廃墟のプール施設

海藤日本

廃墟のプール施設

 当時、私の地元の近くに、廃墟になったプール施設があった。

 現在はもう、取り壊されており存在しない。 

 私の知り合いは昔、そのプール施設に入った事があるらしい。

 中に入ると螺旋階段があり、その階段を登って行くと、やがて屋上へと辿り着く。

 そこで、私の知り合いは驚いた。

 何故なら、プール施設であるのに屋上にはなんと、大きな鳥居があったからである。

 なぜ屋上に鳥居があるのかは、誰も知らないと言われている。

 これは、その廃墟になったプール施設にまつわる怪談話である。


 ある日の夜、若者の男性五人で肝試しをする事になり、その廃墟になったプール施設へと足を運んだ。

 廃墟のプール施設に着くと、A君が悪ふざけでこう言った。


「じゃんけんで負けた奴は、一人で中に入って屋上まで行く事にしようぜ」


 こうして、じゃんけんをして負けたのがB君であった。B君は、物凄く怖がりだったらしく「行きたくない」とずっと言っていたそうだ。

 すると、A君がある提案をした。

「なら、一人で屋上まで行けたら一万円やるよ」

 それを聞いたB君は、お金に目の欲しさに行く事を決め、恐る恐る中へと入って行った。

 約五分後、屋上からB君が顔を出し、他の四人に向かって手を振ってきた。


 そう、B君は屋上まで登りきったのだ。

 それを見たA君は少し悔しそうに言った。


「分かった。約束通り、一万円やるから戻って来いよ」


 しかし、それから十分以上待ってもB君は戻って来なかった。

 普通なら、五分もあれば充分戻って来れる筈だが、帰ってくる気配は全くない。 

 B君が心配になった四人の仲間達は、廃墟のプール施設に入る事にした。

 中へ入ると、なんとB君は螺旋階段のすぐ横で、ブルブル震えながらうずくまっていた。 

 その姿を見て、A君がこう言った。


「何やってんだよ。てか、お前凄いじゃん。一人で屋上まで行くなんてよ」


 しかし、B君は震えた声でこう言った。


「ごめん。俺、屋上まで行けなかった。螺旋階段が怖くて……」


 A君は少し焦りの表情を見せた。


「何言ってんだよ。お前、屋上から手振ってきたじゃん。なぁ? お前ら」


 三人の仲間達は首を縦に振った。

 しかし、B君は再び震えた声でこう言った。


「え? ……俺、屋上なんか行ってないよ」


 それを聞いたA君は、焦りからなのか口調が強くなった。


「どうせ脅かしているんだろ!? じゃあ、あれは一体、誰なんだよ!?」


 それを聞いたB君は、ゆっくり顔を上げた。


 なんと、B君の目は吊り上がっており、まるで狐のような顔になっていた。

 そして、B君は四人にこう言った。


「僕だよ」

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廃墟のプール施設 海藤日本 @sugawararyouma6329

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