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新章公開:「吾が妹に」(その二)

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逆理桜紅葉(さくらともみじ さかさのことわり) 十二の巻「吾が妹に」(その二)

 ようやくここまで書けた、やっとここにたどり着いた、という感じです。いやはや長かった。
 この十二の巻(その一)と(その二)は、作者の私としては七の巻(その一)~(その三)に並ぶ本作品全体の重要回と考えています。本作のエッセンスが特に凝縮されたところなのです。
 それだけに、執筆にかかる筆カロリーが高かった……

 ここで私が一番描きたかったのは、蛇神が人の心に目覚めていく発端と過程。姫の死と再生に直面した蛇神の心に湧き上がってくる、これまで彼女が持たず知らなかった畏怖、後悔、迷い、生命の尊厳等々……それらを姫が教えて導いていく。「力に於いて絶対無敵の超存在を、人の優しい心が打ちのめす」という、ある意味実に時代がかった、今時流行らない古色蒼然たる展開でもあります。
 こういう古臭いことが真正面から書けるのが、あるいは本作が時代ジャンルにいる意義とも思っています。

 ただそこに猟奇怪奇グロテスクを盛ってしまうのが、我ながら困った趣味なのですが……いやホラ!真顔でキラキラしたお話を書くのは柄でもないので(苦笑)。それと、私は「美と醜の仮借ないコントラスト」というシチュエーションが好きなのです。だからこうなってしまうわけなのですが。
 「美醜」という価値概念は本当に容赦がない残酷なもの。それを正しさや優しさでどう抑えていくべきなのか、ということは私にとって描きたい大きなテーマの一つ。本作特にこの十二の巻はそこを前面に打ち出したつもりです。

 あいかわらず小難しい(そして実は作者としてちょっと理論的にも自信がない)テツガク少女な姫の仏教うんちく。「因縁果報(縁起観)」とか、「五蘊盛苦」とか「不妄語戒」とか。これまた盛って盛りまくりましたが、雰囲気だけ伝わって下さい(オイコラ)。一応、「五蘊盛苦」は美醜に限ったことではなく、「人間は自分で自分の心身をコントロール出来なくて苦しむ」というのが本来。タンスの角に小指をぶつけたらどうあがいても痛い、なんてのも充分「五蘊盛苦」の範囲内。ただ、美醜の感情は逆らい難いという意味で、代表的と言えるのでは、と思い本作ではああいう表現になりました。
 
 さてそして。
 涙ながらも仲直り出来た姫と蛇神ですが、だまっていないあの男。次回からいよいよ動き出します。姫と蛇神の真の悲劇はここから……

 最後に。作中歌「吾が妹に」、本文中ではリンクにならないので、こちらにもアドレスを。

 YouTubeで … https://youtu.be/1VAXNxuWhlE
 ニコニコ動画で … https://www.nicovideo.jp/watch/sm15397221

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