昔の時代劇では、悪者に山道を追われて崖から落ちる、なんて場面がよくありました。ただし、主人公や主要な登場人物が崖から転がり落ちても、死ぬことはありません。ところが、そうでない人物は、崖から落ちて命を落とすなんてことは珍しくありません。
現代のように交通網の発達していなかった時代には、旅はほんとうに危険と隣り合わせでしたし、崖から落ちて命を落とした人も少なくなかったはずです。当然、誰にも発見されないまま、崖下に屍を晒していたようなケースもあったはずだと考えたら、そこには、つまり、崖下には幽霊がたくさんいてもおかしくないのではないかと思います。
だから、幽霊が溜まっている崖下に落ちれば、たくさんの幽霊に取り憑かれる……
〈幽霊だまり〉は、古い時代劇のそんなシーンがモチーフとなった話です。