【短編】MY CHOICE

中山南、29歳。
仕事は安定、生活は平穏。
でも、毎日同じ道を歩き、同じ部屋に帰り、
「このままでいいのかな」と胸の奥がじんわり痛む日々。

かつての夢。
やりたかった仕事。
挑戦せずにやめてしまったこと。
そして、向き合いきれなかった恋。

——どれも“選ばなかった選択肢”として胸の底に沈んだまま。

そんなある朝、トイレの扉を開けた瞬間、
南はまばゆい光に包まれ、知らない家のリビングに立っていた。

温かい空気。
壁に並んだ写真。
子どもの小さなスリッパ。
「まま！」と抱きついてくる女の子。

その瞬間、南の頭の奥に流れ込む“もう一つの人生の記憶”。

ここは、南が“あの日、別の道を選んでいたら”辿り着いた未来。
愛され、求められ、誰かに必要とされる毎日。
でも同時に、失ったはずの夢や自…続きを読む