みなさまお疲れさまです。新年早々、私はすでにお疲れです。
というのはさておき。今回は新作レビューです。なので、いつもどおりにみなさまへ新しい出逢いをお届けすることをテーマに4作選ばせていただきました。
縁というものは本当に奇なもので、機会がなければ知らないまますれ違ってしまって逢えずじまいということもよくあるものです。このご紹介をきっかけに、ぜひ袖すり合って“多少”の縁を繋いでいただけましたら、レビュワーとしてそれ以上にうれしいことはありません。
それではぜひぜひ、よい出逢いをー。

ピックアップ

牛鍋から始まらなくて壊れる幕末ラブコメディ!

  • ★★★ Excellent!!!

時は幕末。父親が牛鍋屋を開くと言い出したおかげで、庄助は結婚する予定だった綾乃に破談を申し出されてしまう。
困った庄助はあれこれ悩みつつ、綾乃に思いなおしてもらおうとじたばたもがくのだが……。

こちら、牛鍋を中心に据えた時代ものラブコメとなっております。
明治までがんばればもう少し楽だったでしょうに! と思わずにいられないシチュエーションですが、時代背景を取り込みつつ現代感覚をいい塩梅でブレンドした物語は明るくて前向きで――
来たる文明開化のにおいを感じさせてくれる仕上がりとなっています。

幕末ものといえば江戸の名残がピックアップされがちですので、この角度から切り込んだ作品というものはなかなかにありません。
そのレア度だけでも注目なんですが、時代変革の際で悪戦苦闘する主人公の庄助さんに悲壮感がないのも気持ちよく、安心して読めるところもいいんですよ。
時代ものが苦手な方にもおすすめしたいライトタッチストーリーです。

(新作紹介 カクヨム金のたまご/文=髙橋 剛)

女子高生を打ちのめすとんでもない秘密が転じて大団円!

  • ★★★ Excellent!!!

高校2年生の野口真紀は、美容師をしている父親が大の自慢。なぜなら超イケメンだから! 父への熱愛をこじらせた彼女は、ついに父のスマホを盗み見してしまい、知ってしまうのだ。

大好きなパパはゲイだった――

というわけで、内容はタイトルどおりです。
いや、真紀さんじゃなくてもショックですよね。これまで信じて疑わなかった親子関係が崩壊するわけですから。当然真紀さんは悩みますよ。

でも、著者さんはその先にちゃんとした道筋を用意してるんです。大仰なものじゃなくて、極々あたりまえの。そうしてさりげないくらい普通に「家族ってなんだ?」のアンサーを描く著者さんの筆、最高に小憎らしい! 正直やられましたねぇ。

そして親子関係だけに留まらず、まわりの人たちや真紀さん自身の先を示してくれているのも読者的にうれしいところです。

ひとつの凄絶な真実がやさしい未来へ繋がる人間ドラマ、迷わずおすすめさせていただきますよ!

(新作紹介 カクヨム金のたまご/文=髙橋 剛)

喧嘩番長、とんがり帽子の謎少女と出逢って拳を握る

  • ★★★ Excellent!!!

“厄病神”のあだ名で呼ばれる武闘派ヤンキー(保護観つき)藤宮景は、引っ越してきたばかりの赤無市で迷子になった末、隻眼の少女エノと出逢う。

こちらの作品、まだ始まったばかりで主要キャラふたりも出逢ったばかりなのですが……這い寄る恐怖が売りのクトゥルフものにヤンキー突っ込む発想、すごいですよね! 

いや、物語自体は重厚で濃やかな文章によって綴られていて、まさにクトゥルフらしい薄暗さを予感させるものなんです。でも、このありえない要素ひとつが、まったく別のドラマを見せてくれるっていう期待値を高めてくれるんですよ。

メジャーなジャンルでも、着想のひとひねりを効かせられれば「斬新」に昇華します。賞なんかでもこれができている作品は強いですね。
読者さんには今後の展開を期待していただきたいですし、書き手さんにはお手本として参照していただきたい、斬新さを備えた作品です。

(新作紹介 カクヨム金のたまご/文=髙橋 剛)

あなたの人生、やりなおせるとしたらどう答えますか?

  • ★★★ Excellent!!!

人生をやりなおしたいかとの問いにきっぱりかぶりを振る著者さんが、そう答えるに至る生まれてからの17年間を振り返るエッセイ。

その家はボロボロで、ゴミや埃、虫や犬猫、よく知らない人から泥棒までもりもりやってきますし、元ヤンのご両親を始めとした人々は埒外にまで突き抜けてますし……
そんな中で醸される諸々のドラマ、実に味わい深いのです。

人間の個性や性格を形作るものは環境ですよね。そしてその環境を構成するものは物ばかりでなく、関わる(その人にとっての)モブキャラクターです。

ここまで過酷な環境が仕上がるにはいったいなにが必要なのか? 
著者さんが人生をもう一度……と考えない理由はなんなのか? 

それが折り重ねられるエピソードの中でどんどん明確化されていくんですよ。
これこそがまさにリアルガチな人間ドラマ。そう思わせられずにいられない、パワー満ち満ちる一作です。

(新作紹介 カクヨム金のたまご/文=髙橋 剛)