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トレモロ 1 巻 2 章 7 話

「いや、捕まえて話を聞こう。」
クラウンが答えるとフレイヤは炎に包まれ消えた。

「無事か?」

「スノー!3人捕まえたよ。」

「おお!やるじゃねーか!チョコは無事だぞ、今、再起動してる。」

「よかった。本当に良かったー。」

「mcs(モロクリアンカスタマーサービス)呼ぶぞ。」

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mcsは数分で到着し、火傷を負ったエルフ3人と骨の折れたモロクリアン兵が担架で運ばれ連行された。

チョコとゴーストは救護班がペットラボに連れて行ってくれた。

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数時間後、サイプレス号船内。

スノーは報告を作成し、クラウンはうとうとしているとモニターにテロップが流れた。

ーペットラボからメッセージ。面会可能となりましたー

クラウンとスノーは急いでお見舞いに向かった。
アルカディアステーション、住宅街エリアのペットラボに到着。

カランコロン。扉を開けた。
エプロンを着けたエルフの男が出迎えた。
「チョコちゃん、ゴーストちゃん、パパ達が来ましたよ〜。」

2人はギョッとした。

エルフの男の後ろから、カチャカチャ足音が聞こえ、チョコとゴーストが出て来た。シッポを振って元気そうだ。

「よしよーし。」

なでているとエルフの男はディスプレイを出した。
「ワックスパックで汚れにくくなるコーティングと軽い衝撃にも耐えられるボディ素材のグレードアップ、サービスのおやつがついて600クレジットです。つけますか?」

「お、お願いします。」クラウンはタジタジで答えた。

「はい。おやつあげてくださーい。ちゃんとオーガニックですよ〜。この子達、いつもオーガニックなんですねー。」

2人は犬達におやつをあげた。
バクバクかじりついている。

「ホント色んなやついるよな。エルフってだけで身構えちゃいけないな。」スノーはしみじみ言った。

「うん。どの種族も良い人、悪い人いるよね。」クラウンはうなずいた。

奥からエルフの男が戻ってきた。「明日パックの乾燥とモーションリハビリがあるので、午後にお迎えに来て下さい。」

犬達とエルフの男に見送られた。

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犬達のいないサイプレス号は静まり返っていた。
モニターにテロップが流れる。
ーmcsからの情報共有ファイルをダウンロードしましたー

「再生。」スノーは即答した。

ーアルバ山から新たに2個のモジュールを回収しました。その内の一つは未完成でした。ログを解析した結果、アスクレウス山基地、パボニス山基地に仕掛けられる予定でしたが阻止できました。モジュールのログは以前と同じです。「アルバ山のフレイアを守りし者よ。エレメントは火口から持ち出してはならぬ。我が身を焦がす業火から守り抜け。」ー

ー捕らえたエルフの女、アスティは口を割りません。他、3名は投獄されました。ギルドと共にこちらに向かっているエルフの女も同じく喋りませんが、彼女は材料の調達係だった様ですー

ー局長らはアスクレウス山基地の奪還に成功しました。連合軍の内戦は沈静化しつつありますー

ー避難民を乗せた宇宙船ベース「オリオン」へのドッキングが数日中に可能となりますー

ーmcsから特別報酬が贈られますー

ーブラストからメッセージですー
「オリオンのドックに行ける様になるらしいから、そこで待ち合わせしよう。ついでに補給物資支援のクエストも一緒にやろっ。よろしく!」

「じゃオリオンで。クエストもやるー。送信。」クラウンは嬉しそうに答えた。

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翌日、犬達をお迎えに行った。

犬達はお兄さんに頭を擦りつけていた。
「チョコちゃん、ゴーストちゃんまたね〜。デジタルステッカーをどうぞー。」

犬達のボディに、黒地に骨でPと書かれた丸いデザインステッカーが浮かび上がる。

「クラウン、これの消し方知ってっか?」

「え?いいじゃん。作戦インパクト失敗の戒めにつけておこう。お揃いだよ。はは。」

「シシッ!」

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オリオンで待ち合わせまでの間、2人と2匹はmcsでトレーニングに勤しんだ。

ーオリオンベースにドッキングしましたー
サイプレス号の扉が開いた。
ブラストが勢いよくクラウンにハグをした。
「イエー。クラウン久しぶり!チョコも元気そうじゃーん。よしよしよし。あ、ステッカー増えてる。」

