第12話エピローグ:西部警察ラグビー課・特別編
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### **エピローグ:西部警察ラグビー課・特別編**
**歴史的勝利から、数日後。**
日本代表の祝勝会が、都内某所のレストランで盛大に開かれていた。
そこには、主役であるはずの大門 哲(65)の姿はなかった。
彼はあの日以来、誰にも告げずに姿を消していた。
「団長、どこ行っちゃったんですかね…」
大空 翼が、少し寂しそうに呟く。
「フッ、あの人らしいさ。一つの事件(ヤマ)が終われば、また次の現場へ向かう。それが団長だ」
風間が、グラスを傾けながら言った。
選手たちは、口々に団長の破天荒な伝説を語り合った。
グラウンドに乱入した赤い鉄仮面。
指揮権確保事件。
そして、最後に翼に託した魂。
彼の存在が、この勝利をもたらしたことは、誰もが認めるところだった。
その時、レストランの大型スクリーンに、緊急ニュース速報が映し出された。
**『速報です。たった今、都内・多摩川の河川敷で、草ラグビーの試合中に、危険タックルによる乱闘事件が発生。現場には、警視庁のパトカーが集結しています』**
生中継の映像に切り替わる。
そこには、泥だらけになったシニアラガーマンたちが、掴み合いの喧嘩をしているカオスな光景が映っていた。
「うわぁ、ひでえな…」
選手の一人が呟いた、その瞬間。
**ブロロロロロッ! キキィィィィッ!!**
ニュース映像の中で、一台の車が猛スピードで河川敷に突っ込んできた。
真っ赤なボディに黒いボンネット。
**スカイラインDR30、鉄仮面だ。**
祝勝会会場が、水を打ったように静まり返る。
選手たちは、スクリーンに釘付けになった。
ドリフトしながら停車した車から、サングラスに角刈りの男が降り立つ。
大門 哲だった。
彼は乱闘の中心までゆっくりと歩いていくと、懐からショットガン…ではなく、ラグビーボールを取り出した。
そして、天に向かって、高らかに叫んだ。
「全員、動くな!この現場は、俺が確保する!」
その言葉に、なぜか乱闘していた老人たちがピタリと動きを止める。
大門は、ニヤリと笑うと、ボールを空中に放り投げた。
「さあ、お前ら!ラグビーの時間だ!俺が相手をしてやる!」
その姿は、もう日本代表の伝説の助っ人ではない。
ただのラグビー好きの、一人の暴走老人だった。
ニュースキャスターが困惑した声で伝える。
**『あー…、現場に、サングラスをかけた謎の男性が現れ、なぜか事態をさらに混乱させている模様です…』**
祝勝会会場で、沈黙を破ったのは翼だった。
彼は、呆れたように、しかし、最高に嬉しそうな顔で笑った。
「…あの人は、やっぱりあの人だ」
風間も、やれやれという表情でグラスのウイスキーを飲み干す。
「ああ。団長は、死ぬまで現場(グラウンド)を離れられんのだろうな。愛すべき、大馬鹿野郎だ」
スクリーンの中では、泥だらけの老人たちに囲まれ、少年のような笑顔でボールを追いかけるエンペラーてつの姿があった。
彼の背後に流れる音楽は、もちろん、あのテーマ曲だ。
チャララ〜♪ チャララ〜♪
エンペラーてつの伝説は、終わらない。
日本のどこかのグラウンドで、事件(ラグビー)がある限り、彼の赤い鉄仮面は、今日も走り続ける。
**「全員、確保だ!」**
(本当の おわり)
【緊急事態】日本代表に、時速200キロの老害、現る。 志乃原七海 @09093495732p
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