子供の頃、猫を飼っていました。
この方が分りやすいので、こう書きますが、“飼って”いたのではなく、一緒に暮らしていました。
そう言うのが正しい。なにしろ上も下も無い。
さておき、或る日小学校から家に帰ってみると、小さなサビ猫が居た。
サビ猫とは何かと言えば色柄の表現で、ブチだかシマだか分らん混ぜこぜの模様の猫の事です。直ぐに言えば“雑種”ですな。
でも基本のフォルムがシャム猫だったので、スラリとしてシャープなスタイルが美しい。
そのスタイルに覚えが有ったので、最初はかなりコイツを警戒していましたが、気質がざっかけないらしいので、それを確認した後は可愛がって暮らしました。
私は長女で、次女が病弱であったということから、何かと忙しい両親には「何でもないお姉ちゃんは放ったらかしで大丈夫だろう」との認識があり、構うのが面倒臭いという理由(多分)で、私を方々にレンタルされていました。
まあそういうことで、私は実の両親に思慕の思いが抱けなくなりましたが。
レンタル先の叔母の家でシャム猫に出会いました。
体色のメインは優しげなアイボリー。
耳の先や鼻先、四足の先とすんなりと伸びた長い尻尾の先に焦げ茶色のポイントが入っていて、人間であれば白目の部分が透き通るような美しいブルーのぱっちりとした大きな目。
綺麗で可愛らしくて、優しそうなその生き物に触ってみたいから、頭を撫でてみました。
シャム猫は、そういうのが大っ嫌いなんですね。
すぐさま「気安く触ってんじゃねぇよ(怒り)!」の逆襲を受けて大変な騒ぎになりました。
この時点で私は猫嫌いになっていてもおかしくはなかったのですが、或る日私の人生の中に登場したぺぺの存在によって、生涯猫好きになりました。
ぺぺはウチの子の名前です。
この子の出処はやはり叔母の家で、その当時話題になっていた「猿の惑星」というドラマの中のヒロインの名前が“ぺぺ”。それを取って命名されたそうです。フランス風の洒落た名前だそうですよ。
わたし自身は「猿の惑星」など観た事が無いし、観たいとも思わなかったので、どのようなストーリーなのかも知りません。
ところで、なぜ、ぺぺがウチに来られたのか?
叔母は猫好きの人のはずですが、飼育しきれないと判断した途端に、手の平に乗るぐらいの小さな子猫を段ボール箱に詰めてあっさりと豊平川に投げ込むことを繰り返していました。
私の母はその話にゾッとして、全部は引き受けられないけれど…と、選んでかっ攫ってきたのがぺぺだったようです。
ぺぺがその後どうなったのかと言えば、化け猫になるのか!?と思われるぐらいの年数(確か22年くらい)生きて大往生したので、不満は無かったと思います。
ウチはあれこれごちゃごちゃしている家だったので、わたしは彼女の死に目に会えなかった。