令和時代の〈武蔵野〉を創る作品を大募集!
1,166 作品
武蔵野を冠した、このささやかな賞はまだ二回目だ。とても楽しく読んだ。武蔵野をめぐるイメージが豊かになり、広がってゆくのが、うれしい。以下の五つの作品が、とりわけ魅力的であった。
「雨宿りの武蔵野深大寺」は朔太郎の「猫町」の狐版のようだ。「独歩(ひとりあるく)」は独歩のいる雑木林に心惹かれた。「故国の月」は渡来の民の武蔵野が生き生きと描かれている。「ダイダラボッチ、顰める」は歯切れのいい文章が圧倒的だ。「野辺の出来事」は私小説風に切り取られた、いまの武蔵野がいい。
とても迷った。そもそも、わたしは文学くずれの民俗学者に過ぎず、あてにならぬ選者である。迷った末に、大賞は永嶋良一さんの「ダイダラボッチ、顰める」を選んだ。ダイダラボッチが地球の生成の力そのものとして描かれていることに、驚きを覚えた。「独歩(ひとりあるく)」もこの人の作品だ。選者賞は、@sakamotoさんの「野辺の出来事」に。サヤ姉の淡い肖像のなかに、東京の郊外としての武蔵野のいまが鮮やかに感じられた。
赤坂憲雄
大賞の「宮廷画家と征服王」は、異世界転生した王が宮廷画家に命じて「ムサシノ」を描かせるという設定がユニーク。掌編ながらラストも余韻深く、「ライトノベル的要素」と「武蔵野というテーマ」を見事に両立させていた点が高く評価されました。
審査委員賞の「武蔵野探偵奇譚~まいまいず井戸の殺人~」は、まいまいず井戸や第六天信仰など武蔵野の民俗をうまく取り入れており、キャラクターの立った民俗学ミステリとして楽しく読むことができました。
その他、玉川上水の情景が瑞々しい「私が自転車を走らせる理由」、過去の武蔵野に迷い込んでしまった幼なじみをひたむきに想い続ける「潮騒の細道」、だいだらぼっちのために小学生が奮闘する「僕とだいだらぼっちの夏休み」など、印象に残る作品が数多くありました。4000字以下という短い文字数でライトノベル的な設定やキャラクター性を盛り込むのはかなり難しい作業だったと思いますが、その制限を感じさせない力作ぞろいでした。
KADOKAWA ライトノベル編集部
宮廷画家アルフレッドの祖国は戦に負け、新たな王の支配下になった。
敗戦から間もないある日、彼の工房を旧友の将軍ギルバートが訪れる。
ギルバートは言う。「新王がお前の絵を所望している」と。
その絵とは……。
大学生の俺は不思議な女と会う。
女からダイダラボッチを退治してほしいと頼まれた俺は・・・未来の武蔵野へ飛んだ。
そこで俺が見たものは? ダイダラボッチの正体とは?
時は江戸時代中期。
武蔵国で奇妙な変死事件が起きた。
人間の手では不可能な、何もない中空からの墜落死。
これは祟りか? あるいはトリック殺人か?
バチアタリ探偵・左前光蔵が不可能殺人の謎を解き明かす!
サヤ姉が亡くなって二ヵ月が過ぎた。
ずっと一人で暮らしていた彼女の家に今は誰も住まない。
僕は様子を見に、その家に一晩泊まった。ひさしぶりのことだった。
とある男が、子供の頃に遊んだ地元の「南沢湧水群」を訪れて、趣味としているサンドアートのネタを拾うお話です☆
「第2回角川武蔵野文学賞」の中間選考の結果を発表させていただきます。
多数の力作を投稿してくださった皆様、並びに作品を読んでくださった皆様には、改めて深く御礼申し上げます。
※掲載の並びは作品のコンテストへの応募順となっております