その夜、子供たちは真実を思い知る――!

この国は何年も前から戦争をしていて、だから町には「ミサイル注意報」が発令されることがある。そうなると子供たちは安全のため、小学校からの下校が禁じられるのだ。そして学校に残っていた数人が強制的にお泊まり会をすることとなった夜――学校に幽霊が現れた。

導入だけ見れば、小学生が思いがけない非日常へ胸躍らせる一夜の物語です。しかし、そこに幽霊というものが差し込まれることで、戦争という背景が前面へ迫り出してくるのですよ。

そこで見ていただきたいのは、あるとき突然どんでんが返されるのではなく、徐々に引き絞られていく緊迫感の重さです! そして、それにつれて露わとなっていく幽霊と子供たち、そして町の真実の苦さです! 引かれたストーリーラインが冒頭からクライマックスへ向け、盛り下がることなく高まっていく有り様、本当にドラマチックなのです。

絶妙にピリ辛な読後感が味わえる一作、ぜひ出逢っていただきたくお勧めさせていただきます。


(新作紹介 カクヨム金のたまご/文=髙橋 剛)