あの冬、僕がみたのは

@momongz

第1話 冬の体育館においてきた、大きな忘れ物

「試合終了!」

「勝利を収めたのは、県立東商業高校!」


病室のテレビから嫌なほど大きく響く。思わず小冬はテレビのリモコンを落としてしまった。あれはあの地獄の冬のことだった―



俺の名前は渚。都立三神学園に通う高校二年生だ。自分で言うのもあれだが、俺はバスケがめちゃくちゃ上手い。現に全国屈指の強豪、都立三神学園で二年生ながらエーススコアラーとして全国に名を馳せている。

来週、人生初冬の大一番に挑む。まあ正直、地区大会も全て50点差ほどつけて勝っているし、前評判的にも、うちの高校は20点差つけて優勝があるとも言われたもんだ。

そんな冬の大会の勝敗よりうちのバスケ部のマネージャーでもある幼馴染の小冬が白血病であると発覚したらしい。どうやら早期発見だったから完治も有り得るとの事で、とりあえず胸を撫で下ろしたが、不安なものは不安だ。何故か連絡がつかないし。少し心残りがあるが、試合に影響しては行けないので、一旦置いとくことにした。後悔することにならないといいのだけど―


冬の大会はとくに危なげなく決勝に駒をすすめた。相手は長年のライバル、県立東商業高校。過去に何度も決勝にあたっているが、近年は都立三神学園が優勢らしい。今年も、タレントは揃っている。正直、ほとんどの高校バスケ部員や、バスケファン、チームメイトや俺でさえも負けることを疑わなかった。

―あのブザーがなるまでは。


俺たちは負けた。タレントも、戦術も、雰囲気、メンバーの技術、俺の活躍も全て完璧だったのに。

あいつのシュートで全て狂った。県立東商業高校の俺と同じ二年生エースとして活躍してる南祥(みなみしょう)、あいつのせいだ。4Qの最後の3秒まで2点のリードを保っていた。しかし最後、南祥がハーフコートラインから放ったボールは、綺麗な弧を描いてネットに吸い込まれた。ブザーとともに。おそらく高校バスケで一生語り継がれるであろう出来事だ。俺は目を疑った。夢だと思った。夢であって欲しかった。だが、それはあまりにも鬼畜な現実だった。

俺は、俺たちは、掴むはずだった勝利を目の前で奪い取られることになった。


「都立三神学園高校、この体育館に大きな忘れ物を置いて、去っていきます。」


体育館にアナウンスが響き渡る。すごく気分が悪い。いまは悲しいより、悔しいより、怒りが勝っているが、流石に先輩全員が号泣しているのを見た時は、申し訳ないと思った。


―俺はその日から1日も練習しない日はなかった。



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