どうも、茶畑紅です。
今日で記念すべき10回目。今更だけど、とりあえず三日坊主にならなくて安心しています。これからもこの日課は続けていこうと思います。
それで、以前に言っていた過去作の改稿についてですが、現在の進行率はだいたい三割といったところです。うまく筆が乗れば今日明日には投稿できるかなと思っているので、気長にお待ちいただければ幸いです。
では、以下短編です。
今回はランダムワードに変なものが多く、話を考えるのにかなり苦戦しました。比較的組み合わせやすいかなと思うワードを選んだら、また食べ物に関するものになってしまいました。食べ物に逃げる癖がつきそうで怖いです(汗)。
あと、注意ですが僕は短編の中で出てくる食べ物を食べたことがありません。完全に想像だけで書きましたので、そこだけはご了承ください。
・短編 お題『カラスミ』『成分表示』
「あーもう!!」
僕はコントローラーをテーブルの上に放り投げて、ソファの背もたれに干されるような格好で体を預けた。同じクラスの友達に勧められてはじめてみたけれど、僕に対人ゲームは難しいみたいだった。
もうやる気もおきず、暇になってしまって手足をぶらぶらと揺らしていると、カシュっと小気味良い音と共に、姉ちゃんがダイニングの椅子に腰掛ける様子が見えた。姉ちゃんが二十歳を超えてから毎日見る光景だ。そんなにお酒と言うのはおいしいのだろうか? そうおもうけど、僕はまだ小学生だから、飲んだらお母さんに怒られてしまう。
まあでもそんなことはいつものことだと思っていると、お酒の香りに混じって嗅ぎなれない香りを感じた。暇だし気になると思って、ソファを飛び降りて姉ちゃんの元へと駆け寄った。
「姉ちゃん、なに食べるの?」
「ん? ああ、カラスミだよ」
「何それ?」
聞いたことの無い言葉だった。
「友達が旅行のお土産で買ってきてくれたんだけど、私もよく知らん。とりあえず酒のつまみに良いとだけ聞いた。あんたも喰う?」
「うん、気になる」
「じゃあ切るか」
背が足りなくて、テーブルの上にあるカラスミとやらの現物は見えていなかったけど、僕は頷いた。姉ちゃんはそれを持ち上げて、台所へと移動した。その際に見えたのは、大きな乾燥したたらこみたいなものだった。あまり食べたいと思わない見た目だと思った。
というか、姉ちゃん。僕が食べるといったから切る、見たいな様子だったけど、まさかかぶりつくつもりだったの?
ふと思った疑問だったけど、僕は怖くて聞けなかった。
「こんくらいかな?」
お皿の上に乗っけたまま包丁を使い、薄く一口サイズにスライスする。姉ちゃんはそのまま一つ口の中に放り込んだ。
「あー、こんな味。確かにこれはつまみだわ」
「ずるい! 早く僕にも頂戴!」
姉ちゃんがおいしそうに食べたものだから、僕は早く欲しくなってしまった。
「はいはい。一枚どうぞ」
「ありがと」
指でつまんだ一枚を受け取り、まずは指で弄んでみる。思ったよりも硬かった。
「あむ」
口をいっぱいにあけて、全部放り込んでみた。僕は後悔した。
「んー! んんんー!!」
しょっぱい! そしてなんか食感がキモイ! 僕の感想はそれだけだった。
「あーあー、あんたにはやっぱり早かったね」
姉ちゃんがティッシュを持ってきてくれて、奪うように受け取ってすぐにその上に吐き出した。こんなの食べ物じゃない。そう強く感じた。
「これ何!?」
ティッシュに包まれたままのそれをゴミ箱にシュートしてから、僕は姉ちゃんに詰め寄った。
「え、だからカラスミだって」
「違う! 材料は!?」
「うーん、知らん。私にゃうまいから気にせん」
頼りにならない姉だった。
「もういい! 入ってた袋は!?」
「ゴミ箱」
僕はすぐさまゴミ箱へ走った。
中からカラスミとやらが入っていたであろうパッケージを取り出し、背面の成分表示を見てみる。
『原材料名:魚卵(ボラ)、食塩』
それしか書いてなかった。やっぱりたらこと同じ、魚の卵みたいだった。
「姉ちゃん。ボラって何?」
「それも知らんけど、魚ってことだけはわかる。魚ってそんな名前ばっかだし。ほら、タラとかブリとか、似てるじゃん?」
どこまでも適当な姉だった。
「で、まだ欲しい?」
「いるわけない! もう寝る!!」
「だよね。ちゃんと歯磨いてからにしなよ~」
「わかってる!!」
なんだかムカついて、やけくそ気味に僕は返した。
僕はそうして、ベッドに潜りこんだ。もちろん歯は磨いた。あの変な味を洗い流したかったし。
でも、なんだかまだ口の中にあの妙な臭さが残っている気がして気持ち悪かった。
「……もうやだ」
呟いて、涙目になりながら僕は掛け布団を頭まで被った。もうゲームをする気にもなれなかった。結局眠れたのはそれから一時間後だった。
このときのせいで僕は、あのカラスミという食べ物がトラウマになり、二度と食べることは無くなったのだった。後ついでに、姉ちゃんのことも少し嫌いになったのだった。