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近況報告と短編15

どうも、茶畑紅です。

最近だんだんと涼しくなってきましたが、家にエアコンのない僕としては非常にありがたいです。頭もうまく回るようになってきて、執筆作業もはかどりそう……はかどればいいな、と思っています。
それと、ちょっとずつちょっとずつですが、普通に投稿する作品の執筆も進みつつあります。まだ時間はかかるかもしれませんが、もし楽しみにしている方がいましたら気長に待っていただければ幸いです。

今回の短編についてですが、実を言うとお題の一つを読み違えたまま大作を作ってしまい、後から気付いて慌てて他のワードで書いた作品になっています。ですので、完成度はやはりお察しです。その上、ストーリー性もオチも特にないので、読む分にはかなりつまらないものになっていると思います。僕的には、書く事に慣れようとして行っていることなので、いいのかなと思っていますが。
そう言うことなので、今回の作品は恐らく読まないほうがいいと思います。時間の無駄になってしまいますので。しかし一応自分の中で決めたことなので置いてはおきますね。茶畑紅でした。




・短編 お題『夏祭り』『雨の気配』

 お腹にずしずしと響く太鼓の演奏が終わり、公園内を暖かな拍手が包み込む。夏祭りの演目も中盤に差し掛かり、子供たちは絶好調ではしゃぎ、大人はいい感じに酔ってきていた。ちなみに、俺は後者のうちの一人だ。

『次は盆踊りです。子供も大人も奮ってご参加ください』

 祭りの始まりから司会を務めてくれている小学生の女の子が、緊張した様子で台本を読んだ。それに、酔っ払いが「おー! ワシが華麗なダンスを披露してやるぞー!」などと野次を飛ばしていた。毎年よく見る光景だった。
 今日は地区の夏祭りだ。地区の住民だけでやる祭りだから大したものもないし、見たことある人しかいないけど、だからこそアットホームで楽しめる。俺はこの夏祭りが好きだった。

 そして、今まではずっと参加する側だったけれど、今回はお手伝いとして屋台で料理を出していた。メニューはたこ焼きだ。主婦たちの知恵が詰まった生地で作ってるから、よくある屋台のものよりおいしいんじゃないかと思う。時折酒の肴にとか言ってつまんでいるけど、確かにおいしいと感じた。ジャンクな感じじゃなくて、なんかノスタルジックな気分になるタイプの味。まあ結構酔ってるから味覚に自信はないけれど。

 とにかく、俺は今年も夏祭りを楽しんでいたのだった。
 だけど、どうも今年はそんな楽しい夏祭りも終えるのが早そうだった。

「一雨降りそうですねぇ」
「だなぁ」

 俺はたこ焼きをくしでひっくり返しながら、何気なく呟いた。隣にいた俺の同級生の親である後藤さんも、眉をしかめて頷いた。
 肌を撫でる夏にしては冷たい風と、日差しで熱せられた地面に雨が落ちることで発生する独特な臭いは、嫌に雨の気配を俺に感じさせた。

こういう時はほぼ確実に降ると、経験則からわかる。ただ、軽い雨ならいいのだけれど、この時期は突然の豪雨になることも多いから心配だ。その場合は夏祭りも中断せざるを得ないだろう。大人は別にいいけれど、子供達がかわいそうだから出来たら降らないで欲しいなんて思っていた。

 だけど、やはりというかなんと言うか、雨は結構激しく降り始めた。
 俺と同じように予感した地区の役員が、事前に雨が降るかもしれないと告知してくれていたから、ほとんどの人は濡れずにすんでいた。というか、雨が降ることはわかっていたのか、傘を持っている人がほとんどだった。ちなみに、アナウンスされていた盆踊りに使うやぐらは、雨が降りそうということですぐに片付けられた。
 俺は先ほどと代わらずテントの下で、たこ焼きを焼きながら雨が上がるのを待っていた。でも、雨は弱まるどころか強まるばかり。すぐには止みそうになかった。

「中止、になっちゃいそうですね」
「まあそうだな。この時期だし仕様がないと割り切るしかなさそうだな」

 後藤さんはそう言って、辺りに散らばったゴミや空き缶を回収し始めた。手際がいいなと思いながら、俺は生地が終わるまで焼いといてと頼まれていたので、せっせとたこ焼きを作り続けた。
 それからすぐに中止とアナウンスされ、遊びに来た人たちはそれぞれ散っていった。俺はたこ焼きも焼き終えたことだし、せっせと片付けを始めた。妙に皆手馴れていて、ある程度の片付けはすぐに終わった。後から聞けば、「三回に一回は雨降るし、もう慣れた」とのことだった。
 最後にテントを低くして、後は翌日の朝に片付けるということで解散になった。

 今年の夏祭りはこれでもう終わりか、と寂しい気持ちになっていると、夏祭りを運営していた区のお偉いさん(毎年誰かしらが選ばれる)が注目を集めるように手を上げて言った。

「じゃあ今日は打ち上げがてら、我らが公民館で飲みますか!」

 その声にあわせて、運営側だった大人たちは笑いながら了承の意のこもった言葉を投げかけていた。
 俺はというと、そんなんでいいのだろうかと口をあけて呆けるばかりだった。

「ほら、君も行くんだろう?」
「え、俺もいいんですか?」
「当然だろう? つまみの一部を作ったのは君なんだから」

 後藤さんはそう言ってがははと笑った。
 どうも、あまったたこ焼きなどを食べながら酒盛りが始まるらしい。本当にそれでいいんだろうか、なんて思う自分と、楽しそうだしまあいいかと思う俺がいた。お酒を飲むのはやっぱり好きだし。

「じゃあご一緒させていただきますね」
「そうこなくっちゃ! まだまだのめるよな?」

 すっかり酔った様子の後藤さんに肩を組まれて、少しよろけながらも笑って頷く。

 正直、それから先のことはよく覚えていない。後藤さんがいっぱい仲間を連れてきて、一番若い俺は質問攻めにされながらお酒を飲まされたところまでは覚えている。翌日の頭は酷く重かったが、すっかり雨の止んだ晴天の下で片付けを行って、出されたおにぎりを食べたら残ったアルコールもどこかに吹き飛んでしまった。それをよろよろの男衆に話すと、若さだななんて言われてまた大声で笑いあった。こんなに楽しかったのは久しぶりだった。

 ただ楽しむ側だった時とは違って、なんだかこんな夏祭りも悪くなかったなと思うのだった。

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