮かべて僕から視線を逸らした。そしてそのまま去っていく。もちろん、チョコは渡されてない。救いを求めるように他の女子達へと視線を送ってみるけれど、誰一人として目を合わせてはくれなかった。
え、まさか僕だけ意図的に渡されて無い? 気付いてしまうと、もうそのことしか考えられなかった。
味をしめて今年も乞食のようなことをしたから、避けられているのだろうか。それとも、ただ単純に僕のことを嫌って、皆でハブっているのだろうか。……だとしたら、信じたくは無いけど……これっていじめなのでは!?
僕の被害妄想は、時間が経てば経つほど加速して行った。
その後、お昼休みに近場の女子全力で謝りながら聞いてみると、どうも嫌いになったりいじめようとしているわけでは無いことがわかった。僕は人生で一番ほっとしていたと思う。いや、優しいクラスメイト達だから、信じてはいたけど!
だけど、だったらなぜと聞くと急に歯切れが悪くなり、煮え切らない態度であしらわれた。結局どういうことなのかわからず、一つもチョコをもらえないまま放課後になってしまった。
チョコを貰ったらしい友人達が、そのことではしゃいでいる中、僕は一人寂しく帰る事にした。このままここにいると、涙がちょちょぎれてしまうと思った。
ひとりでとぼとぼと教室後方にある扉へと向かう。途中横目に見えた女子達から、なにやらにやにやと見られている気がした。
「待って!」
扉を開けたところで、後ろから服の裾を引っ張られて足を止めた。聞き覚えのある声だったから、僕はゆっくりと振り返った。
「えっと、どうかした……?」
そこにいたのは、やはりよく見知った女の子だった。彼女は僕と同じ委員会に所属している、最も仲がいい女の子。ちょっと無口で人見知りなところがあるけれど、打ち解けてみればすごく優しい心を持った魅力的な子だと知った。そんな子だったから、僕は今日一日彼女にはチョコのことを聞かなかった。だって、彼女にまで義理チョコを拒否られたら、ショックで立ち直れなかっただろうから。
だから、今も酷く緊張しながら、彼女に向き合っていた。
「……あのね、これ……」
相変わらず言葉少なで、彼女は後ろ手に持っていた丁寧なラッピングが施された箱を差し出してきた。
それでわからないほど僕はバカじゃない。きっと彼女は、一つもチョコをもらえない僕を哀れに思ってくれたのだろう。本当に優しい女の子だ。
「あ、ありがとう!」
僕は両手で包み込むように受け取って、なんとなくじっと眺めてみる。義理チョコなのに、あける前から器用で几帳面な彼女らしい丁寧な造りだと思った。
「あけていい?」
そう聞くと、彼女は控えめにふるふると首を振った。
「……あ、でも、振ったりはしないで欲しい……」
「あ、うん。わかった」
家に帰ってから食べろということらしい。加えて、どうも形が崩れるタイプのものみたいだ。なんだか気合が入っていそうな気がする。
「でも、本当にありがとう。誰からもチョコもらえなくて、僕泣きそうだったんだよ……。義理でもすっごくうれしいよ。大切に食べるね」
心からそう告げると、彼女はムッとした顔をこちらに向けた。
え、僕なんか気に障ること言っただろうか……?
と心配したのだけど、彼女の気に障ったのはまったく別のことだった。
「…………義理……じゃない、から……っ!」
消え去りそうな音量で彼女は呟いて、逃げるように僕の横を去って行く。
あれ? いま、なんて言ってた? 義理じゃないって、どういうこと?
よくわからなくて混乱する僕の横を、今度は教室に残っていた女の子達が通る。彼女らは口々に「よかったね」とか「うらやましい」とか「返事は早めにしてあげて」とか、今の混乱している頭ではうまく理解できないことを言いながら、走り去った彼女を追って行った。
僕には何が起こったのか理解できず、しばらく呆けることしかできなかった。
ただ、心臓だけは異様に早く鼓動を繰り返していた。