自分のものではない記憶で存在が定められるという設定が秀逸!
- ★★★ Excellent!!!
通常の世界観では、人は生まれながらに善か悪かではなく、環境で変わるという性善説・性悪説が通説です。
しかしこの物語は、その前提を覆します。人は「自分のものではない記憶」を宿して生まれ、その記憶によって正典と外典に分けられる。変えようのない運命が、制度によって固定される世界の話です。
善悪の基準が本人の行為ではなく、綴られた自分のものではない記憶に依存するという設定が、倫理を根底から揺さぶり、強烈な引力を持っています。外典である主人公と、己の存在を規定する綴りを失ったヒロインが、どのようにこの世界に抗っていくのか――その行方に目が離せません。