トールキンの『指輪物語』は、ファンタジーの王道として現代でも愛されている名作です。どうして人々の心を引きつけるのか、それはか弱き小人であるホビットが人間やエルフ、ドワーフの力を借りて困難を成しとげる、「小さき者の大きな冒険」だからではないでしょうか。弁慶と牛若丸の逸話であったり、部下が上司に倍返しするドラマであったり、弱者が活躍する物語は勇気を呼び起こす感動があります。今回のレビューでは、原点に帰って、小さな者が大きな挑戦に挑んだり、小さなことにスポットを当てた作品を取り上げてみました。作品を読んだ皆さんが、物語の主人公のように、自分もなにかに挑戦してみよう。すこしでもそう感じてくれたら幸いです。

ピックアップ

保育士はつらいよ。日本一過酷な職場に舞い降りた魔王

  • ★★★ Excellent!!!

ゲームの世界で勇者に倒された魔王アレスが、現代の保育園に務める保育士の女性・百合先生へと憑依して巻き起こるドタバタ騒動が面白い。

現代の常識が欠けているアレスにとっては、すべてが理解不能で面倒なことだらけで、性格が豹変してしまった百合先生(アレス)の補佐として振り回される新人保育士の麻里先生が可哀想なのだけれどコミカルな掛け合いに頬が緩む。

元気いっぱいの子供たちに癒されるが、それを見守る保育士はすさまじい激務で、食物アレルギーに気をつけたり、子供の喧嘩に気を配ったり、運動会や行事の準備をしたりと気を休める暇もない。
職場内でもギスギスした人間関係があったりして、保育士は毎日こんな苦労をしていたのかと、保育士の業界の過酷さを実感する。
何もかも手さぐり状態の百合先生(アレス)だが、子供と同じ目線で接することで受け入れられていく姿にほっとする。

現代の社会問題に切り込む、実は社会派なファンタジーなのかも?

(必読!カクヨムで見つけたおすすめ5作品/文=愛咲優詩)

小石から始まる癒し系王道ファンタジー

  • ★★★ Excellent!!!

異世界作品には人間ではないモンスターなどの人外に転生するケースも多々あるが、この作品のようになんの変哲もない小石に転生するというのはまさに前代未聞である。

目覚めたときには道端に転がっていた小石だったが、幸運にも小さなゴーレムと融合して自由に動ける身体を手に入れ、異世界の大地を歩きはじめる。
双子の美少女姉妹ロモンとリンネと出会い、アイリスと名付けられたゴーレムが、冒険者を目指して故郷を出た双子の護衛となり、ときには教師となり、ときには家族となって絆を深めていく姿がほのぼのとして和む。

人格は女性なのだけど可愛い女の子が大好きで、双子とお風呂に入ったり、一緒のベッドで眠ったり、無防備なのをいいことにセクハラしまくりで羨ましすぎ! 

お人好しで人助けに奔走しているうちに周囲からの信頼を得て、一人の人間のように受け入れられていく交流も心温まる。
ちっぽけな小石から世界観が広がっていく壮大な物語だ。

(必読!カクヨムで見つけたおすすめ5作品/文=愛咲優詩)

高校生たちがガチで枕投げで戦争してみた

  • ★★★ Excellent!!!

温泉旅館の従業員や湯治客が寝静まった頃、暗闇の中で行われる高校生たちの熱き枕投げバトル。
浴衣に身を包み、枕を脇に抱え、トランシーバーで連携し、観葉植物や自販機を盾に進行し、隠れ潜む敵をサーチ&ピロー!
 
まさに銃の代わりに枕を使ったサバイバルゲームそのものだ。
最初はキレイでカワイイ先輩たちにつられて枕投げ部に入部した灰島爽斗も、初戦の激闘を通じてその魅力にハマっていくのが熱い。

『軌道確保(スケート・ストレート)』、『愛ある月面歩行(ハネムーンウォーク)』、中二病感あふれるネーミングの必殺技の数々が交差するが、彼らにとってはどこまでも真面目で、だからこそ余計に笑いを誘う。飛び交う枕、唸るスリッパ、華麗なアクロバット回避、乱れる浴衣、スリットから覗く生足、揺れるおっぱい!

いいぞ枕投げいいぞ! なんて健全なスポーツなんだ! 

これは全国に広めるべき! たとえ遊びであっても全力を尽くす、これこそが青春だ。

(必読!カクヨムで見つけたおすすめ5作品/文=愛咲優詩)

五歳児が築き上げる異世界内政改革

  • ★★★ Excellent!!!

難病によってその生涯を閉じてしまったゲームクリエイターの主人公が、異世界の貧乏貴族の長男オルクスへと転生し、現世で果たせなかった願いを叶えるため、領地を開拓していく姿がワクワクする。

戦争で亡くなった父親に代わって、たった五歳で領地の運営を引き継ぎ、早熟の天才として頭角を現していくオルクスに、さまざまな無理難題を押し付ける周囲の大人たちが大人気ないが、いかなる無茶振りも軽々と乗り越えて功績を積み上げていくから痛快なのだ。
ときに幼子とは思えぬ思慮と見識で大人たちを諭すこともあり、いったいどちらが大人か子供かわからない。

そんなオルクスだが、うっかり出世してしまったために隣国に出張させられたり、戦争に出兵させられたりと、余計な仕事を抱えて本来の領地開拓から離れていってしまうという誤算に頭を悩ませる姿が可笑しい。
五歳にしてすでに大物感を漂わせる彼が、次はどんな活躍をして周囲の度肝を抜くのか楽しみだ。

(必読!カクヨムで見つけたおすすめ5作品/文=愛咲優詩)

閉ざされた世界で少年は、星を見たいと願った

  • ★★★ Excellent!!!

染色体の突然変異によって超能力を持つ子供が生まれるようになった近未来で、能力を危険視した大人たちによって隔離施設で育った主人公たち、『末端者(テロメア)』と呼ばれる少年少女たちの純粋さが胸を打つ。

実験動物のように扱われる環境のなかで心を殺して生きてきた少年セリニが、二人の少女ジュリエッタとステラとの出会いを通じて、次第に人間らしさを取り戻していく様子が見どころ。

天井に描かれた偽りの空しか知らない彼らが、「星を見たい」という夢を抱いて外の世界に興味を持ち始めるのも思春期らしい心理表現だと言えるだろう。

レビュー時点の公開分では、とある事件が起きて施設からの脱出を決意したところまでだが、いかにして厳重な警備をかいくぐり施設を脱出するのか、これからセリニにどんな出会いや試練が待ち受けているのか、
今後の展開にさまざまな想像を巡らせ、期待が膨らむジュブナイルSFだ。

(必読!カクヨムで見つけたおすすめ5作品/文=愛咲優詩)

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