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トレモロ 1巻 4章 2話

ルイーズの店の螺旋階段を降りてきたクラウン。
冬季が近くなったと帰り支度をするルイージ。
ルイーズが淹れてくれたお茶を囲んで話した。

「おはようございます!毎日、毎日、駆け回ってお疲れ様です。」ルイージは仕事道具をテキパキ鞄に詰め込んでいく。

「お目当てはみつかりました?」ルイーズはカップにお茶を注いでクラウンに差し出した。お茶の良い香りが部屋に広がる。

「まだー。難しいのがキンカジュー。どこに居るんだよー。」クラウンは困り顔でカップを持ち、冷ましながらお茶を飲んだ。

「おや?僕の親戚にいますけど?」サングラスが朝日に反射した。

「やった!ルイージー、紹介してー。」

「今、雨季だから山の方に上がってますけど平気?」

「うんうん!」クラウンはご機嫌で階段を登り、小走りで2人を起こしに行った。

「僕も荷物運びに寄りたいから、バルサの家まで送りましょう。」
ルイージがそういうと、螺旋階段の上からクラウンが顔を出してお礼を言った。「ありがとう!」

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ルイージの飛行機に乗り込み、バルサの家まで飛んで行った。
今は湿地のルイージ牧場を過ぎ、湖になった草原。ギガスの通り道とクラウン達が名付けた山を越え、山々の中の住居区エリアにバルサの家はあった。
雨季のバカンス中に人気のキャンプエリアもある。
飛行機を降りて、バルサの家のチャイムを押したが留守だった。

「はっ!ハチミツ取りに行ったな。大好物なんです。」ルイージが思い出して手をパチンと合わせた。

「近いので、行ってみましょう。バルサも喜びます!」
ルイージはふりふり小走りで裏山に続く轍を上がって行った。

チョコを先頭について行った。みな山の景色にわくわくしていた。

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10分程山道を登るとブンブン羽音が聞こえてきた。
「うわっうわっ!」キンカジューのバルサが蜂の群れから逃げまどっている。

クラウンは構えた。「ロージー!」バン!
蜂の群れは逃げていき、ロージーが木に当たり、火の粉と一緒に蜂の巣も落ちてきた。

「あれ?ルイージか?助かったよう!」
バルサは落ちた蜂の巣を拾い上げた。
「あち!あち!こりゃいいや!あっちにも蜂の巣あるから、今のやってくれんかのー。」バルサがクラウンをじっと見つめた。

クランクはロージーのジェスチャーをすると、バルサは高速でうなずいた。
後で記念撮影する約束をして、バルサを先頭に山に進んでいく。

スノーが音に気づいた。「ブンブン聞こえるぞ!」

バルサはキョロキョロ探し「あった!あの辺りに頼むよう!」指差した。

「ロージー!」バン!
メラメラ、ぼとっ。見事に蜂の巣が落ちた。

「いやー、はかどる〜。もうちょっとお願い。こっち。」バルサは上機嫌で案内した。

スノーがみつけ、ルイージとバルサであつあつの蜂の巣を拾った。
襲ってくる蜂の群れにクラウン、ブラスト、ゴーストは上手く対処しながら蜂の巣をたくさん獲った。

「この上に展望デッキがあるから、休もう!すごく助かったよう。」
バルサが蜂の巣を割ってみんなに配った。とれたてのハチミツをかじり、みな口の中が甘くとろけた。

「ハチミツでべちょべちょになっちゃったー。」と嬉しそうにバルサが立ち上がった。

近くで座って笑っていたクラウンの耳に羽がバサっと当たった。感触に、ふと見上げると、バルサがグリフィンにさらわれて飛んでいった。

「うわっ!うわー!」
山の斜面に沿って旋回しながら上に飛んで連れ去られていく。

「チョコ追え!」チョコがプリズムを出して追いかけた。

展望デッキから飛び降り、真っ直ぐ山の頂上目指して駆け上がった。

崖の近くの平たくなった草むらにグリフィンの巣があった。
バサッ!バサッ!羽ばたきの音が聞こえた。
「やだー!」バルサは泣きながら巣の上に落とされた。「ゲフッ!」放り投げられ、腹を打って苦しそうだ。

みなが駆け寄ると、バルサの前にグリフィンが立ちはだかった。クランクはロージーを撃った。勢いよく燃えたが、翼を羽ばたかせて炎は消えていく。その羽ばたきは勢いを増し、風で吹き飛ばされそうになった。

