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トレモロ 1巻 4章 5話

口ごたえするとドレイクはおたまでウーカシュを殴った。

コン!

「いーから、見た事話せよ。」

「俺は何も関与してないんだ!アンタはあの日いなかったろー!」

「落ち着け!」ドレイクは椅子を蹴って、椅子は後ろに倒れた。

ゴン!3人は慌てて起こした。

「フー!見たって一瞬だよ。あの日はえらい目にあった。夜道を騎士団が訓練所に戻っていく姿は遠目に見えてた。道端で立ち話してるのかと思ったら、若い男が略奪兵に絡まれてた。そのまま騎士団と戦闘になって、もちろん圧勝した。肝を冷やした俺と絡まれてた男は騎士団に駆け寄ったんだ。若い男は東側の情報を持ってるジャーナリストって言ってた。訓練所で話そうってなって、俺には今日は帰れって言ったんだ。その後、訓練所前の分かれ道に音楽旅団が見えたから、そっちに合流して王国に戻った。それだけだ。」

ドレイクは黙って聞いた。

「ジャーナリスト?どんなヤツだ?」スノーがウーカシュに聞いた。

「え?ヒョロ長い若い男だった。」

「お前から見たら、誰でもヒョロ長いだろ。」ドレイクがしかめ面で言った。

「アンタたちと比べてもだ!」

「失礼を許して下さい。」ブラストが椅子に近づいて言った。

「特徴言えよ。」ドレイクがおたまを顔に押し付けた。

「皮のカバンを斜めにかけて、栗毛のショートヘア、ベルベットのジャケット、そういやブーツはいいの履いてたな。」

「一個聞いていいですか?えらい目ってなんですか?」クラウンが質問した。

「聞いてくれよ。その日はポンチュキをたくさん仕入れたのに、全部盗られちまったんだ。」

「ポン?え、何?」

「ポンチュキ知らないの?穴の開いてないドーナツで中にジャムが入ってて、、」

ドレイクは話を最後まで聞かずに部屋から出て行った。

「僕、絶対食べたい。」クラウンもつぶやきながら、ドレイクについて外に出た。

「おじさん!今日も巡回ですか?」クラウンはドレイクに聞いた。

「ああ。ホップの南に行く。来るか?」

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ドレイクの話によれば、名ばかりの自治区が南東にあるそうだ。最近、東側からの侵略が活発だと。そして同行してる理由をクラウンが聞くと「小僧だから相手が安心して探りやすくなる。」からだそうだ。

自治区の近くに馬とホバーバイクを隠した。
「教会行ってこい。」
「おじさんは行かないの?」
「俺に教会が似合うか?」
「確かに不審者だね。」
3人はクスクスしながら教会へ入っていった。

教会の中は模様やパターンに彩られた柱、壁、高い屋根まで凛とした空気が漂っていた。人はほとんどいなかった。教会を出てぐるっと街を回ったが、通りの人も少なく不気味な感じだった。

ドレイクが戻ってきた3人に気付くと、犬達が駆け寄った。

クラウンが街の様子を話していると、犬達は空を見上げながら走り出した。

クラウン達も一斉に追いかけた。木の間からクラゲ型のバイキングが飛んでいくのが見えた。

「南の町に向かってるな!」ドレイクが追っていく。

ディスプレイを出したクラウンはマップで犬達の進むのを見ながら、クバに追いつくのに必死だ。ホバーバイクも追いつくと、クバはびっくりして猛スピードで走った。

林の中を駆け、3機のバイキングに近づいていく。
左側の登り道から追いかけ、ドレイクは木に飛び移り、枝の上で剣を振り、一機叩き落とした。

枝の上のドレイクにバイキングがレーザーを撃った。
ドレイクは瞬時に枝にぶら下がり、逆上がりをしながらバイキングを下から蹴り上げ、木に激突させた。

木に隠れながら飛ぶバイキングにクラウンは追いついた。
「ロージー!」バン!
バイキングは爆発した。

「そのまま行け!」ドレイクはスノー達を先に行かせ、木から飛び降り、斜面を滑り降りて、クバに乗った。

ホバーバイクは林を駆け抜けて、南の町の丘の上に出た。
丘を下った先の畑で、騎士団がバイキングを連れた敵兵と戦っている。
槍が刺さって落ちたドローンや敵兵が畑に転がっていた。

