5月22日は、ご夫婦(522)の日らしいです。ラブコメや恋愛小説の多くは、主人公とヒロインが結ばれるのが物語のゴールですが、現実では結婚してからが二人のスタートです。ときには夫婦関係から始まる恋愛ものがあってもいいのでは? というわけで今回はそういった夫婦の物語を選んでみました。現代では夫婦の関係もさまざま、十組の夫婦がいれば十通りの夫婦のカタチがあります。そして夫にも、妻にもそれぞれ異なる恋愛観や結婚観、人生観を持っています。正解はありません。その答えをお互いに模索するのが夫婦でもあります。まあ私はいまも独身なんで関係ないんですけどね(泣)

ピックアップ

もしもコミュ障ボッチの腐女子とリア充イケメンが結婚したら

  • ★★★ Excellent!!!

倉敷紗々は地方銀行で働くアラサー独身腐女子。両親から結婚を急かされた彼女が、結婚相談所を通じて仕方なく結婚した大鷹攻は、交友関係が広く、趣味はアクティブ、おまけに気配りの効く紗々とは正反対の好青年。そんなコミュ障妻とリア充夫の凸凹夫婦の日常がじれったくて悶えます。

「いつかは離婚する」という条件付きでプロポーズを受けた紗々は、結婚しても夫を名字で呼ぶ、お互いの趣味やプライベートには干渉しない、部屋は別々で肉体関係も一切ナシという徹底ぶりで、まったく新妻らしくない。

大鷹さんを選んだのも「BLが似合いそう」という最低な理由なのだが、夫である大鷹さんは紗々に一途なだけに報われない。長年の「おひとりさま」をこじらせた妻をなんとか真人間に更生させて普通の夫婦生活を築くために奮闘する夫に同情してしまう。

離婚理由を探す紗々だけれど、大鷹さんが他の女性と親しげにしたり、周囲から浮気や不仲を噂されたりすると何故か気分がもやもやしてしまって、自分の感情に戸惑う姿が初々しい。

正直、紗々の性格は非常に面倒くさい。けれど結婚生活に魅力を感じず、自分の時間を大切にしたいというのもイマドキ女子の本音で、現代では何らおかしくないのかもしれません。

(「結婚はふたりの始まり」4選/文=愛咲優詩)

愛とは思いやる心。夫の隠し事は妻にはすべてお見通し

  • ★★★ Excellent!!!

十八歳の伯爵令嬢エヴァは社交界にも出ずに邸宅に引きこもり、土いじりが趣味の人呼んで「芋令嬢」。そんな彼女の嫁ぎ先、子爵家のリオは無愛想な男性で、妻となったエヴァを邪険に扱うのだが、実はエヴァは人の心が読める「ギフト」の持ち主で本当は優しい夫の想いをお見通しで……。不器用な夫婦の交流に温かい気持ちになります。

リオがエヴァに冷たくする理由。それは財政難の子爵家がリオに黙って婚約を受けて持参金を使い切ってしまったこと。婚約話を白紙にできず、思い悩んだリオが選んだのが妻に嫌われて離婚を切り出させることだった。

心を読んでお家事情を察したエヴァは、リオの演技につきあって夫婦生活を過ごす。家を掃除し、美味しい手料理でもてなす家庭的なエヴァにリオは次第に惹かれていく。しかしそれまでの無礼な態度から、いまさら正直になれない男心がもどかしい。

すべてを承知のうえで素知らぬ顔で夫に尽くしながらも、貴族の令嬢らしくない自分を好きになってくれるリオを憎からず思い始めるエヴァの様子もいじらしいです。

結婚生活に大切なのは、言葉や行動だけじゃない、なによりお互いを思いやる愛情なのだと教えてくれる作品です。

(「結婚はふたりの始まり」4選/文=愛咲優詩)

主夫は働く女性の味方! 純情少年と最強美女のおねショタ夫婦ファンタジー

  • ★★★ Excellent!!!

神から特別な職業を授かる「ロール判定」で人生のすべてが決まる世界。十五歳の少年リヒティが得たロールは、家事が上手になるだけの不遇職「主夫」だった。そんなリヒティを見初めた二十二歳のSランク女冒険者リオニーはリヒティに結婚を迫る! 年上の女性と年下の少年のカップリング、いわゆる「おねショタ」ものです。

冒険者を目指す主人公にとっては残念なロールだが 、歴史上に名を残した女性には必ず「主夫」の支えがあった。しかしそんな事実とは関係なしに純真無垢なリヒティ少年を溺愛するリオニーは間違いなくショタコンです。

病気の母親を救ってくれたリオニーへ恩を返すため、結婚を前提としてお付き合いを始めたリヒティに、さまざまな恋のライバルや試練がやってくる。脳筋でガサツなところもあるけれど、強くて正義感に燃えるリオニーの勇姿に見惚れ、リヒティも守られているばかりじゃなく、どんな窮地にも屈しない 勇気に魅せられました。

現実でも女性活躍社会を目指す昨今、夫が家事に参加する機会も増えてきました。それでも家事が苦手な男性にとって家事が得意になる「主夫」は決して不遇ではない夢の職業なのかも?

(「結婚はふたりの始まり」4選/文=愛咲優詩)

夫婦一緒に異世界転生! 世界最高の科学者が異世界最強の魔術師に!

  • ★★★ Excellent!!!

大学で次元を研究する物理学者の湊崎雅也が、難病に罹った妻の詩帆を救うために見出した方法、それは自分たちの記憶を保持したまま別の世界で人生やりなおす異世界転生だった。世界最高の科学者がその知識を生かして異世界で最強の魔術師に成り上がるストーリーが愉快です。

自身が発明した装置により、異世界の貴族フィールダー男爵の三男クライスへと転生した雅也だったが、次元の狭間を通り抜けたことで、生まれつき伝説の賢者に匹敵する大量の魔力を備えてしまった。さらに物理学を応用した物理魔法という新しい魔法すらも編み出してしまう。

十歳にして赤竜を退治し、十五歳で魔人を討伐し、王立魔術学院に入学する前に間違いなく世界最強。あっという間にパワーインフレしてしまうクライスのチートな強さは、ここまでくればもはや痛快。

ただ問題は、研究にかまけて愛する妻を迎えにいくのを後回しにしてしまっていること。妻の詩帆も伯爵令嬢として転生していたが、彼女を取り巻く環境は最悪で、いつまで経っても現れない夫へのいらだちが募るばかり。クライスと同レベルの魔力を身につけているだけに、ひとたび夫婦喧嘩が起きれば世界がヤバいのでは!? 早く迎えに行ってあげて!

(「結婚はふたりの始まり」4選/文=愛咲優詩)