虐げられてばかりだった日々が、運命的な出会いを得て幸せになる物語にときめきます。貧しかった暮らしが、思いも寄らなかったできごとで満ち足りたものになる物語にも憧れます。それなりに満たされていても、もっと嬉しくて楽しい日々があるのかもしれないという気持ちを、そうした物語が満たしてくれます。
ただ、そういった“玉の輿”に乗ったとしても、状況にただ流されていくだけではちょっと足りないと思うこともあります。幸運に救われても、それで自分が失われてしまっては面白くありません。もっと自分から攻めていき、幸せをつかみ取るような人生を送れたら、どれほど気持ちも満たされるでしょう。
今回ピックアップした4作品は、運命的な出会いや奇跡的な救済があっても、自分をしっかりと持って主張し続け、“最幸”の結婚へといたる女性たちの物語です。弱い立場にあっても、激動に巻き込まれても思いを貫き通すことの大切さを感じ取ってください。
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一国の要職にある家にお嫁に入ったはずなのに、まだ許嫁だからと言われて他の侍女と同じような仕事を命じられたヒロインの香流が、そんなこともあろうかと準備してきた掃除道具の中の“ある物”に笑ってしまいました。それが何かは読んでのお楽しみ。絵で見たいと思わされる光景が繰り広げられます。
嫁に対する義母のよくある仕打ちを苦にもせず、乗り越えていく痛快さを感じさせてくれる場面ですが、物語自体はそんな一家庭の中での覇権争いに留まりません。《飢神》なる化け物を狩る武闘集団の里に生まれた香流は、美弥という国で《飢神》退治を担う家の当主・銀正に嫁ぎますが、その裏には美弥の事情を探るという任務もありました。
だから、虐められても耐えて美弥に居続けますが、銀正のことを知っていくうちに、彼が抱えている過去への後悔を知り、本当のパートナーになりたいと思うようになります。
美弥の国を揺るがす事件にも巻き込まれながら、香流が自分でつかみとっていく幸せへの道を楽しんでください。
(「運命を自ら最高にする結婚小説」4選/文=タニグチリウイチ)
プロポーズをされて、飲みかけのワインを吹き出しそうになったという冒頭の描写で、ヒロインのマーレがただの亡国の姫君ではないと気づきました。
滅亡したと言われるナタリア王国の姫君だったらしいマーレは、まだ幼い時に従者のラディーレに連れられ国を逃げ出し、イージェス王国に密入国して身分がバレないように暮らしていました。そこに騎士団を率いて現れたのがアルベルトという公爵家の当主。マーレを手がかりにナタリア王国の秘密を探るため、彼女に結婚を申し込みます。
驚いてワインを吹き出しそうになったところに、どん底の暮らしから救い出してくれると大喜びするのではなく、過去はどうあれ今は身分が違いすぎると自分を卑下して逃げだそうとするのでもないマーレという女性の、自分をしっかり持って状況に流されずに生きている強さが見えました。
立場は違いすぎるのに、憐憫ではなくギブ・アンド・テイクな関係で信頼感を育み、親愛へと発展させていくマーレとアルベルトの関係がとても気持ちいいのです。そんな二人がクライマックスの大冒険をワクワクしながら楽しんで、どんな結末を迎えるかを確かめてみてください。
(「運命を自ら最高にする結婚小説」4選/文=タニグチリウイチ)
舞台は日本で、時代はあの卑弥呼がいなくなってから少し経ったころ。アカルというひとりの少女が乱立する国々を巡り、不思議な力を持った巫女たちや、カッコいい男たちに出会い化け物との戦いにも挑むといった壮大な和風ファンタジーです。
アカルは5歳のときに生贄として川に流されたところを救われ、神の声が聞こえる巫女として育てられました。15歳になったアカルは隣国の千代姫を苦しめている病気を治しに出かけます。そこから始まる冒険は、山賊にさらわれた少女を救いに行ったり、アカルに怨みを抱く巫女と対決したりとなかなかにハード。それでも折れず進み続けるアカルの強さに惹かれずにはいられません。
そんなアカルにも、自分を川から救ってくれた幼馴染みの少年への思いがずっとありました。イケメン王子が現れても揺るがない恋心が、紆余曲折を経て望んでいた結婚へとたどりつくまでの物語でもあるのです。1800年前にこの国であったかもしれない激動と純愛に触れてみませんか?
(「運命を自ら最高にする結婚小説」4選/文=タニグチリウイチ)