ブラストがしゃがんでチョコをなでてると、扉からもう1人出できた。
白い羽根に白い肌、金色のロングヘアー、ピクシーエンジェルだった。

「スワンです。」

「本物だー!シシッ!クラウン紹介してくれ。」

「うん。スノーとゴーストです。」

「オレはブラスト、スワンはクリオネ花が欲しいってついて来ちゃった。」

ゴーストは頭をブラストにくっつけた。

「おーよしよし、ゴーストもかわいいなー。」

「ブラスト、早速で悪いけど、エルフの女をmcsに引き渡して来るわ。」

「ああ。こっちは物資下ろして運んでるから、また後で青いテントに合流しよう。」

クラウンとスノーはスワンを見てぽーっとなった。

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オリオンのドックに放送が流れる。
「避難民のみなさん、お疲れ様でした。ゆっくりお進み下さい。食糧は黄色いテント、薬が必要な方は青いテントでお受け取り下さい。」

青いテントでブラスト達は支援活動をしている。

「リュウマチやしびれ、不眠、不安症緩和の薬はありませんか?」
上品な婦人が困っている様子だ。

スワンが声をかけた。
「クリオネ花、可愛いですね。」
婦人は胸にクリオネ花のブローチをつけていた。

「ええ、ありがとう。私の家の近くに群生地があるのよ。」

「ほんと?!場所を教えて。」

「スワン、ちょっとどいて。薬はこれですか?」
ブラストが薬の箱をいくつか持ってきた。

「私の薬は市販薬じゃ効かないのよ。困ったわ。」

「私が探してきてあげます。」
ふわっと飛び立ち、10分もしないうちに、大量の薬を持ち帰ってきた。

ブラストがスワンを睨んだ。
スワンは悪気のない顔をして目をそらし、薬箱についたピンクの鱗粉を手でぱっぱとはらった。

「こんなに高価な薬をたくさん。ありがとう。私、クサンテ地域の月の高原でムーンシャインという名の療養所をしているの。いつでも遊びにきてね。療養所から峡谷に向かう途中にクリオネ花の群生地があるわ。私はこの花が大好きなの。」

「行ってみます。あの、お名前聞いてもいいですか?」

「フローレンスよ。あなたも教えてくださる?」

「スワンです。」

婦人はスワンと握手して笑顔で帰って行った。

「これが終わったらみんなで行かない?」
スワンはくるんっと振り返って誘ってきた。

クラウンとスノーはだらしない笑顔でうんうん、とうなずいた。

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mcsから借りたモンスターバギーに乗って月の高原にみなで向かった。

音楽を聴きながら気持ちよく風を感じて走っている。
スノーは隣に美女を乗せて走れるのが嬉しいらしく、歌まで歌っている。

高台に療養所、ムーンシャインが見えてきた。
「古いお城みたい!素敵〜!」スワンが身を乗り出した。

「渓谷はこのまま真っ直ぐ行けば、すぐ着くみたいだよ。」
クラウンはディスプレイを出すとスワンは小さく拍手して喜んだ。

スノーが車を止めると、可愛いらしい白い小さなクリオネ花が一面に咲いていた。

「うわー!綺麗ー!」スワンは車から飛び出し飛び回った。

クラウンとスノーも初めてみる光景に感動した。
「うおー。」「スゲー。」

「シシッ!天国みたいだな。」スノーも笑顔になり、犬達も走り回り、開放感と幻想的な光景にしばし和んだ。

スワンの指示で男達は花を摘むことになった。

数分でお花摘みに飽きたスノーが指差して言った。
「あっちに誰かいねーか?」

「ホントだ。」ブラストも立ち上がった。

クラウンの横で花を摘んでいたスワンの顔色が変わり、いきなり飛び立った。
「私のよ!!!」

スワンは空に舞い上がり羽根を羽ばたかせてピンクの鱗粉を花畑に降らせた。
ピンクの鱗粉はゆっくり落ちていく。

「スワン!やめろーー!」ブラストが叫んだが、スワンは羽ばたきをやめなかった。風が吹くと風向きが変わり、クラウン達めがけてピンクの鱗粉が飛んできた。
「ブラストーあははは。」
「うう、魅惑の鱗粉、吸いすぎると眠りに、、、。」
「シー!いい感じに酔ってきた〜。」
クラウン、ブラスト、スノー、犬達もよろけはじめ、幸せそうな顔で眠りに落ちた。

