本当にどうでもいいことなのですが! この原稿、新しいノートパソコンで書いておりますーっ!
最低限のセッティングはあっさり終わったのですが、前のノートパソコンと同じくらい使えるようにするにはまだまだ作業が必要で……それだけ前の相棒を使い込んできたんだなぁと実感したり。職業柄あまり季節感や月日の流れを感じにくいわたくしですが、出会いと別れの春を噛みしめています。
と、まあ、そんな感傷は置いておきまして。ぜびともみなさまに出逢っていただきたい「金のたまご」4作をご紹介させていただきますー。

ピックアップ

あのVTuberはクラスのどこかにいる!?

  • ★★★ Excellent!!!

玉田灰は仙台の高校に通う1年生男子。日課の動画鑑賞をするべく物色している中で、“仙台の妖精”を名乗るVTuber、笹窯ボコのライブ配信に目を引かれる。そうして視聴してみれば、彼女はなんと、灰が教室で叫んだセリフについて話していて……もしやボコは同級生!? 灰はボコの中身を探すべく行動を開始した!

「となりのあの娘が実は有名人!?」は根強い人気を誇るテーマですが、そのヒロインをローカルVTuberに設定した目の付け所ですよ! 物語の舞台規模を絞り込むことで「日常のとなりの非日常」感を醸し出し、さらには彼女の話題で灰くんに強い動機付けを与えることを為していて、ネタ的にも構成的にもすばらしい!

そして灰くんもいいんですよねぇ。ぐいぐいストーリーを引っぱって真実というゴールへ突っ込んでいく超バイタリティ、まさに主人公オブ主人公の風格があるのです。

おもしろくて気持ちよくてラストシーンがかなり深刻に気になるドタバタコメディ、推しです!


(新作紹介 カクヨム金のたまご/文=髙橋 剛)

その夜、子供たちは真実を思い知る――!

  • ★★★ Excellent!!!

この国は何年も前から戦争をしていて、だから町には「ミサイル注意報」が発令されることがある。そうなると子供たちは安全のため、小学校からの下校が禁じられるのだ。そして学校に残っていた数人が強制的にお泊まり会をすることとなった夜――学校に幽霊が現れた。

導入だけ見れば、小学生が思いがけない非日常へ胸躍らせる一夜の物語です。しかし、そこに幽霊というものが差し込まれることで、戦争という背景が前面へ迫り出してくるのですよ。

そこで見ていただきたいのは、あるとき突然どんでんが返されるのではなく、徐々に引き絞られていく緊迫感の重さです! そして、それにつれて露わとなっていく幽霊と子供たち、そして町の真実の苦さです! 引かれたストーリーラインが冒頭からクライマックスへ向け、盛り下がることなく高まっていく有り様、本当にドラマチックなのです。

絶妙にピリ辛な読後感が味わえる一作、ぜひ出逢っていただきたくお勧めさせていただきます。


(新作紹介 カクヨム金のたまご/文=髙橋 剛)

郷里復興を目指す男たちが魅せる熱いドラマ!

  • ★★★ Excellent!!!

昭和25年1月。4年半前、原子力爆弾が投下された悲劇の地である広島にプロ野球チームが誕生した。その名は広島カープ。しかしながら成績はなかなかに振るわず、戦後という世情の中でその存続は幾度となく脅かされるが……戦争に打ちのめされた広島の希望の光を消さぬため、奮迅する人々がいた!

ひと言で表すなら、熱いです。歴史小説に欠かせない要素はもちろん時代性で、この物語は十二分にその熱さを味わわせてくれるのですが。私が注目していただきたいのは、なによりも登場人物の熱さなのです!

焦土の底からの復興を目指し、そのシンボルである広島カープを守ろうと駆け回ってあがいてもがくキャラクターたち。時代が動くと言いますが、彼らの有り様が示すのはそんなものじゃありません。「時代を動かす」という凄絶なまでの覚悟と熱情を、これでもかというくらい魅せてくれるのです。

実話ベースだからこそのリアリティと、それを鮮やかに描き出すキャラクター。ふたつが織りなす人間ドラマ、迷わずご一読くださいまし!


(新作紹介 カクヨム金のたまご/文=髙橋 剛)

団塊世代のパソコン嫌いがパソコン講師になるお話

  • ★★★ Excellent!!!

不景気極まり、日本がリストラの大嵐に飲まれた1999年。開発事業部課長であった早川孝史は、会社から新事業責任者の座を打診されながらもそれを断り、希望退職する。50歳である今ならまだ新しい人生に挑戦できるかもしれない! 果たして彼は特技を身につけるべく、これまで苦手にしてきたパソコンを学ぶことを決めるのだった。

――と、思い切って踏み出した孝史さんですが、まるで順風満帆ではありません。苦手だからこそ触らずに来たパソコンを相手取って、悪戦苦闘の毎日です。詳細は伏せますが、最初のほうは本当にすごいというか、酷いんですよねぇ。

でも、繰り返した失敗全部を糧にして、ご自身の再起の道を拓いていくのです。孝史さんという完全無欠ならぬ主人公のじりじりとした歩みが丹念に記されていればこそ、“敵”との関係性が変わりゆく過程は感慨深く、その先に晴れやかなカタルシスを感じずにいられないのです。

これからなにかに挑戦しようと思われている方にぜひ出逢っていただきたい自伝小説です。


(新作紹介 カクヨム金のたまご/文=髙橋 剛)