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トレモロ 2巻 1章 1話

サイプレス号内。
モニターにメッセージが流れた。

ーハニからのメッセージです。「ブラスト元気?急ぎじゃないけどモジュールの回収したから、解析をお願い!アースに来て。」ー

メッセージを見たクラウンは嬉しそうに、ブラストの顔の前で手をパタパタさせながらモニターを指した。

ブラストは目を細めて立ち上がり、クエストの詳細を聞く為、返信した。
「いいよ!クラウンも一緒にいるよ。どこステーション?送信。」

ハニから数分で返信がきた。
「クラウンも元気?チェリーブロッサム・アイランド・ステーションに来て。それと、おめでとうございます!ポラン王国で表彰されたログ見たよ!2人共すごーい!」

「元気です。見てくれた?僕もアースに行くよ。送信。」クラウンは照れながら送信した。

「一応、暴走防止のコード送っとく。」ブラストも送信した。

ハニからの返信はなかった。

家庭用ポッドzoneの取り付け工事が終わり、ダム・ステーションから銀河へ飛び立った。

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数日後。
サイプレス号はアースに向かって銀河を進む。

ブラストはスーツのカスタマイズをどうするか、まだ迷っていた。
クラウンとスノーは自分がレベル20になったら、どんなカスタマイズするかディスプレイでカタログを見ながら寝そべっていた。

遠くからうっすら音楽が聞こえて来た。寝そべってカタログを見ながらクラウンはブラストに話しかけた。
「なんか音楽なってない?」

「オレじゃないよ。クラウンなんか押してない?」

「僕かな?」クラウンはディスプレイをチェックし始めた。

「!」ガバッ!スノーが立ち上がり窓の外をみると宙族の船にランデブーされていた。スノーは慌てて操縦席に飛び乗り、クラウンとブラストは窓の外を見て固まった。

隕石でカモフラージュした船体に、奪ってきた兵器を切断してそのままくっつけ、魔改造された船がピッタリついてくる。

ブラストも慌てて席に着き、クラウンも席に座った。

ブラストはモニターを高速で操作し、マップやセキリュティのサポートに入った。

宙族戦艦は徐々に接近し、何か投げつけて来た。
サイプレス号の左下からガン!ガラガラガラ!
サイプレス号の右下からガン!ガラガラガラ!

「タラップになんかやってるな。シシッ!zoneがお目当てか?」
スノーは通報した。

「ええー!まだ一回も使ってないのにー!」ブラストは運転のバックアップをしながら悔しがった。

クラウンは頭の中で必死に考えた。
僕にできることは何か?フレイヤは火事になっちゃうし、ナイトメアは今は来ない、か。
少しして閃いた。
「チョコ!イカロスを使え!」

船が傾き、気圧が変わり少し体が浮いた。
サイプレス号船内にブワーーン、大きな重低音が響いた。

「ゴースト、スリープスタンプ持って来い!」ゴーストは部屋の角を使って三角飛びで上手にキャビネットに向かっていった。

3人は慌ててギルドスーツに着替えてワッペンをぶつけ、深呼吸した。
ヘルメット内のマーキングポイントの動きで、こちらに襲ってくる
事がわかった。


クラウンがタラップを延長して宙族戦艦と繋がった。
サイプレス号のセーフティーゲートを閉めた。
宙族戦艦のゲートが開くと、3人の武装した宙族がクラウンを見て向かって来た。

「フレイヤ!」炎の女神が現れると3人は慌てて後退り、さらに後ろから勢いよく襲って来た3人と入口でぶつかった。

フレイヤは右前の宙族にハイキック、そのまま回転して、逆足の踵で回し蹴り。前列の真ん中にいた宙族は一瞬で気絶した。
そのままフワッと後ろに下がり、勢いをつけた。後列で慌てふためいている宙族に両足で飛び蹴り、ドロップキックで飛びながら、後列の真ん中の宙族の顔面に火の玉を打ち込んだ。
フレイアはあっという間に4人の宙族をなぎ倒した。
左前の宙族がクラウンに向かって来ていた。
「ロージー!」バン!
宙族は吹き飛んだ。
その後ろの宙族は次々に上がる炎を見て固まり、フレイヤの膝蹴りを食らって気絶した。
クラウンは素早くスタンプを押し、マップを確認して、スノー達に合図した。

フレイヤはボワーッとタラップの先に進んで行った。タラップの先から3人のやられる声がした。「おう!」「はす!」「うーわ。」フレイヤは3人を気絶させた。
左右にタラップが伸びている。

