極限状態で問われる、命の価値と意味。

本作の状況は至ってシンプル。
舞台となるのは難破した宇宙船。搭乗するのは艦長と5人の乗客と一体のヒューマノイド。用意されている脱出ポッドは2人分のみ。残された酸素の残量はおよそ半日分。この中で誰が生き残るべきか?

最初は平等にくじで決めようとする艦長ですが、このくじに自分を入れていいのかということで悩むし、さらにこの事実を乗客に明かしたところ、その内の一人が、「では、もし私が当選したら、艦長、あなたに権利をお譲りします」と言い出して……。

シンプルな設定の短編だけに作者がキャッチにしている「命には優劣があるだろうか」というテーマが引き立つ内容になっていますが、本作が優れているのはそれだけではありません。
終盤で明かされる意外な新情報に、そこから展開されるちょっと捻ったオチが実に秀逸。

艦長が下した結論は本当に正しかったのか?

読み終わった後はこのラストについて考えてみると面白いかもしれません。

(新作紹介 カクヨム金のたまご/文=柿崎 憲)

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