ホバーバイクで草むらをドリフトしながら急勾配を下る。
スノーは前を走っていた犬達をバイクに拾いあげた。
ナイトメアで追いかけてきたクラウンにスノーは来い!のサインをした。「クラウン!バイクに飛び乗れ!インパクトだ!」
クラウンはナイトメアからホバーバイクに飛び乗り、ワッペンをぶつけ合った。

丘の下では町に入れまいと騎士団が敵兵を畑まで後退させた。

スノーはそこに向かってエンジンを全開にして突っ込んだ。

バイキング3機に追いついた時、スノーの合図で飛び上がり光った。5つの火の岩の塊は、バイキング3機を爆破し、敵兵長を吹っ飛ばし、巻き添えをくらった兵士達も一緒に吹っ飛んだ。

ホバーバイクが無人で突っ込んできたり、バイキングや兵長が吹き飛ばされたり、敵兵は何が起きたかわからずパニックになり、騎士団にあっという間に制圧された。

追いかけてきたドレイクに騎士団の若い男が手を挙げた。

「ドレイク、遅いぞ!」

ドレイクはクバを落ちつかせて、騎士団の若い男とハグをした。
3人はドレイクに呼ばれ、騎士団の若い男に挨拶した。
「ユリアンは西の隣国の騎士団で、元小僧だ。」嬉しそうなドレイクを初めて見た。

「ユリアンです。すごい戦いっぷりですね。これをどうぞ。」爽やかに笑って、叩き壊されたモジュールを手渡された。

「どこから来たか見たか?」ドレイクが真剣な顔でユリアンにたずねた。

「私たちは西からまっすぐ来たので、おそらく北から。」

「北なら沢があってぬかるんでるな。」ドレイクが歩き出し、ユリアン、クラウン達も敵兵の足跡を探した。

「ありました!」ユリアンが手を挙げた。

足跡を追うと、下水道の入り口に繋がった。

ドレイクは躊躇なく入ろうとした。
「ドレイク!俺は下水に入れない。」スノーが入り口の前で足を止めた。

パッと振り返ったドレイクは「気合いだ。」と言って入ろうとすると、ブラストが止めた。「待って。スノーは体質なんだって。」すかさずユリアンは「そういう根性論は嫌いです。」と言い、クラウンはうんうん!とうなずいた。

ドレイクは少し考えてから上半身の鎧を脱ぎ、話し出した。
「ユリアン、俺に背の近い死体にこれを着せて、王国の南門の下水道にそれを落とせ。」

「小僧、ユリアンが死体を落としたら火で燃やせ。俺は被害が出ないように下水門の扉を閉めてくる。もし俺が死んだって聞いても、そのまま何もしなくていい。無礼者にそう思わせておけ。それから旧市街広場の掲示板の前で見張ってろ。お前達が力を合わせれば、必ず道は開ける。今までやってきた事をすればいい。」

ドレイクはそういうと下水道の中に消えて行った。

ユリアンとクラウン達は北上してポラン王国を目指した。

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ポラン王国の騎士団と西の隣国の騎士団は協力して人払いをした。南門の下水道に死体を投げ入れた。

