毎度おなじみカクヨムの新作を紹介する金のたまごのコーナーでございます。日々新たに掲載される新作の数々から今回選ばせていただいた作品は、グルメ! 甘やかし! 青春ミステリー! 難破した宇宙船!……といった具合にジャンルも長さもバラバラで一見統一感はありませんが、これらに一つだけ共通することがあります。それは選者である自分が読んで面白いと思ったということ! というわけで、本レビューが皆様の読書の支えになりましたら幸いです。

ピックアップ

食事……それは喰うか喰われるかの戦い!

  • ★★★ Excellent!!!

人間界を滅ぼす大義名分を得るべく日本にやってきた魔界の王族ヴァルアリスが、毎回その料理の美味さに打ちのめされて帰っていく……。

言ってしまえばそれだけの話なのですが、驚嘆すべきはその熱量!
人間の文明などたいしたことないと高をくくるヴァルアリスだが、彼女を待ち受けるのはこだわりが行き過ぎて、狂気の域に足を踏みこんだ料理人たち。
ヴァルアリスが美味しくないと思った瞬間、人類の滅亡は確定。だが彼らの提供する料理は常にヴァルアリスの想像を超えて、強烈な美味を彼女に叩きつける。

本作に登場する料理は、ラーメンやカレー、寿司など誰もが一度は食べたことのあるものばかり。だからこそその美味さがシンプルに読者に伝わってくるし、そしてやたらテンションの高いナレーションが話を盛り上げまくるからたまらない。

一品の料理を題材にして、客と料理人が互いの想像のさらに上を行こうとしのぎを削る。そう、これは至高のグルメ小説にして究極のバトル小説なのだ……!

いや、戦いの結果はタイトルの時点で明らかなんですけどね……。

(新作紹介 カクヨム金のたまご/文=柿崎 憲)

極限状態で問われる、命の価値と意味。

  • ★★★ Excellent!!!

本作の状況は至ってシンプル。
舞台となるのは難破した宇宙船。搭乗するのは艦長と5人の乗客と一体のヒューマノイド。用意されている脱出ポッドは2人分のみ。残された酸素の残量はおよそ半日分。この中で誰が生き残るべきか?

最初は平等にくじで決めようとする艦長ですが、このくじに自分を入れていいのかということで悩むし、さらにこの事実を乗客に明かしたところ、その内の一人が、「では、もし私が当選したら、艦長、あなたに権利をお譲りします」と言い出して……。

シンプルな設定の短編だけに作者がキャッチにしている「命には優劣があるだろうか」というテーマが引き立つ内容になっていますが、本作が優れているのはそれだけではありません。
終盤で明かされる意外な新情報に、そこから展開されるちょっと捻ったオチが実に秀逸。

艦長が下した結論は本当に正しかったのか?

読み終わった後はこのラストについて考えてみると面白いかもしれません。

(新作紹介 カクヨム金のたまご/文=柿崎 憲)

甘やかし美少女と過ごす超甘々な日々

  • ★★★ Excellent!!!

魔王討伐と引き換えに持っていた力を全て失った元勇者のクレス。正体を隠して人知れず暮らしていた彼だが、かつて彼に助けられたという魔術師の少女・フィオナが訪れ彼に告白をしてきたではないか! 
そして始まる二人の甘々な日々。

年下なのに母性に満ち溢れているフィオナは、力の無くなったクレスを見ても失望するどころか、かえってクレスを甘やかそうとするのです。
いい……。

しかし、クレスも元勇者だけあって、ただ甘やかされてばかりではありません。
年上の男として自分なりのやり方でフィオナを喜ばせようと色々頑張るのですが、女性経験ゼロ&天然気味な性格もあって、空回りすること多数。

そんなやり取りを重ねながらもゆっくりとお互いを理解して、関係性を深めていく二人。
この恋愛初期特有の初々しさが実に楽しく、糖分たっぷりなラブコメに仕上がっています。
甘やかされたい願望があるあなたは是非読みましょう!
最新の展開ではおねショタ要素も加わって、さらに良し!

(新作紹介 カクヨム金のたまご/文=柿崎 憲)

嘘から始まる恋人関係に秘められた真実は?

  • ★★★ Excellent!!!

罰ゲームで同学年の女子・更級沙良に告白することになった藪坂七季。
お互いに相手の事を知らないし、当然振られると思っていたのに沙良の返事はまさかのOK。

めでたしめでたし……と言いたいのだが、七季が本当に好きなのは幼なじみの枯井戸彩華。このことをきっかけに七季と彩華の関係は気まずいものになっていき、一方で自分の悩みについて真剣に考えてくれる沙良に対して徐々に心を惹かれていく……。
三人の関係が徐々に歪んでいく中で、街では謎の連続ペット殺傷事件が発生し、さらに学校の教師が殺されるという事件まで起きてしまう……。

罰ゲームで女性に告白したり、上手く行かない家庭のストレスを彼女にぶつけたりと、七季は決して褒められた人間ではない。だが、作者の巧みな文章力と丁寧な描写によって、気が付けばつい七季に感情移入してしまうし、それが後々起きる展開でより読者にダメージを与えることになる。

ダークな青春小説としても素晴らしいのだが、合間合間に挟まれる謎のストーカー視点の描写など、気になる仕掛けもたっぷり仕込まれており、真実が明かされた時の衝撃も抜群。
完成度の高い青春ミステリーだ。

(新作紹介 カクヨム金のたまご/文=柿崎 憲)