一応今年一回目ということで、もう1月も後半ですがあけましておめでとうございます。本年もよろしくお願いいたします。そして最近気づいたのですが部屋の中が異常に寒い! エアコンの空気は部屋の片側に偏っているし、足元に電気ストーブを置いたら腿の部分が焦げているし、もう春まで布団から出ない! ずっと布団の中で暮らす! みたいな感じになっております。というわけで今回はタブレットを使ってお布団の中で読ませていただいた新作を紹介いたします。場所や状況を気にせずに読めるのはWEB小説の長所だと今回改めて実感しましたので、皆様も是非是非気軽に読んでいってくださいませ。

ピックアップ

おかしい……本当はもう何度も告白されているはずなのに……

  • ★★★ Excellent!!!

数秒間先の未来を予知できる女子高生、別守懐。ある日彼女はほとんど接点のなかったクラスメートの逢木直流に大胆に告白される未来を予知する! なのに逢木は告白をしてこない! その後何度も逢木が告白してくる未来を見るのだがいつまで経っても逢木は告白をして来ないし、予知能力も逢木関連以外ではしっかり働いている。かくして何度も告白されて(実際にはされてない)ちょっと自意識過剰モードとなった懐はこの予知の真相と逢木の本当の想いを探るべく自分から逢木に接近するのであった。

冒頭からシチュエーションが特殊すぎて一気に引き込まれるし、その後も懐の女子高生らしい軽妙な語り口もあってすいすい読み進んでしまう。特に残念なキラキラネーム持ちの親友との会話がとても楽しい。不発に終わった予知の謎もラストで思わぬ角度から真相が明かされとてもエンタメ性の高い内容になっている。予知能力だけに頼った話作りではなく、部活のちょっとウザい先輩との絡みを通じて人を好きになることの理由や意味など等身大の恋愛論が語られたりもしていて、青春恋愛小説としてもクオリティが高い一作だ。


(新作紹介 カクヨム金のたまご/文=柿崎 憲)

弱肉強食はサバイバルの基本、たとえ相手がゾンビでも!

  • ★★★ Excellent!!!

罪人として島流しにされている最中に、自分が前世で料理人志望だったことを思い出した暗殺者イドリス。漂着の末たどり着いたのはゾンビがうろつく地獄の孤島。ただでさえ食糧の乏しいこの状況でさらにゾンビ……この状況をどう生き残ればいいのか……食っちまえばいいじゃん、ゾンビを……! かくして前世の料理人スキルと今世の暗殺者スキルを組み合わせゾンビを殺しては調理する最悪のサバイバル生活が幕を開ける!

というわけで本作の読みどころは次々出てくるゾンビ料理の数々。しっかり焼いたり、レアのステーキにしたり、刺身にしたりとどんどん過激になってくる調理方法も笑えるが、細かい味の違いから島に生息するゾンビの真相をたどろうとする過程も面白い。

また、ときどきフラッシュバックする前世での出来事が実は現在と関係しており、前半のギャグタッチな内容が嘘のように、怒涛のごとく伏線回収をしていく物語後半は読みごたえたっぷり。文庫本一冊ほどの長すぎず短すぎずの分量で綺麗に完結しており、ちょっとまとまったものが読みたいという人には是非お勧めだ。


(新作紹介 カクヨム金のたまご/文=柿崎 憲)