「大丈夫ー?あれ?スワンなの?」女性が近づいて来た。

「あ!フローレンスさん!あの、あの、、!」
スワンは気まずい状況に恥ずかしくなった。

「ムーンシャインにようこそ。スタッフにスワンの話をしていた所だったのよ。あら?あれ?不思議と痛みや痺れが今ないの。ああ、クリオネ花が導いてくれた奇跡よ。」

30分後、目を覚ますとクラウン達はフローレンスにお礼を言われた。

帰りの車でスワンに話を聞くと、フローレンスの先祖のお城を今は療養所として運営し、クリオネ花の群生地もムーンシャインの敷地内だそうだ。魅惑の鱗粉が、束の間の癒しになる様で、痛みや痺れが完全に治るわけじゃないが、時々ムーンシャインを訪問する代わりに、鱗粉の素になるクリオネ花を譲ってもらえるそうだ。ピクシーエンジェルにとってクリオネ花は量さえ間違えなければ、魅了し酔わせる商売道具。winwinの関係だと誇らしげに話した。

ブラストは不機嫌な声でスワンに聞いた。
「で?明日はギルドになるって?」

「そう。さっきスノーにギルドになる方法を聞いたの。」

「あっそ。」

「相討ちしなくなるんだからいいじゃん!」

「いいじゃん。あはは。」

「クラウンはまだ酔ってるな。」

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翌日。
アルカディアステーション、mcs車庫。

「うおお。シシシー!!」
車の返却に来ると車庫にいた局員達が沸いた。
ご機嫌なスワンが手を振る度に沸いた。

「スノー!ちょっといいか。」

ジュニアが駆け寄ってきた。
「あのアスティってやつ、まぶたが痛いって言うだけで、全然口を割らないんだ。今日は俺が話す番なんだが、何か策はないか?!」

「シシッ!声がデカいんだよ。オレがわかるわけないだろ?ケーキでも出してみたら?」

「そんなのダメに決まってるだろ?!」

「そんな事ないかもよ。軟膏あげるって言ってみたら?ふふ。」
スワンが笑いかけた。

「そういうものなのか?、、。」ジュニアはサッとて手を上げて立ち去った。

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アルカディアステーション、ギルド。
ギルドに到着すると、ブラストはポッドにスワンを押し込んだ。

3人はスワンが入ったポッドの前の3dプリンターが動きだすのを待っていた。
「どんなスーツになるんだろ?」クラウンは楽しみにしている。
後ろのポッドが開き、スワンが凹んだ顔で出てきた。
「私、なれないんだって。ふとんに努めろだって。」

「え?どーゆー事?もう一回やってみたら?」クラウンがうながした。

「シシッ!まじかよ?」

ブラストがカウンターのタッチパネルを操作した。
ースワンは不貪(ふとん)に努めなければいけません。今はギルドになれません。癒し手の素質があります。そこを伸ばしましょう。またのチャレンジをお待ちしていますー

「ふとん?ふとんって何?」クラウンが小声でスノーに聞いた。

「シシッ!欲に任せちゃダメって事だ。」

ブラストは静かにスワンに声をかけた。
「行こう。」

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サイプレス号船内。

「おい、ブラスト、オレの寝床がねんだけど。」スノーが呼びにきた。
ゲームを中断してクラウンとブラストはシャトルに戻った。

サイプレス号のライトがスワンを優しく照らす。テーブルに手を重ね、右の頬をつけて、涙を流したまま眠っている。

「シシッ!まるで堕天使だな。」

「本当にギルドになりたきゃまたチャレンジできるし。」

「シャトルの下行こう。」

「お前ら自分の部屋持ってるだろ?どっちか泊めろよ。」

「いいじゃん。下も広いんだよ。行こう、ブラスト。」

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3人が起きて来るとスワンは食事を用意していた。
「感謝の気持ちよ。」笑顔に戻っていた。

オシャレなオーガニックプレートを3人はペロリと平らげた。

「本当にカルーセルに送らなくていいの?」ブラストは心配そうにスワンにたずねた。

「うん。マーズが気に入っちゃった。しばらくいるつもり。」
スワンに見送られ、ハッチが閉まり、サイプレス号は銀河に飛び立った。

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3章に続く。

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