耽美な世界観で描かれる、純粋で切なくて、歪んだ愛情
- ★★★ Excellent!!!
森で迷った少女と、少女を気まぐれで助けた狼。逢瀬を重ねる二人の距離を遠ざけたのは不和でもなんでもなく、ただの時間の流れ。
少女には少女の人間としての生活があって、狼のいる森はその一部に過ぎなかった。
すると自然、成長と共に少女にとって森で狼と過ごす時間の比重はどんどん小さくなっていく。
森と人里、それぞれの場所で暮らしているのだから、少女のこの行動はごく当たり前のものだったのかもしれません。
けれど一方で狼にとっては、かけがえのない存在である少女が理由もよく理解できないまま自分の元から離れていってしまったようにしか見えなかった。やっと戻ってきたかと思えば知らない誰かのようになってしまっていて、狼は手酷く裏切られたようにも感じたのかもしれません。
そう考えるととても切なくて、たとえ良くない手段でも、少女を取り戻そうとする狼の背を押したくなります。
二人がもっと言葉を交わしていればよかったのか。話すくらいで人と狼の考え方の違いは埋まったのか。
耽美な世界観で描かれる、純粋で切なくて、歪んだ愛の結末。是非ご一読ください。