静かに綴られる絶望

病に弱った男のもとに、謎の行商人がやってきた。
その者は人間のものによく似た、腐臭を放つ腕を置いていく。
お代はいらないという。ただ、「そいつを喰ったら二度と海に近づくな」と言い置いて去った。


喰わねば生きられなかった。しかし喰えば全てを失った。
喰わねば出逢えぬ者があった。しかし喰ったから失った。

喰わねば知らずにいたことがあった。
喰わねば得られぬ、安らぎがあった。

喰わねば、喰わねば……
ああ、けれども喰ったから、喰ったから!——


……行商人の言葉には続きがある。
「何しろ、XXというのは執念深いものでしてね」

その他のおすすめレビュー

白菊さんの他のおすすめレビュー132