第19話

引っ越した次の日は安田さんの退職希望日でした。


「退職した後はどうするんですか?」私が聞くと


「腰も痛いし、もう仕事はしない。年金暮らしでのんびりするよ」と言いました。


主人も少しのパートタイムでも続けて来れませんか?と声をかけてはみましたが、

再就職の気は一切無いと言われました。


「資料をまとめておいたからそれを見てくれれば分かる」とだけ言い残され、結局安田さんからは直接引き継ぎをしてもらう事は出来ませんでした。


安田さんが退職した次の日。


主人と私はそれぞれ取引先に引越し報告をするため外回りをしていました。


すると、新倉庫内で作業をしていたパート従業員から主人の携帯へ連絡が入りました。


「社長、急に便利屋と名乗る方が2人いらっしゃって今倉庫内のうちの機械や荷物を運び出そうとしているんですけど、、何か聞いてみえますか?」


「2人は社長の指示で機械を運び出すように依頼されたと言ってますが…」


主人と私が大急ぎで会社へ戻ると、赤いジャンバーを着た2人組がトラックをバックのまま倉庫内へ突っ込んで、


作業台やハマスリ機と呼ばれる陶器の底の部分を手入れする機械を勝手にトラックへ運び入れている最中でした。


主人が止めに入ると、

「我々はここの社長に雇われたんだ!」と言いました。


主人が「ここの社長は僕です!」と言うと、


「いや、確か白髪の背の高い60過ぎの…」

それは安田さんの事でした。


安田さんはS社の社長だと偽り、

この前日にこっそり便利屋を新しい倉庫内に呼んで運び出す打ち合わせまでしていたそうです。


運び先を尋ねると、A社でした。


便利屋に「ここの社長に頼まれたんでしょう?だったら依頼主にこの場で電話をしてくれ」と主人が言うと、


便利屋が電話を掛けた電話口には

シゲルが出ました。


その場にいる全員が聞けるようスピーカーにしてもらい、


「どう言う事だ?なぜこんな事をする!いい加減にしてくれ!」と主人はシゲルに怒りました。


シゲルは「だって機械が無いとこっちの仕事が出来んがね〜、その機械は元々A社の物なのに勝手に運び出したのはそっちだろ!だから便利屋の費用もS社で支払ってもらうからな!」と呆れた言い分を言いました。


しかしハマスリ機はS社で購入されたものでした。

元々A社はS社よりも10年程後に作られた会社でした。


私がスピーカー越しに

「ハマスリ機を購入した時はまだA社は存在していませんよね。機械に製造年月日が書かれていますよ?」と言うと、


電話の向こうからあきのが大声で怒鳴りました

「いいから!さっさと運びなさいよっ!!便利屋!頼まれたんでしょ?仕事しなさいよ仕事!」


この鶴の一声にシゲルが鞭でも打たれたかのように慌て出しました。


「いいから!この子の言う通りにしてくれ!全責任は俺が負う!!とにかく今すぐ運び出せ」そう言うと電話を切りました。


このやりとりを聞いて、まさかとは思いましたが、、


便利屋は強行しました。逆に!?笑


主人は「大の大人2人を僕達は力づくで止めれませんが、これは窃盗行為ですよ。

持ち出すのならば必ず警察に連絡をしますからいいですね?」と聞くと


便利屋は

「全責任は相手が取るって言ってますからどうぞ!私は雇われただけです!」と、本当に機材を盗んで行ってしまいました。


持ち出された機材は総額で100万近い金額の物でした。


そして、驚く事に次の日便利屋はS社のポストに【運送料18000円也】と請求書を入れに来ました。


どこに窃盗された荷物の運送料を自分で支払うアホがおんねん!笑


この日安田が残した引き継ぎの資料ファイルを確認すると、20個程あるファイルは中身が全て空になっていました。


そしてこの後シゲル達は、二度と取り返しのつかない…

とんでもない事を起こしてしまうのです。

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