右のゲートの入り口を閉めたフレイヤは、タイムオーバーになると全身が燃え上がるのを利用して、扉を火災モードにし封鎖した。

3人はフレイヤの健闘に奮い立ち、左のタラップから梯子を上がって宙族戦艦に乗り込んだ。

階段下で身を潜めていると、フレイヤが起こした火災で宙族戦艦内は慌てていた。

「さっき戦艦の窓からコウモリみたいな髪型した女が見えて怖かったー。クラウンも見たら絶対びっくりするから。」ブラストが教えてくれた。

クラウンは想像できないまま、通り過ぎる宙族の中にコウモリヘアーの女宙族を見つけてギョッとした。

オバケを見たような顔でクラウンが振り返ると、ブラストは静かにうなずいた。

「シシッ!」スノーが笑って言った。「正面の階段を上がってくぞ。gogogo。」

合図でゴーストが飛び出し、床を蹴って垂直に浮いて吸い込まれるように上のフロアに入った。チョコ、クラウン、ブラスト、スノーも同じ様に続いた。

フロアに全員で飛び出すと、6人の宙族が慌てて武器を構え始めた。

「フリーズ!」

全員の動きが止まり、中央フロアは静まり返った。
スリープスタンプを押しながら部屋を飛び回り、スノーはマップを見ながらマーキングポイントを数えて言った。

「多分2階の操縦席エリアはもう閉められたと思う。1階の残りを片付けてくるから一回サイプレスに戻れ。」

「え?スノー1人とか危なくない?やだよ。」クラウンは反対した。
「行くぞ!」スノーの困った顔を見てブラストはなだめながらクラウンを連れて戻った。
「後で教えてあげるから、行こ。」

クラウンはブラストに促されながらスノーの後ろ姿を心配そうに見た。
スノーは両腕を交差させ、グーで脇の下を2回叩き、気合を入れ走って行った。

セーフティーゲートをクラウンは開けたまま待った。
ブラストは操縦席でサイプレス号に発進準備の指示を出していた。
ー敵艦の攻撃を受ける可能性があります。迎撃モードー

サイプレス号は緊張感に包まれた。
操縦席からスノーの姿が見え、クラウンは祈った。ブラストも気持ちは同じく心配していた。宙族戦艦の窓をブラストは見守った。

スノーはシェルで岩肌になり走り出した。スタンプを押すというより、腕を伸ばし突撃している。コウモリヘアーの女もラリアットをくらって吹き飛ばされていた。
スノーはタラップを猛スピードで走って来た。
ゲート横でクラウンは頑張れ!犬達もジャンプして応援した。

スノーがゲートを駆け抜けると、クラウンはすぐドアにロックをかけて切り離した。
「ブラストそのまま発進だ!」スノーは走りながら言った。
「っしゃー!」ブラストはサイプレス号を発進させた。
スノーもバックアップに入ろうと着席すると、ポン!ポン!ポン!何かが発射した音がした。

ビリビリビリ。

眩しくて何も見えなくなった。
目が少し慣れて宙族戦艦をみると真っ暗になって停電していた。

「ブラスト何やったんだ?」スノーが外をのぞきながら言った。

「オレ?何もしてない。あれ?迎撃モード?あれそうなの?」ブラストは動揺して言った。

「いや、迎撃モードとは違う。」スノーは窓の外をじっと見た。

「あ!前から救助来た。サイプレス号ストップー!」クラウンがサイプレス号を止めた。

青と赤のランプが操縦席を照らした。

⭐️

2時間後。

「ハニから返事ないね。」クラウンはログを見ながらつぶやいた。

「女の子ってそういう時もあるから。」ブラストは気が抜けていた。

警察ロボと保安官と一緒にスノーが戻ってきて、モニターで誰かに連絡した。

モニターには、和室の茶の間に見たことあるおばあちゃんが正座で座っていた。
「ブッチー電話ー。」

「なんだよ。ばあちゃんが出てくれよ。」
モニターにブッチが映り込んだ。
「もう出てんじゃん。あれ?スノー達か?」

クラウンは軽く手を振った。

「お前ら、何して捕まったんだ?」半笑いでブッチの顔が近づいてくる。

「ちげーよ。お前の改造だよ。保安官と警察ロボの質問に正直に答えてくれ。」スノーは画面を保安官と警察ロボに向けた。

そこから1時間、ブッチの改造は違法改造にあたらずとなった。別件で、おばあちゃんが時々ブッチに耳打ちして、宙族戦艦をブッチの工場で引き取る事になってブッチは大喜びしていた。
「ビンテージの船だー!」

「じゃ、これ持ってくわ。」スノーはディスプレイを閉じた。

「zoneも無事だ〜!」ブラストも大喜びした。

操縦席に座ったクラウンが号令をかけた。
「サイプレス号、ジュピター・ステーションに発進。」

電気の消えた宙族戦艦を牽引してジュピター・ステーションに向かった。

⭐️

数日後、ブッチの店「ヘイスティ」のドックに宙族戦艦は運ばれた。

ブッチはビンテージの船に浮かれて、ブラストとパーツがどうとか何年式だとか、あれこれ話していた。
結局、サイプレス号の修理とzoneが船の外から見えないように拡張パーツで隠す作業など2日ほど「スペースパラダイスカフェ・ジュピター」にまた泊まる事になった。

⭐️

続く。

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