ゲームのガチャは何かと悪く思われがちです。確かに射幸心を煽ってユーザーから課金させる仕組みなのは否定できません。無関心な一般人からすればギャンブルで、実体の残らない無駄遣いでしょう。しかしそれはお金を払って旅行に行ったり、映画を見たりする一時の遊楽と何が違うのでしょうか? ガチャに課金する人は旅行や映画鑑賞をするのと同じようにガチャでしか得られない体験を買っています。そして読書もガチャと同じ。その本が当たりかハズレかは読んでみるまではわからない。だからこそ面白い。読書が人生を変えることもあるなら、ガチャで人生が変わるかもしれない。今回はそんな物語を選んでみました。どうぞご賞味あれ。

ピックアップ

犯した罪を善行で償え! 善行を重ねてガチャ無双!

  • ★★★ Excellent!!!

 前世で不注意から交通事故を起こし、贖罪のために異世界に転生させられた主人公のシンクが、社会や人々のために生きることで前世よりも充実した日々を生きる姿が眩しいです。

 シンクが転生したのは努力次第で誰にでも備わるスキルの力で人々がモンスターの脅威と戦う剣と魔法の世界。ただしシンクだけは罰として善行で貯めたカルマ値を消費したガチャによるランダムでしかスキルが獲得できない呪いがついていた!

 逆を言えば、善行を積んでガチャを回せば際限なく強くなれる。そのために幼い頃から畑仕事を手伝ったり、家畜を世話したり、小さな子どもの面倒をみたりするうちに善行がシンクの習慣になる。当然、周囲からの評価や印象も上がり、それがシンクのやる気や生き甲斐に繋がっていく好循環が読んでいて心地よいです。

 前世の罪を悔やみながらも前向きに贖罪の道を受けいれ、病気の母を癒す霊薬アムリタを探すため、故郷や仲間を助けるため、自分の力を積極的に世の中に活かし、感謝で満たされる生き方に憧れます。

 二度と後悔しないように他人に謙虚に、自分に誠実に生きること。それがより良い人生を生きる秘訣なのかもしれない。


(「ガチャこそ人生」4選/文=愛咲優詩)

ハズレガチャ買い取ります! 神スキル携帯ガチャ機で商売繁盛

  • ★★★ Excellent!!!

 女神の手違いで転生者に与えられるはずの転生特典が異世界の少年カナタに宿ってしまった! その特典「携帯ガチャ機」と「幸運値の増大」でガチャ屋を開いて冒険者兼商人として成り上がっていくカナタの逆転人生に興味をそそられます。

 魔王の死に際に放った呪いを受けた父アラタの影響で、生まれつき病弱と不運を強いられたカナタは貴族でありながらも素直で心優しい11歳の少年。時空魔法で遥か彼方の土地に飛ばされたことで父親から離れて本来のステータスを取り戻し、再起の道が拓けていきます。

 アイテムもスキルもお金もガチャ次第という射幸心がかきたてられる世界観作りが巧みで、モンスターからドロップする低品質のハズレオーブを冒険者から安値で買取り、幸運値でレアリティを上げて出たガチャアイテムを店で売って儲けるという商売のシステムもよく練られています。

 とくに100連ガチャ、500連ガチャと、貯め込んだオーブを盛大に使ってガチャを引いて、激レアを当てるワクワク感、達成感がたまりません。

 初めてのことで失敗もしながらもガチャ屋の商売も軌道に乗り、冒険者としてもスキルも揃い、これからの成長が楽しみな作品です。


(「ガチャこそ人生」4選/文=愛咲優詩)

そのガチャは歴史を変える! 毛利元就を補佐して戦国時代で成り上がり

  • ★★★ Excellent!!!

 一風変わった大河ドラマがみたいという神様の気まぐれで、戦国武将・毛利元就の元へ転生させられた主人公・畝方三四郎がガチャを使って、主人である元就をサポートして天下躍進を導くガチャ戦国時代劇です。

 舞台は戦国時代を再現したパラレルワールド。主人公の三四郎は神様から与えられたガチャの力でアイテムやスキルを得て、流浪者から武士へと成り上がります。

 ガチャから得たサツマイモで食料自給率を上げ、レアな名刀や珍品を権力者に献上してご機嫌をとり、歴史上の偉人をいち早くヘッドハントし、戦場では未来を予測して活躍したりと、ガチャと現代知識の兼ね合わせが独特で、隙のないストーリー構成が秀逸です。

 毛利家の諜報機関を取りまとめる御伽衆として、本人はあくまでも裏方に徹して、密かに戦国乱世をコントロールして毛利元就を天下人へ押し上げていく影の黒幕のような役どころにニヤリとさせられます。

 時代背景や歴史考証も厚く、リアリティのある描写も完成度が高く、時代小説としても十分すぎるほどに読み応えを感じる逸品です。


(「ガチャこそ人生」4選/文=愛咲優詩)