このコーナーで紹介する新作を選ぶときには設定のインパクトやキャラクターの魅力についつい惹かれがちなのですが、今回はそれに加えて「続きが気になる」という要素に重点を置いて作品を選ばせていただきました。物語の楽しみは色々あるのですが、やっぱり「主人公はこの先どうなってしまうのだろう?」「この謎はどのような答えが隠されているのだろう?」という、気になる先の展開というのは、その中でもかなり大きいと思うのです。
どの作品も普通に読むだけでももちろん面白いのですが、そういった部分に注目して読んでいただけると小説を書く方たちの参考になると思われます!

ピックアップ

「いやあ奥さん、安心しな。こいつは悪いテケテケじゃねえよ」

  • ★★★ Excellent!!!

美人ではあるがガラの悪い女上司と共に地方都市に出張した武松道資。支社に到着するも仕事はまだ取り掛かれる状態ではなく仕方ないので居酒屋へ繰り出し、すっかり酔っ払った状態でホテルにチェックイン。

そして夜中にふと目を覚ますと、自身に大変な変化が起きていることに気付く。イチモツがないのである! 大きなイチモツどころか普通のイチモツさえなくなっている! というか腰から下の下半身そのものがなくなっているのだ!

こんな状態で慌てて先輩の様子を見に行くと、先輩はなぜか背中にコウモリ風の翼をはやして宙に浮かんでいる奇妙な状態に。その後も体に奇妙な変化を起こした他の宿泊客と合流し、下界から隔絶されているホテルからの脱出を目指すことに。

主人公以外は全員女性である意味ハーレム状態なのだが、他の人たちが夫に浮気をされて傷心旅行中の妊婦だったり、友人の彼女(全身変色して毒属性持ち)だったりと微妙に羨ましくないメンバー構成なのが大きな特徴。

しかしどの人物も非常にキャラが立っており、だいぶ危機的な状況のはずなのにシリアスな空気にはなりすぎず、それぞれの軽妙なやり取りがいちいち面白い。

物語はまだまだ中盤で謎もまだ多く残っている。この奇妙な状況に追い込まれた奇特な面々がどのような決着を見せてくれるのか。要注目な一作だ。

(新作紹介 カクヨム金のたまご/文=柿崎 憲)

ミステリーでもありSFでもある、鮮やかな青春小説!

  • ★★★ Excellent!!!

校内屈指の美少女石長・穂希に屋上に呼び出されそのまま告白された、臼杵・翔太。これは間違いなくイタズラか何かだと確信しその場を猛ダッシュで逃亡。しかし、どうやら本気の告白だったようで、彼女と本格的にお付き合いすることに。

お昼にはお弁当を作ってきてくれるし、自身のトラウマには優しい言葉をかけてくれるし、下校時には校門前で待っていてくれる理想的な彼女だ。かくして始まるラブコメな日々。こんな可愛い彼女ができたんだから、空に謎の裂け目が見えたり、怪しい黒服に尾行されてたり、世界が破滅するかもしれないなんてことはどうでもいいだろう!

……などと能天気に言えるはずもなく、彼女と世界を巡る危機的な状況に巻き込まれてしまう。世界を襲う奇妙な事象、臼杵の過去、各登場人物の意味ありげな言動、石長さんの数々の秘密など様々な要素が幾重にも絡み合ったストーリーは、全ての伏線を回収してラストにたどり着く。

読み終えた後には、読者の脳裏に鮮やかな青空の印象を残す、気持ちのいい青春SFだ。

(新作紹介 カクヨム金のたまご/文=柿崎 憲)

巨大熊が暴れ狂う閉ざされた寒村……外法に手を染めてでも生き延びろ!

  • ★★★ Excellent!!!

異世界に転生し貴族の家の長男に生まれた主人公。しかしちょうどそのタイミングで父親が領地を没収され、家族一同開拓地に飛ばされることに。おかげで両親の仲も最悪で家では常に怒号と金切り声が飛び交う険悪なムード。主人公も生後半年でネグレクト状態。これだけでも最悪なのに、さらに巨大な熊が家族の住む小屋を襲い両親は殺され、主人公も半死半生に!

こんな超ハードモードな展開が冒頭の1話に詰め込まれているのだから、もうたまらない。さらにここから主人公は生き残るために、父親や近隣住民の死体を肉のゴーレム(生命維持装置付き)に再構成するというとんでもない外法に手を出してしまう。この肉のゴーレムの設定が細かく作りこまれて実に面白い。

かくして吹雪舞い血肉飛ぶ冬の山中で演じられる、巨大魔獣熊vs赤ん坊in醜悪肉塊! この極限状態での戦いが非常に熱いのだ!

中盤からはオーソドックスな転生ものの展開をなぞるようになっていたり、終盤は駆け足気味になってしまっているのがやや惜しいが、序盤の壮絶な死闘だけでも一読の価値ありだ!

(新作紹介 カクヨム金のたまご/文=柿崎 憲)