最終章:『恋文』
それから十年の月日が流れた。
彼女は毎夜、宇宙からの通信を受信し続けていた。
そして時々、微かな信号を捉えることがあった。ノイズに
『今日も、あなたのことを想っています』
『この星雲は、あなたの髪の色に似ています』
『オリオン座の方向に、美しい惑星を見つけました』
『いつか必ず、また会いに行きます』
* * *
十年の間に、
かつては研究だけに没頭していた彼女だが、今では若い研究員たちの指導にも時間を割くようになった。
研究室の窓辺には、小さな
デスクの引き出しには、
なぜなら、星空を見上げれば、いつでも
* * *
ある夜、
十年前、
「
「私も、あなたに恋文を送るわ」
「私は今も、あなたを愛しています。あなたが戻ってくる日を、ずっと待っています。毎晩あなたからの手紙を読んで、あなたが見ている星空を想像しています。だから、どうか——」
声が震えた。十年経っても、想いは少しも
「どうか、また私に会いに来て」
遠い宇宙のどこかで、
それがいつになるか分からない。百年後かもしれない。千年後かもしれない。
けれど、星を渡る恋文は、決して途絶えることはない。
なぜなら、それは時間と空間を超えた、二人だけの言葉だから。
* * *
むかしむかし、一匹の狐が人間の姫に恋をして、その姿を変えて姫に仕えたという。
狐の名は「
けれど、もしも
(END)
【短編】異聞・玉水物語 ;星間恋慕 浅沼まど @Mado_Asanuma
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