愛とは思いやる心。夫の隠し事は妻にはすべてお見通し

十八歳の伯爵令嬢エヴァは社交界にも出ずに邸宅に引きこもり、土いじりが趣味の人呼んで「芋令嬢」。そんな彼女の嫁ぎ先、子爵家のリオは無愛想な男性で、妻となったエヴァを邪険に扱うのだが、実はエヴァは人の心が読める「ギフト」の持ち主で本当は優しい夫の想いをお見通しで……。不器用な夫婦の交流に温かい気持ちになります。

リオがエヴァに冷たくする理由。それは財政難の子爵家がリオに黙って婚約を受けて持参金を使い切ってしまったこと。婚約話を白紙にできず、思い悩んだリオが選んだのが妻に嫌われて離婚を切り出させることだった。

心を読んでお家事情を察したエヴァは、リオの演技につきあって夫婦生活を過ごす。家を掃除し、美味しい手料理でもてなす家庭的なエヴァにリオは次第に惹かれていく。しかしそれまでの無礼な態度から、いまさら正直になれない男心がもどかしい。

すべてを承知のうえで素知らぬ顔で夫に尽くしながらも、貴族の令嬢らしくない自分を好きになってくれるリオを憎からず思い始めるエヴァの様子もいじらしいです。

結婚生活に大切なのは、言葉や行動だけじゃない、なによりお互いを思いやる愛情なのだと教えてくれる作品です。

(「結婚はふたりの始まり」4選/文=愛咲優詩)

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