「ショックウェーブ!」ブラストがグリフィンの旋風をかき消した。

グリフィンは後足で地面をかき、姿勢を低く構えた。
スノーも構えると、グリフィンは飛びかかってきた。
スノーは地面を転がり、攻撃をかわした。
唸り声を上げゴーストがグリフィンの首元に横から噛みついた。後ろからクラウンとブラスト、チョコでギルドの結束ロープを回そうとしたが、暴れながら翼を叩きつけられ、翼に殴り飛ばされた。

グリフィンは唸り声を上げた。

スノーに襲いかかると、スノーはシェルで岩の肌になった。クチバシで腕を噛まれたが、腕を勢いよく振り、抜き取った。そのままの勢いで左右に振り、ドゴン!ドゴン!と重たいパンチを当てた。

よろけたグリフィンにクラウンが右からジャンプして首筋をキックした。クラウンに噛みつこうとグリフィンが顔を横に向けると、左からブラストがジャンプして首元を蹴り、グリフィンの動きが止まった瞬間、スノーがグリフィンの首元を掴み、立髪にぶら下がったままの結束ロープを手繰り寄せ、抱え上げて後ろに投げ飛ばした。バックドロップをきめた。

ドシーーン!!!
砂埃を上げ、崖から滑り落ちそうになったグリフィンは羽ばたき、旋風でみなを吹き飛ばした。

上空に飛んだグリフィンは、巣にいるバルサに飛びかかった。
ゴーストが巣に向かって走りだした。
グリフィンはバルサを渡すまいと咥えて崖に放り投げた。
「フリーズ!」
スノーが投げ出されたバルサを追いかけ崖から飛び出し、スローで落ちるバルサを抱え、崖を滑り降りていった。ズザザザー!

「チョコ来い!」
スローになったグリフィンめがけ、クラウンとブラスト、チョコが走り、ジャンプした。
「ロージー!」
「ショックウェーブ!」
上に向けて放った。
ドカーン!
大爆発が起き、巣は吹き飛び、グリフィンは燃えながら転がり落ちて倒れた。

クラウンとブラストが崖の下を見ると、スノーは元の姿にもどり、バルサと手を振っていた。

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山の保安警備員を呼ぶと、すぐ駆けつけてくれた。
グリフィンの亡骸に手を合わせ、みなで葬った。

バルサの庭で焚き火を囲んで話を聞いた。
山の専門家の話では、雨季のバカンスで山に訪問者が増え、美味しい物の味を覚えたグリフィンは行動範囲が広がったのだと。
バルサは美味しい物という言葉に思い出してドギマギした。

グリフィンが山々を離れ、住居区に巣を作るのは珍しく、山の保安警備員達は数年ぶりに見たと驚いていた。会えば連れ去られ、切り刻まれるグリフィンから生きて帰れたのは幸運だったと教えてくれた。グリフィンの巣の駆除の特別報酬を送ってくれた。

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手当をしてもらったバルサのお尻と脇腹に大きなバッテンの傷テープが貼られた。
「これはルイーズに自慢しよお。ハチミツを持って帰って、冬季はルイーズの所にお世話になるよう。」

「今はベッドが満員なんだ。」ルイージがバルサに言った。
「あ、そーなの。じゃ近くに、」と、バルサが言いかけると、クラウンが話をさえぎった。「あの、僕たち雨季の間だけって話し合ってたから、ベッド空きますよ。」

「そーだった。」ルイージは残念そうに言った。
「またカピラリイに来たら、必ず寄って。冬季なら僕は牧場にいます。絶対ですよ。」

「じゃ門出を祝して、バルサ特製のハチミツりんごシナモンパイにバニラアイスを添えて。」バルサはすらすら言った。

「え?なんだって?」スノーが聞き返した。

「スペシャルハニーアップルシナモンバニラアイスパイ!」

バルサ特製のスイーツは驚くほど美味しかった。
焚き火を囲み、パチパチ、炎をぼーっと眺めて過ごした。

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数日後、ラグーナ・ステーションに見送りに来てくれたルイージ、ルイーズ、バルサとハンカチ片手に別れを惜しんだ。
wolのみなも元気に手を振ってくれた。
クラウン達は寂しさと感謝の気持ちでいっぱいになった。
雨季が終わりを迎えた。


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続く。

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