第20話

この頃S社では某有名大手量販店に小皿の販売をしていました。


年間でいうと10万枚以上の発注数で、

この頃のS社の売り上げの半分以上を占めていました。


その注文が、突然止まりました。


毎週5000枚近くの納品を迫られていた注文が突然止まってしまったのです。


シゲルしかいない。でしょうな!


そう思い、小皿を焼いてもらっている窯焼きに向かいました。


予定にない私の突然の訪問に、

明らかに窯焼きの社長は慌てました。


社長を問い詰めると、そこにはS社の商品そっくりな小皿がすでに何千枚と製造されて置いてありました。


さすがに驚きました…。


「どうやって作った?陶器の型は!?

ケースはうちの物ですよね!!」


少しややこしい説明をします。


私達の販売しているお皿は陶芸作家さんの造る1点ものとは違い、


一度に何百枚も製造出来るように

機械で石膏型に泥状の粘土を流し入れ、

皿状に固まった泥を抜いてそれを焼いて製造しています。


この型を作るのにはまず、


1.粘土等で作りたい皿の原型を作る


2.原型師さんと呼ばれる方に製品にもっとも近い状態に仕上げてもらう


3.原型の型を取って何度も修正を入れ作り替える


4.原型型を元に『ケース』と呼ばれる固いセメントで作られた型を作る


5.ケースを元に『使用型』と呼ばれる泥状の粘土を流し入れ陶器を製造する型を作る


この『使用型』は泥の水分を吸うために脆く作られており、言わば使い捨ての型になるのもので、

大事なのはその使用型を生み出す【ケース】なのです。


オリジナルのケースを作るためには

1種類につき何十万の費用がかかります。


つまり、我々陶器屋にとって

【ケースは命】なのです。


シゲルはその命を、盗みました。


私はシゲルから投げつけられたS社の帳簿を隅から隅まで調べました。


するとそこには、2月頃に新しくケースが作られた痕跡が残されていたのです。


そしてその支払いはあろう事か、

S社の口座から支払われていました。


それだけではなく、あきのが一人暮らしをしている部屋の家賃や生活費や旅費も、

シゲルに上手にカモフラージュされ

S社から引き出され多額の横領をされていました。

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ケース 原型型 @chirimama

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