クラウンはロージーを放つとガスが爆発した。
焦げた死体はユリアン達が引き上げ、旧市街地を通り、街はずれの遺体安置所に運ばれた。

下水道の爆発から1時間後、城下町は騒ぎになった。
旧市街広場の掲示板には速報を待つ人だかりができていた。
3人と2匹は言われた通り、張り込んだ。

白い馬車が通りがかり、険しい顔で降りてきたヴェロニカが人をかき分け、速報を見るや泣き崩れた。周りの人たちも悲しい顔で見ていた。
ー速報、国境なき騎士団のドレイクが下水道で焼死体となって発見されましたー
ヴェロニカの後ろで、たった1人口元が笑った若い男が、掲示板に背を向け、人をかき分け歩き出した。街の人達は掲示板に詰めよる中、人だかりから出てきた若い男は細身のショートカット、ベルベットのジャケット、皮の斜めがけカバン、上等なブーツ、ジャーナリストの目撃情報と特徴が一致していた。

西に向って歩いて行くジャーナリストをクラウン達は追跡した。

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日が沈み夜になった。
西のはずれの街道沿いにある、集落跡地が見えた。
敵兵が武装して、焚き火の周りに数人立っている。
ジャーナリストは敵兵に手を上げて挨拶し、土手の上にある廃墟になった病院に入って行った。

3人は茂みからチョコのイカロスを使った。
正面からだと武装した敵兵にすぐみつかると判断し、土手の上の山道を迂回し、裏の高台から廃病院に侵入することにした。

息を潜め、見つからないようにかがみながら山道を進み、裏の高台から見下ろした。廃病院の屋上の広いバルコニーの部屋の明かりがついた。

しゃがんで3人はどういくか話し合っていると、後ろの茂みがザザッ!と動いた。

「小僧、そこまでだ。」ドレイクが茂みから出てきた。

「うわっ!ドレイクさん!」クラウンはビックリして声が大きくなった。

バルコニーに警戒したジャーナリストがシャツ一枚で慌てて出てきて、バルコニーから下を除いてキョロキョロしている。

小声でドレイクは話した。
「俺につけられてたの、わからなかったか?ユリアンの騎士団がもうすぐ正面からくる。小僧、敵兵が5人以下になるまで絶対に来るな。」ドレイクが言い終わると、火の矢を射ったユリアンの騎士団が正面から奇襲攻撃をかけた。

横を振り返るとドレイクの姿はなく、剣を抜いてバルコニーの部屋に入って行った。

3人は戦況を見守った。

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「物騒な物が2つもあるな。」
ドレイクは机の上のモジュールを見ながら剣をジャーナリストに向け詰め寄った。

ジャーナリストはシャツの前を握り、後退りしてベッドの脇から片手剣を取り出した。

ジャーナリストは無言で剣を構え、素早く突いてきた。
ドレイクは剣で払って一歩下がった。
「女か。」

「生きてたんだな!」低い声だったが女の声だった。

ジャーナリストは血相を変えて、また打ち込んだ。

ドレイクは剣で払いながら振り返し、斬った。
力弱くジャーナリストは床に倒れた。
ドレイクはジャーナリストにブランケットを投げてかぶせ、バルコニーに出た。

「ショックウェーブ!」下の階から聞こえ、振動した。
廃病院の2階の崩れた窓から敵兵が吹き飛んだ。

廃病院の外ではユリアンの前でスノーが岩肌の盾となり、フレイヤが最後の敵兵をハイキックで気絶させた。
騎士団の勝利の角笛が響いた。

ドレイクが見守る中、スノーはディスプレイでログを残した。ブラストは保護シートをモジュールに巻き、2つ回収した。クラウンは犬達とユリアンの騎士団と焚き火の前で待った。犬達は騎士団の人気者になっていた。

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南門から帰還すると石橋の松明のそばで、ヴェロニカが心配そうに待っていた。
ユリアンがクラウン達に「立ち止まらず行こう。」と合図した。騎士団のみなは軽くヴェロニカに挨拶して通り過ぎた。
気になってクラウンが振り返ると、ヴェロニカは泣きながらドレイクに抱きついていた。
「クラウン!行くぞ!」ユリアンがたしなめ、南門の監視所で騎士団と一緒に一息ついた。

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続く。

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