本当にどうでもいいことなのですが! この原稿、新しいノートパソコンで書いておりますーっ!
最低限のセッティングはあっさり終わったのですが、前のノートパソコンと同じくらい使えるようにするにはまだまだ作業が必要で……それだけ前の相棒を使い込んできたんだなぁと実感したり。職業柄あまり季節感や月日の流れを感じにくいわたくしですが、出会いと別れの春を噛みしめています。
と、まあ、そんな感傷は置いておきまして。ぜびともみなさまに出逢っていただきたい「金のたまご」4作をご紹介させていただきますー。
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玉田灰は仙台の高校に通う1年生男子。日課の動画鑑賞をするべく物色している中で、“仙台の妖精”を名乗るVTuber、笹窯ボコのライブ配信に目を引かれる。そうして視聴してみれば、彼女はなんと、灰が教室で叫んだセリフについて話していて……もしやボコは同級生!? 灰はボコの中身を探すべく行動を開始した!
「となりのあの娘が実は有名人!?」は根強い人気を誇るテーマですが、そのヒロインをローカルVTuberに設定した目の付け所ですよ! 物語の舞台規模を絞り込むことで「日常のとなりの非日常」感を醸し出し、さらには彼女の話題で灰くんに強い動機付けを与えることを為していて、ネタ的にも構成的にもすばらしい!
そして灰くんもいいんですよねぇ。ぐいぐいストーリーを引っぱって真実というゴールへ突っ込んでいく超バイタリティ、まさに主人公オブ主人公の風格があるのです。
おもしろくて気持ちよくてラストシーンがかなり深刻に気になるドタバタコメディ、推しです!
(新作紹介 カクヨム金のたまご/文=髙橋 剛)
この国は何年も前から戦争をしていて、だから町には「ミサイル注意報」が発令されることがある。そうなると子供たちは安全のため、小学校からの下校が禁じられるのだ。そして学校に残っていた数人が強制的にお泊まり会をすることとなった夜――学校に幽霊が現れた。
導入だけ見れば、小学生が思いがけない非日常へ胸躍らせる一夜の物語です。しかし、そこに幽霊というものが差し込まれることで、戦争という背景が前面へ迫り出してくるのですよ。
そこで見ていただきたいのは、あるとき突然どんでんが返されるのではなく、徐々に引き絞られていく緊迫感の重さです! そして、それにつれて露わとなっていく幽霊と子供たち、そして町の真実の苦さです! 引かれたストーリーラインが冒頭からクライマックスへ向け、盛り下がることなく高まっていく有り様、本当にドラマチックなのです。
絶妙にピリ辛な読後感が味わえる一作、ぜひ出逢っていただきたくお勧めさせていただきます。
(新作紹介 カクヨム金のたまご/文=髙橋 剛)