どうも、茶畑紅です。
ここ二日紅茶を摂取していないため、禁断症状が現れそうな僕です。
……なんてそんなわけありませんが、明日はゆっくり優雅に紅茶を飲みながら執筆できたらなと思ってます。
ということで、またギリギリですが、近況ノートの更新です。今日はまた忙しかったので、短編もかなり短めですし、投稿予定の執筆も進んでいません。もし楽しみにしてくださっている方がいましたら、本当に申し訳ありません。明日こそはどうにかがんばろうと思います。
では、以下に短編を置いておきます。今回は非常に短めで、僕自身どうしてこうなってしまったのかわからない内容になっています。お題についても、これじゃなくてもかけたのでは? という出来です。期待しないで見たほうが身のためかもしれません。それでもよろしければ、どうぞ。
・短編 お題『宝箱』『二度寝』
気が付くと白い壁、白い天井、白い床が視界いっぱいに広がる部屋にいた。どうしてこんなところにいるのか、まったくわからない。思い出せる最後の記憶は、締めに食べたお腹に優しそうな味のラーメンだ。器を両手で持って残さず飲み干したところまでしっかり覚えている。
なら、その後どうしたのかも思い出せるはず。そう思った俺は必死で思考を巡らせた。
だが、やはり思い出せない。昨日は相当飲んでいたし、いつも以上に記憶が混濁している気がした。それでも必死でどうにか搾り出した記憶は、物静かな同僚が「僕、実は男の人が好きなんです」と、真っ赤な顔で告白してきたことだけだった。
って、なんだそれ。絶対に正確な記憶じゃないだろ。確実に何かの漫画と混ざってる。
俺はもう思い出すことを諦めて、今はこの状況をどうにかするのが最優先だろうと考えた。まずは現状を把握するために、辺りをしっかり見渡してみる。さすがに全面白い部屋で、扉の一つもないなんてことは無いだろう。
そんな俺の淡い期待はすぐに打ち砕かれた。当然のように、部屋の中には扉のようなものは付いていなかった。
絶望的な感覚に陥りそうになりながらも、一つだけ白以外のものを見つけていた。
それは、宝箱だった。そう、海賊が隠している開けると金や宝石があふれ出てきそうな見た目そのままの、あの宝箱だ。
おもむろに近づいて、触れようとして動きを止める。
まてよ……? これはもしかして、この密室から脱出するための鍵なんじゃないか?
そう言う憶測を立てて、伸ばしていた手を引っ込めて考える。
これは明らかに中に何かが入っているのだろう。こんなにあからさまにおいてあるし、中にあるアイテムを使って脱出の術を考えろということなのではないか? ……いや、考えすぎかもしれないが、この宝箱自体を鍵として使う可能性もあるのではないだろうか。例えば、この宝箱を開けずに、ある特定の動作をすることによって出口が開いたりするのでは。もし、仮のそれが正解だった場合、宝箱を開けてしまったら俺はどうなる? 一生条件をクリアできずに、この部屋の中で死ぬのか?
どんどん頭の中で疑心暗鬼が加速していく。
心配性で納得するまで考えたいという性格と、最近はまって読んでいたデスゲーム漫画の内容が俺の想像に悪さしていた。
いや、そもそもこの宝箱に触れていいのだろうか。触れることで、部屋中が水や火で満たされて殺されるのかもしれない。周囲の壁から突然矢や槍が飛び出してきて刺殺されるのかもしれない。壁が迫ってきて圧殺されるのかもしれない。
その場合の条件は、きっと宝箱に一定時間以上触れないことだろう。それが正解なのだろうか?
まて、もしその条件が間違っていたら、俺は餓死するまで待つことになってしまう。そんなことは出来ないし絶えられない。なら、ここは一息に触れてしまうべきなのだろうか。可能性としては、そのほうが正解の確立は高いはずだ。絶対に触れるな、なんて条件をつけるならば、別に宝箱である必要なない。もっと触れたくなる様なものにするのが定石だろう。
ならば、ここは触れるべき……。いや、でも、それが俺をここに閉じ込めた奴の考えた精神的な罠なのだとしたら……。
あああああああああああ! まどろっこしい!!
俺はついに自分自信に対して感情をぶつけようと心の内で叫んだ。俺は、こういう自分の考えすぎることが嫌いだったのだ。だから最近は頭を空っぽにできるお酒に逃げ続けていた。それがいいことじゃないとわかっていながら。実際こんなことになってるし。
そして、お酒のような逃げ道が無い場合は、思い切ってやるのが吉だと長く苦しい人生の中で知った。
だから、俺は勢いよく宝箱を開けたのだ。この中で何が待っていようと、俺は絶対に脱出してみせる。そう心に決めていた。
そんな風に意気込んで開けた宝箱だったが、中に入っていたのはたった一枚の紙切れだった。
その内容は『おめでとう。ようこそ、こちらの世界へ』というものだった。
見た瞬間、俺は意識を失っていた。
※
全身に汗をたらしながら、俺は起き上がった。慌てて見回すと、そこは見慣れた自分の部屋だった。
なんだ夢だったのか、よかった。そう安心した直後だった。
「うんん……昨日も思ったけど、結構大きいよね……」
隣からうめくような声と、信じたくない呟き。そして、股間に触れる温かい手のような感覚。全身に鳥肌が立った。
そして、思い出してしまったのだ。昨日、お酒で頭をからっぽにしたせいで、犯してしまった俺の過ちを。
俺は、静かに掛け布団を被り直して、目を瞑った。
そう。さっきも思ったとおり、考えすぎてしまう時は思い切って行動、を実践したのだ。
要するに、現実逃避。二度寝だった。
俺はこのとき、二つのことを思っていた。
まず一つは、願わくばまたあの白い部屋にいけますように。そして二つ目は……。
お酒はほどほどにしよう。ということだった。