◆幽霊を見る方法◆
茶房の幽霊店主
第1話 幽霊を見る方法
※(店主と仕事仲間の体験談です)
※(プライバシー保護のため地域・固有名詞などは伏せています)
※※※※※
『幽霊を見てみたいんです!どうやったら見えます?色々な心霊スポット巡りとかしてるのですが 見たことがない。何か方法はありますか?』
大学生のS君はまたに仕事を手伝ってくれていますが、突然そんな事を言い出しました。
『見えないなら、別にそれでいいじゃないの。自分には必要ないって事では?』
『いいえ!一生に一回でいいんです、幽霊を見てみたい!』
鼻息も荒く、心霊スポットへ行った時の話をしています。
聞けば『出る』という噂が絶えない場所ばかり 。
『一緒に行った友達は見えたんですよ!なのに、自分だけ見えない。タイミングとかあるのかな』
『見えたとして、どうするの?』
『え? いや、幽霊見えたら面白いじゃないですか。話のネタにもなるし、友達に自慢できるでしょう?』
面白いから見てみたい。自慢したいからみて見てみたい。
動機は自分の知識が及ばない事への好奇心かもしれません。
『今度、深夜に友達と車で〇〇山へ行くんです 見えると思いますか?』
知人関係、その山道で奇妙な体験、今もトラウマで苦しむ人を知っていたので行かない方がいいと伝えました 。
『マジですか!? 店主の知り合いも幽霊見えたのかぁ!うわぁ、いいなー。自分も行ったらきっと見えますよね』
抑止力にはならなかったようです。
『見えるにしても、見えないにしても。心霊スポット巡りはやめた方がいい。他人の荷物を背負に行くようなものよ』
重ねて何度もとめましたが、まったく聞こえていないようすでした。
※※※※※
『店主。話を聞いてくれますか』
いつも明るくヤンチャなS君がらしくもない神妙な顔です。今、仕事場に二人だけ。
きっと他の仕事関係者には 聞かれたくないのでしょう。
『どうかした?』
あの山へ行ったのだろうと思っていました。
『友達と彼女を連れて、〇〇山に行ってきたんです』
溜息しか出ません。
『幽霊見えないかなぁ!って。みんなで騒ぎながら 俺が運転する車で山道を進んでいたのですけど、急にハンドルが動きにくくなって……。
なぜかガードレールの方へ寄って行ってしまうんです。
何とか逆にきろうとするのですが、車の側面が擦りそうで、友達は “おい、ワザと怖がらせようとしてるんだろ”ってげらげら笑ってたんですけど、マジでハンドル固まってて
“危ないからそういうのやめろよ!” “事故ったらどうするんだ。いい加減しろ!”
だいぶん険悪な雰囲気で焦ってしまい。ブレーキは効いたのでどうにか車を脇へ寄せました。
車が完全に停まった時、 フロントガラスの内側へ、男の腕がザッと上から下へ 落ちていったのを見たんです。
しかも、それを見たのは俺だけではなくて、沈黙の後、何人かが “わああああああ!”とか“きゃあああ!”とか叫び出して。
その腕、緑がかった灰色でした。
どう考えても生きていると思えないし。……目の錯覚を集団で起こす事ってありますか?
※(集団ヒステリーの場合、なきにしもあらず)
その後、怖くなって結局目的地までは行けなかったです 。
山からおりて、しゃべらなくなった友達と彼女を家に送りました。
自分家へ帰る前、コンビニ寄って塩を買い 袋の中を全部、車の上、タイヤに振りかけました。
もしかして。 車に、憑かれているかもしれないと思ったんです』
一気に話し終えてから、S君は真剣な面持ちで質問してきました。
※※※※※
『店主。塩って浄化できますよね?塩の種類が何であっても除霊できるんですか?』
『あくまで対処法のひとつだし、どうだろうね。全部は当てはまらないとしか』
『【味の素】だったんです。車にかけたの。俺、めっちゃ慌てて買ったので塩の種類とか見てなくて、白いから塩だろうと。 後から袋で気が付いて……』
直後、私の腹筋が爆発しました。もう、爆笑するしかないじゃないですか。
深刻な表情で何を言い出すのだこの若者は。
『なんで笑うんですか!?味の素だと効果ないですか?』
『いや、笑うでしょう。味の素って原料サトウキビだったかな?効果があるかは分からないよ』
『そんな……困りますよ。何とかならないですか』
『気になるなら、ちゃんと粗塩買ってかけておけば?』
本人は不服そうでしたが、これだけ笑えたのです。陰気は払えたでしょう 。
笑っているところへわざわざ悪いモノは来ないと思っています。
見えないならそのままでいい。そう考えています。
きっとあなたには必要ないのでしょう。
S君のように危険な場所へわざわざ行く行為は、真似しない方が身のためだと思います 。
彼がみたのは幽霊か、はたまた怪異か不明ですが、火傷覚悟のリンボーダンスで全焼しなくて良かった のではないしょうか。
これはたまたま助かったケース そうならなかったひとを知っています。
ノリで因縁のある場所へ行き、その後の人生を大きく変えてしまった。
自分だけは大丈夫。その何の根拠もない自信が不幸を呼び込み、平和な日常生活を一変させてしまうかもしれません。
その後のS君ですか?
『もう二度と幽霊はごめんです。今後は心霊スポットに誘われても絶対行きたくない』
ちなみに【味の素】が浄化とか除霊とか結界エトセトラに効果があるかは知りません。
美味しい料理を作る際ご使用ください。
◆幽霊を見る方法◆ 茶房の幽霊店主 @tearoom_phantom
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ネクスト掲載小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます