原稿を書いてる今、気温は35度とかですよ! ――などと取り乱してしまいましたが、かろうじて元気と言えなくもないわたくしです。と、それはさておきまして。
今月の新作紹介、テーマはご存じのとおり(ということにしておいてください)、みなさまにぜひとも出逢っていただきたい作品でございます。
ネタをうまく調理してくださってる作品が多くて、今月もかなり深刻に悩ませていただいたのですが、それだけにいいお話と出逢うことができました。ですので、あとは「みなさまに届け!」のココロでオススメさせていただきますよー。

ピックアップ

フリーターでヒモでニンジャ! 謎が謎を呼ぶ多彩なキャラ小説

  • ★★★ Excellent!!!

羽田子の金で文化的生活を嗜む26歳の「私」。しかし彼女と同居することはなく実家で暮らし、時につまらない雑貨屋のバイトとして日銭を稼ぎ、時にニンジャ会社の会長として誰かからの依頼をこなしていた……。

ひと言で表わすなら、「この主人公って何者!?」です。いや、ほんとに「私」は謎なんですよ。“こどもおにいさん”のフリーターなのに、なにやってるのかよくわからないニンジャ会社を運営してたり、きっちり羽田子さんのヒモを勤め上げてたり、かと思えばそれらは「装い」だと言い切って小説を書き綴ったり。

荒唐無稽なコメディかと思えば微妙な距離感の恋愛ものになってて、気がつくと哲学を匂わせる現代ドラマに切り替わってる……くるくると有り様を変えていく物語の中で、読者は注目せざるを得なくなっていくんですよね。「私」っていう主人公に。こういう“つい気にさせられちゃう人”がきちんと中心にいてくれるからこそ、物語がとっちらからずに成立してるわけです。

続きが気になるキャラ小説として推させていただきますよ!

(新作紹介 カクヨム金のたまご/文=髙橋 剛)

この世界に在るものは先輩と後輩だけ……!

  • ★★★ Excellent!!!

先輩と後輩によって綴られる小話。
というわけでこちら、一話完結型の掌編集です。登場人物もそれぞれの話でちがう人物で、共通してるのは先輩(概ね男子、時々女子?)と後輩(多分全員女子)だってことだけ。なのでどこから読んでも大丈夫な構成になってます。

この読みやすさもいいんですけど、最大の特徴はそのテイストですね。“少し不思議”のほうのSF調で綴られるお話は、さくりと決まるオチの中に先輩後輩っていう微妙な関係性が生きてて、実にこう、じれったいというか難しいというか。

いや、普通に恋愛的な愛憎話もあったりするんですけど、やっぱりそこには落ち着かないんですよ。それがまた青春ものとしてのテイストを醸し出してて、読んでるともだもださせられるんですよねぇ。掌編という短いお話の中で行間をしっかり使えていればこそ、読者の感覚に訴えてくるにおいが立ってるのです。

さくっと読み切れるだけじゃなく、全編にわたっていいにおいが味わえる作品です。

(新作紹介 カクヨム金のたまご/文=髙橋 剛)

パニック障害に陥ってしまった女子の「奮闘記」!

  • ★★★ Excellent!!!

新卒入社したブラック会社で体を壊してしまった著者さんが、新しい環境を得て立ちなおり、もともと楽しんでいたアクティブな生活を取り戻そうとしたそのとき――パニック障害を発症してしまった!

体力と気力に満ち満ちたゴリラから、びくびくおどおど系のハムスターとなってしまった著者さんの奮闘エッセイとなります。

普通なら小さな負担が途轍もなく大きな負担になってしまう様が赤裸々に綴られていて、それだけでもなるほどなぁとうなずかされるのですが、理解を促すばかりじゃありません。各話に「私は前へ進む!」っていう力強さ――ゴリラの矜持がしっかり感じられるからこそ、のぞき見ているだけの私も安心して応援できるんですよ。だって超逆境に陥ってなお「がんばる!」って言える強さは、自分だけじゃなくまわりの誰かも「がんばる!」って思わせられるじゃないですか。

ご自身へのエールであると同時に読者さんへのエールでもあるエッセイ、サムズアップでオススメします。

(新作紹介 カクヨム金のたまご/文=髙橋 剛)