どうも、茶畑紅です。
そろそろここに出す短編だけでなく、小説として投稿するものを書き始めようと思っています。まず始めは、以前にあげたものを改稿してあげ直す予定です。
その理由としては、単純にその作品を後から客観的に読んで見て、もったいないなと感じたからです。ストーリーはお気に入りなのに、文章がそれをいかしきれていないなと思ったので。ただ、書き直したところで納得いくものになるかは疑問ですが……。
なんにしても、そんな予定でがんばっていこうと思います。
では、以下短編です。今回の短編は胸糞要素があるので、そういったものが苦手な方は読まないことを推奨します。
※胸糞展開注意!※
・短編 お題『ギロチン』『痛み』
「罪人! 前へ!」
その声が響くと、僕は背後にいた兵士に突き飛ばされた。
手も足も縛られていたから、バランスが取れずにつんのめって倒れる。ささくれ立った木製の壇上に肌を打ちつけて、血が溢れ出た。わりと深く皮膚が裂けたのか血はどんどん体内から飛び出していき、ただでさえ投獄生活で弱っていた僕の体力をさらに奪った。だけど、やはり痛みは感じられなかった。
「早く行け!」
倒れたまま動けない僕は、お腹を蹴り飛ばされる。
肺から酸素を吐き出しながら転がり、大きな器具の前へと躍り出た。見上げてみると、禍々しい刃が吊り下げられていた。どうや
ら、僕はこれからあれに殺されるらしい。
「首を繋げ」
また指示が飛び、僕は無理やり叩き起こされて、刃の落下経路に首を固定された。
手足も何かに固定されて身動きがとれず、僕は正面で野次を飛ばす民衆を眺めるしかなかった。
民衆達の声がいくつか耳に入る。『反逆者!』『この人殺し!』『よくも領主様を!』そんな憎しみと怒りの込められた言葉たち
だ。誰も彼もが殺意に満たされた様子だった。
だけど、そんな言葉は今更僕の心に響くことは無い。いや、今まで一度も響いたことなんて無かった。
僕には、痛みというものが感じられないから。正確には、感じられなくなったから。
だから、僕に罪悪感というものも一切生まれては来なかった。
「罪人、最後に言い残すことはあるか?」
聞かれて、僕は困ってしまう。僕がここで何か言い残して、果たして意味はあるのだろうか。
例えば、もしここで僕が真実を話したとして、ここにいる民衆たちは助けてくれるだろうか。同情してくれるだろうか。許してく
れるだろうか。
……いや、少し考えたらわかる。誰も許してなどくれないのだ。僕は彼らの愛する領主を殺したのだから。
「……何もありません」
「そうか、ならいい」
興味なさそうに返され、僕は苦笑する。始めから聞く気なんて無かったくせに。
「罪人ウォロ・ギャラスは、実の父であるケヴィン・ギャラス公爵、並びに実の母であるハレア・ギャラス公爵を殺害した。従って
、斬罪に処する!」
男が声を張り上げて、民衆の叫びがこだました。それには、怒りと憎しみに狂ったようなものばかりではなく、泣き叫ぶようなも
のまで混じっていた。どうやらそれほどまでに愛されていたらしい、お父様とお母様は。
よく考えてみたら、お父様とお母様がストレスを抱えていたのはそのせいだったのかもしれない。そのはけ口として僕が毎日拷問
されていたのも、みんなの期待が重すぎたからなのかもしれない。だったら僕が殺すべきは、お父様とお母様だけではなく、この民
衆達もだったのかもしれない。
なんて、今更気付いても遅いのだけど。
「執行しろ!」
声と同時にロープの切れる音がして、頭上から何かがすべる音が聞こえる。
大丈夫、きっと苦痛は感じない。長らく拷問されたおかげで、痛みは物理的にも精神的にも感じなくなったから。
だから、今この胸を焼き焦がすこの感覚も、痛みなんかじゃない。苦痛を感じてなんかいない。こんな奴らのために胸を痛める必
要なんて無い。
なんて強がってみたけれど、心のどこかではわかっていた。これが痛みなんだって。
「……ああ、悔しいなぁ」
僕は最後に小さく呟いた。それと同時に重い音が耳に響いて、僕の意識は消え去った。
今ここにいるやつら全員殺したい。そんな感情に胸が強く痛むのを、僕は最後に感じた。