概要
西荻窪と彼とわたしの不器用な恋愛
【あらすじ】中央線の西荻窪。できれば停まらず通り過ぎて欲しかった。彼のことを思い出すから。話すことが苦手な不器用なバンドマン。一緒にラーメンを食べた日はずっと忘れない。
第2回角川武蔵野文学賞参加作品です。
第2回角川武蔵野文学賞参加作品です。
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おすすめレビュー
新着おすすめレビュー
- ★★★ Excellent!!!あの時食べたラーメンみたいなささいなことが、実は、大切な記憶を繋いでる
愛だの恋だのの、世の中にありふれたものの始まりは、本当のところはフィクションでよく見るような劇的なものでは全くなくて、偶発的で、ささいで、だから、そこから始まるふたりの世界も、端から見れば月並みで、ありふれている日常だ。
若者が華やかな未来を追うことも。
それが叶わないことも。
やっぱり、ありふれた現実だ。
でも、そこがいい。
ありふれていることの尊さが、いい。
いいからこそ、この物語の結末の寂しさは、胸を打つ。
中央特快に“間違えて”乗ってしまった「わたし」の心象のほんとうのありかを、探りながら読んでほしい。 - ★★★ Excellent!!!西荻窪、中央線という武蔵野。
作者の着想は言わずもがな、矢野顕子の名曲であろう。
「ラーメン食べたい」。
この曲の本来の意味は、女性一人でラーメンを食べることの難しい時代の赤裸々な告白だった。そこから時代は経った。主人公の女性はラーメンを食べることに、同時に彼氏の存在を重ねている。音楽に没頭して夢を見る彼は不器用で、オシャレな街でデートしようとするが、結局西荻窪のラーメンが一番落ち着くのだ。そして彼女もそれを微笑ましく見守る。見栄を張る彼氏に、「バカね」という彼女。昔から変わらない青春の一コマだ。
西荻窪という土地も良い。現代ではそこが武蔵野と言われてもピンと来ない空間も、かつては雑木林だけが広がる場所であった。同時にそ…続きを読む