「カクヨム甲子園2020”推し活”」推進キャンペーンでは、8/17~8/23の期間カクヨム甲子園2020の応募作より皆さまの「推し作品」を募集しました。
 今回の特集は、そんなキャンペーン期間中にカクヨム読者の皆さまが選んだ「推し作品」の秀逸なレビューをご紹介します!

 カクヨム甲子園に読者選考はありませんが、作者にとって「作品を読んで応援してもらえる」というのは何とも嬉しい経験となるはず!

 カクヨム甲子園の開催は9/13(日)まで。もし気になる作品があったら、読んで「応援」もよろしくお願いします!

ピックアップ

文に溺れて

  • ★★★ Excellent!!!

小説というのは作者の頭で考えているものを、読者の頭にも想像させることができるから、ほぼテレパシーといっても過言ではありません。そして読者は小説を読んで不幸になったり、将又幸せな気分を味わったりできるものです。
さて本題に入りますが、この小説は読むと「溺れる」ことができます。しかし何に溺れるのかと聞かれても答えられません。主人公の女性が入っている風呂に溺れ、小学校のプールに溺れ、昔の自分に溺れ、人間関係に溺れ、初恋に溺れ……と要するに様々なものに溺れていく感覚が味わえるのです。
そしてなにより私は作者の文章に溺れました。この小説を開いたが最後。あとは津波のように作者の言葉がやってきて、一瞬で足下を掬われてしまう。出てくる言い回し、ワードセンスも全てが面白くて、読んでいて次の一文を期待してしまう自分がいました。所々にある比喩表現も、中島敦さんの『山月記』に出てきた有名な一文も、妙にこの小説に噛み合っていて、深い物語になっていたように感じます。
素敵な小説に溺れることができて幸せでした。ありがとうございました。

あなたはこの世界の神様

  • ★★★ Excellent!!!

とても面白い作品でした!

自傷行為を「生きる明日を得るためのもがき」と読み取れました。確かに、自傷行為は傍から見れば死にに行くような行為ですが、なぜそんなことをするのかと考えてみると、色々な精神的な過程を含めて「生きようと思う明日を作る」ためだからだとこの作品から解釈出来ました。この解釈を知れることは、この作品の面白い要素だと思います!

また、もうひとつこの作品から知ることができた事として、「生きろと言われた通りに生きなくても良い」ことがあります。
どんな生き方をしても構わない。

─だって「あなたはこの世界の神様になれる」から─

あと地球が丸い理由と最後の(先生が私を選んだ理由)のオチがすごく面白かったです!

長文失礼しました。

曽祖父の日記で語られる「あること」への、想いとは……。

  • ★★★ Excellent!!!

語られるのは、曽祖父の日記。
8月15日と聞いて、何人の人が「終戦の日」と言えるでしょうか。
第二次世界大戦の終結、歴史をなぞることくらいしかできない私たちはこの時代に生まれて本当によかったと、心の底から思えます。
戦争の残酷で悲惨な光景、今では聞くことすらない飢餓、希望を絶望に変え、歴史を語るうえでは欠かせないものです。

知っているようで、知らない。
例え知ることはできても、経験することはあってはならない。
そんな心響く日記に、考えさせられました。
もう一度、人間の戦争から終戦までについての歴史を一から学びたいと感じました。

「彼女の物語」に魅入られた小説家の苦悩

  • ★★ Very Good!!

人の死と小説の死を関連づけるというかなり手強いテーマに挑戦した作品です。
作者の手から離れた作品はもはや作者だけのモノではありません。涙なくしては読めないような純愛モノを書いたつもりでも、笑いすぎて涙が出るラブコメとして読まれてしまうことだってあるでしょう。読者によって小説は変容していくのです。

しかしこのような変容が起きるのは読者だけではありません。作者にも起こり得ます。写真は対象物をありのままに描写していると考えがちですが、同じ被写体でも照明や構図によって美しくも不気味にも写せます。そこには作者の意図が反映されるからです。

この特徴は小説になればさらに顕著になるでしょう。対象物を文章として表現する前に、どうしても作者のフィルターを通過させなくてはなりません。その行為は文章に個性を与えるのですが、同時に対象物の正確性を損なう原因にもなります。文章に描かれているのはあくまでも作者の感じた、作者の考えた対象物なのです。

この作品の主人公である小説家が選択した対象物は交際していた彼女、しかもすでにこの世には存在していない、彼の記憶の中にしか存在しない彼女です。主人公は彼女の物語を書き綴ります。そしてそれは完成します。これで彼女はこの作品の中に永久に生き続けられる……本来なら喜ぶべきことなのですが主人公の苦悩はますます深まっていきます。
彼の悶え苦しむ姿は趣味で小説を書いているような私にさえも現実味を帯びた迫力を感じさせるほどです。
ラストはほろ苦いものですが彼にとってはこの選択しかなかったのでしょうね。
小説に限らず何らかの創作活動をしている方々には心に響く作品だと思います。